第80話 家の謎
無事ビックホーンラビットを討伐した僕達は現実世界に戻ってきた。
あれから、時間の限りビックホーンラビットを見つけては眠らされて、強制的にシズカに起こされるを繰り返した。
シズカはめんどくさいと言いながらも楽しそうに僕を起こしていた。
『あなたご飯よ!』
『起きないと襲うわよ!』
『ぶっ殺してやる!』
と起こし方のバリエーションは豊かだったが、最後の方は本気の威圧に眠ることも許されなかった。
そして習得したのが"睡眠耐性"。
テスト勉強や授業中に眠気が来なくて良さそうな気もするが、実際にどれだけスキル:反映で現実世界に影響があるか気になるところだ。
ちなみに[
大きくなる様子もなく、むしろシズカの威圧で中に入っていったような気がする。
「本当に数時間しか経ってないんだな」
現実世界に戻ってきて時計を確認すると、母が買い物から帰ってきてご飯を作っているようだ。
香里奈は動画の撮影のために、部屋に戻って何かをしている。
時間が空いて暇な僕は近所を散歩することにした。外は陽が落ちて少し暗くなってきていた。
玄関を出ると、ふとシズカの生活している犬小屋が気になり、ベランダに回り見に行くことにした。
小さい頃に飼っていた柴犬のリンコの犬小屋はそのままだ。鏡の中でシズカの家を改造するのに100万円必要だと言われたが、現実世界で新しい犬小屋を購入しても良いのではないかと思っている。
大型犬の犬小屋でも5万程度お金を出せば立派なやつは買えるからだ。
100万円が5万円になれば、その分の費用で合成することができる。
「あら、リンコの小屋を見てどうしたの?」
「あー、犬を飼っていたのを思い出してね」
「あの時は突然捨てられていた子犬を拾ってきてびっくりしたわ」
僕が柴犬のリンコを拾ってきたのは両親が再婚して少し経ってからだった。ちょうどこの家に住み始めて慣れてきた頃だ。
リンコは病気になって数年で亡くなったが、あの時の記憶をなぜ忘れていたのか謎だ。香里奈が鏡の世界の影響で、僕達も含めて香里奈の記憶が書き換えられたが、リンコの記憶が無くなっていたのは、いまだ謎に包まれている。
「そういえばこの犬小屋を処分しようと思ったことがあったけど、壊せなかったんだよね」
母の話では中古の建て売り物件であるこの家を買ったタイミングで、この犬小屋も置いてあったらしい。
リンコが亡くなってから、必要がないと判断した両親は犬小屋を壊すつもりだったが、壊せなかった。
「壊せなかったってなんかあったの?」
「この家と犬小屋の作りが似ているのもあったんだけど、取り外しができないから解体費用が必要なのよ」
僕は犬小屋に近づき持ち上げようとしても、固定されていて動かなかった。ただ置いてあるだけかと思ったが違っていた。
「そんなことよりもついでだから洗濯物を中に片付けてもらってもいい?」
「はーい」
異世界に行ける鏡の謎もあるが、この家自体が普通の建物とは違う何かなんだろう。
「まずは合成しないように……あー、課金したい」
新しいシズカの家を買おうかと思ったが、やはり犬小屋はお金をかけて改造するしかないと僕は思った。
しばらくは課金欲との戦いになりそうだ。
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