第23話 驚くばかりのデジタル音
目の前の光景に驚きながらも僕は再び足を動かした。
【デイリークエストをクリアしました】
脳内にはデイリークエストが終わった報告が流れる。後ろから少しずつ近づいてくるゴブリン。
ホーンラビットのトングを装備していれば、次に鏡の中に来ても、いつもの下駄箱の上に戻ってくることを知っている。それなら頭に刺さった状態でも問題ないと思い家に向かう。
その距離は残りわずか。
追いかけて来るゴブリンは他のゴブリンから武器を奪い取る。
扉まであと少し。しかし、背後から感じる圧力に僕はわざと声を発する。
「お前達こっちだ!」
ゴブリンは僕の声に反応して追いかけてくる。後ろを振り向くと、たくさんのゴブリンが追いかけてくる。
その中でずっと追いかけてくるゴブリンは立ち止まっていた。
手に持っているのは他のゴブリンが持っていた長い鉄パイプ。
僕は家に着くと扉を急いで開ける。あとは閉めて現実世界に戻るだけ。
「これで終わり――」
僕は振り返り、扉に手を伸ばそうとした。
――ブン!
大きく風を切る音とともに頬に痛みが走る。家の扉横に突き刺さる鉄パイプ。奴はなぜか家の中に投げたのではなく、玄関横に鉄パイプを投げた。
ゴブリン達は何か透明な板に阻まれているのか、家の中には入って来ることはなかった。
むしろ玄関を閉めようと、手を伸ばしていたらゴブリン達に外へ引き戻されてしまうのだろう。
あの知能が高いゴブリンは、家の中に鉄パイプが入らないことをわかっていたのだろうか。
もし、それが当たっていたのなら、もう二度と会いたくない敵だ。
息を整えるために玄関に手をついてそのまま倒れ込む。その様子を下駄箱に置いてある首飾りが僕を見ていた。
異世界ではあまり強くないはずのゴブリンはとてつもなく強かった。
僕はクエストを清算するために鏡に手を触れる。クエストが終わったからか、カウントダウンも止まっていた。残り三分程度と結構ギリギリだったことに気づく。
【デイリークエストクリアに伴いステータスポイントがユーザーに反映されます。体重-1kg減少しました】
どうやら今回は体重だけが少し落ちたようだ。太っていた時と比べると、体重が減りにくくなってきたのはステータスも停滞期のようなものがあるのだろうか。それを考えると、バランス良くステータスを振る方がいいのかもしれない。
【スキル:逃走を習得した】
「うぇ!?」
流れてくるデジタル音から初めて聞こえる言葉に驚きが隠せない。僕が持っているスキルはキャラクタークリエイトだけだった。
それが
鏡の中でずっと走っていたのが影響しているのか、それとも
だが、スキルとしてステータスに現れたのなら、ちゃんとした意味があるのだろう。
――――――――――――――――――――
《ユーザー》
[名前]
[種族] 人間/男/童貞
[年齢] 17歳
[身長] 164cm
[体重] 66kg
[
《ステータス》
駒田 健 Lv.8
[能力値] ポイント0
[固有スキル] キャラクタークリエイト
[スキル] 逃走
[称号] ホーンラビットの殺戮者
幸運の持ち主
――――――――――――――――――――
称号のようにスキルと書いてあるところに触れてみるが反応はなかった。装備品やスキル、その他のステータスも何かがきっかけで見えるのかもしれない。
【報酬として薬草3つとゴブリンの耳を手に入れた】
再び耳を疑う報酬をもらうと僕は現実世界に戻った。
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