タイムカプセル
簪ぴあの
第1話
怒るだろうなあ……恐る恐るドアを開けた。
「卓司、お帰り。あら、それ、何?」
やっぱり……圭子が目をむいている。一戸建てとは名ばかりの狭い家に段ボール箱が三箱だものな……
「すまないな……ちょっとうちに置いておきたいんだ。場所あるかな?あのさ、段ボールは会社にあったきれいなやつだし、中の本はほこりとか、拭いたからさ……」
「本?卓司が読むの?」
「違うんだ。じいちゃんの……じいちゃんの本なんだ。親父がじいちゃんの部屋にあるものを整理して処分するって言うから、今日、行ってきた。それで、これ、もらってきた。」
圭子は段ボール箱の一つを開けた。「あら、驚いた……英語の本じゃない……えっ?卓司、これってまさか……」
「そうなんだ。原爆の関係の本なんだ。他の箱に日本語の原爆関係の本もある。じいちゃん、外から見えないように、わざわざ、ガラスの扉に布をはりつけた本棚に、原爆の本を入れていたんだ。これだけは、処分したら駄目な気がして、持って帰ってきた……」
「わかった。」
よかった。圭子はわかってくれたんだ。
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