第18話 周りの変化

 香里奈との自宅までの全力疾走の結果、僕はアイスクリームをコンビニで買わされていた。


「アイス一個って言ってないから二個買ってもいいよね?」


 香里奈は手に高級アイス二つを持って僕の元に来た。一つ300円程度するアイスを二つも強請ねだる妹の将来が少し心配になってしまう。


「ああ、仕方ないな」


「やった!」


 僕はアイスを受け取り、レジに並ぶと遠くでコソコソと話している声が聞こえてきた。


「やっぱりあの子って動画の子だよね?」


「なんか動画より実物の方がイケメンだよね」


 制服を着た彼女達は動画の話をしていた。最近ショート動画を投稿するSNSが流行っているからそのことを言っているのだろう。


 動画と言われて僕は教室であったことを思い出してしまう。あの動画は誰が投稿したのだろうか。


 きっとあの場にいた人の誰かが投稿したはずだ。


「ってか後ろにいる子もKARINAじゃん!」


「こちらのレジへどうぞ!」


 反対側のレジに呼ばれて僕はアイスを会計しに行く。香里奈はそのまま外に向かわず、彼女達の元へ話しに行った。


 我ながら妹のコミュニケーション能力の高さに驚きだ。


「お釣り30円です。これからも応援しています!」


「えっ?」


 なぜかコンビニの店員に応援されてしまった。僕は何を応援されたのだろうか。


 店の外に出ると続けて妹がコンビニから出てきた。


「お兄ちゃんアイスありがと!」


 僕は香里奈にアイスを渡す。袋に入ってるアイスを見て嬉しそうにする香里奈。


 アイスでこれだけ喜んでくれるなら可愛い妹だ。


「次は僕が勝つからね!」


「いや、今後もお兄ちゃんに買ってもらうからね?」


 意地でも香里奈はアイスを僕に買わせたいらしい。ふと、香里奈はあの学生と何を話していたのか気になった。


「そういえば、さっき何を話していたんだ?」


「そんなに私のこと気になるの?」


 笑いながら僕の顔を覗いてきた。普通の男なら少しはドキッとするのだろう。香里奈は妹だ。


「私これでも人気者なのよ?」


 人気者?


 確かに容姿も良くて勉強もスポーツもできる香里奈は人気者だろう。そんなのは近くにいる兄である僕が一番わかっている。


 学校に行けない僕を見ても何も言わない。むしろ、頑張らないように勇気をいつもくれている。


 それだけで今の僕にとっては嬉しいことだ。


 だからこそ今日は帰らずに学校で過ごしたかった。だが、そんな簡単なことでも今の弱い僕では難しかった。


 春の新学期までに見た目をどうにかすれば変わるのだろう。今の僕にはキャラクタークリエイト・・・・・・・・・・・の力がある。


 まずはたくさん攻略して自分を変えて自信をつけることだ。そこまでしたらまた学校に行けるだろう。


「あー、そうだな。ちょっと運動しながら帰るわ」


 僕は運動のために走って帰ることにした。現実世界でもダイエットの開始だ。


「お兄ちゃん変わってきたんだね。私もお兄ちゃんの手伝いをするよ」


 香里奈はそっとスマホを取り出し、僕の後ろ姿を撮影していた。僕がそのことを知ったのはだいぶ後だった。

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