朝焼けにイタチを狩る

-N-

朝焼けにイタチを狩る


 ふと海辺に目をやると、かつて醒めていた夜が段々と橙になっていくのを見た。

 街と港を挟んで、遠くに城が見えた。海辺に立つ廃城であるが、なにかが始まりそうな予感を覚えた。もうあそこで人は住んでいないのに、金色の王様が玉座に座っていて、大号令を発しそうな、そんな予感を覚えた。渡り鳥が私の背中から城の方へ連隊を組んでいった。

 世界がやがて、朝に染まろうとしていた。

 五時の鐘が鳴った。私は夜通しの作業を済ませようと、最後にひと踏ん張りを効かせた。

 朝焼けにイタチを狩る。屠殺の音、虫の羽音、鳥の鳴き声。草葉の音と生臭い血の臭いが、マジックアローの波動にかき消されていった。

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