③ORIKAMI

モロ平野

第1話:プロット

◯参考作品

以前の自作、「至高のおりがみ」等の高難易度の折り紙本

◯世界観

異界から流れ込む魔力によって人類が獣人と化した世界。また、異界からやってきた魔物や、額に一本角の生えた獣人の姿をした魔族が獣人と争っている。魔法は魔族や魔法使い、上級治癒師などが使うことが出来る。

◯主要キャラクター

・ロマン:猫型獣人の少年。5歳。素直。

・マイ:猫型獣人の低級治癒師の少女。やや人見知りで温厚な性格だが、難解な折り紙を折る時だけは人が変わる。巨乳。

「わ、私には無理よ……魔力も少ないし……」

興奮時「何じゃこのクソ折り図はよおお!」

・アーテン:狼型獣人の隻腕の壮年の戦士。真面目で義理堅い。

「マイよ、お前はお前の出来ることをすればよい」

・イムラン:狼型獣人の戦士の少年。おっちょこちょい。

「俺っちがマイを守ってやるよ!……ってうわわわ!」

・ルテナ:兎型獣人の魔術師の少女。魔力感知が得意。耳も良い。気が強い。

「イムランのクソボケカス!それに比べてアーテン様ったら……(うっとり)」

・小竜:皮で折られた知性ある折り紙の竜。口が悪くておっぱい好きだが面倒見が良い。

「早く俺をおっぱいの間に隠せ!」

・モンテルカスト:熊型獣人の低級魔術師の老人。

・マイザー:魔族三巨頭の一人。一本角のある羽根の生えたライオン型獣人。冷酷。

・ドラール:マイザー部下の魔族。一本角のある羽根の生えたカメレオン型獣人の女性。

・聖魔王:謎に包まれたかつて存在した魔族の王。

※尚、獣人達はイラストにした場合のビジュアルとしては猫耳のついたほぼ人間の少女程度が希望です。

◯物語構成

全6章想定


第1章

 かつてこの地に別の高度な文明が栄え人間が世界を支配していたが、「魔染」の日を境にどこからともなく現れた魔族が魔物を従え人間達を大量虐殺した。それ以降世界に魔力が満ち、人間が変化した魔法を使える獣人が現れ、人間は姿を消した。そして獣人と魔族の争いは今も続いている。

 5歳の猫型獣人の少年ロマンは祖母である低級治癒師(魔法ではなく薬などを用いて治療する職業)の猫型獣人の老婆マイの営む治癒所を手伝っていた。マイは折り紙が得意でロマンも彼女に教わっていた。ある時マイの馴染みの兎型獣人の魔術師がめまいの治療に訪れたついでにマイに依頼されていたアトリビュート(魔染前の遺物)を渡す。それは人の記憶を脳から読み取り映像化する物だった。それから数日後急に体調を崩したマイはその夜枕元にロマンを呼び、自分の驚くべき記憶を彼に見せるのだった。


第2章

 魔染から五百年後、魔物が徘徊する世界で冒険者達が魔物退治や遺跡探索に活躍していた。その中の一人、駆け出し冒険者の猫型獣人のマイは魔力も体力も弱い低級治癒師だったが折り紙が何より大好きだった。孤児だった彼女(親の残した半分のペンダントを持っていた)は低級治癒師の熊型獣人の老人モンテルカストに拾われて育てられた。彼はルネスタ国の首都シングレアで治癒所を営む傍ら、遺物の顕微鏡で人体を観察したり密かに人体解剖をすることが多かった。

 彼女は「すぐに役に立たない低級治癒師なんかより魔法でパパッと怪我を治療できる上級治癒師の方が格好良い」と文句を言うも、老人は「上級治癒師とても万能ではなく病気は治せないし、また、人体は非常に奥が深いので研究すればもっと効率よく治せるようになる」と彼女に話した。また、モンテルカストは薬の包装の関係か、コンプレックス折り紙と呼ばれる長時間かかる複雑な折り紙が非常に得意で治療所を訪れる子供達に手渡したりし、幼い彼女によく教えてくれた。そして「発生学的には、初期の人体は細胞シートが丸まった筒に過ぎないが、それが徐々に折り畳まれ、複雑な組織を形成していくのだ。人体はあたかもよくできた精巧な折り紙のようだ」と持論を語った。

 さて、老人の元には狼型獣人男性の戦士のアーテンがよく訪れていた。彼は魔族に親を殺され孤児となった同族の男の子イムランを育てていたが、彼がおっちょこちょいでよく怪我をする為に伴っていた。戦士は幼いマイの相手をよくしてくれ、彼女に様々な冒険譚を語ってくれた。また、イムランは気の弱いマイが近所の悪ガキに「親無し子」とからかわれるのから助けてくれた。

 ある時アーテンは魔物に襲われていた兎型獣人の少女を助ける為戦い左腕を切り落とされ運ばれてくる。彼には神殿の上級治癒師に診てもらうだけの金が無かった。老人は彼に処置を施し一命をとりとめ、アーテンは大層感謝し、是非有事の為にモンテルカストにパーティーに加わってくれと頼むも、彼は歳だからと辞退し代わりにマイを勧め、気弱だが好奇心は強かった彼女は14歳になりモンテルカストが亡くなった時、アーテンの仲間に加わった(治癒所経営と兼業)。マイは「トゥルースシーカー」であるアーテンを敬愛し、また、「お前を守ってやるよ」と言うイムランのことを密かに想っていたが、内気な為自ら言い出せなかった。因みにトゥルースシーカーとは、「魔染」以前の世界について調査し、魔染の原因を究明する者達のことである。パーティーにはアーテン、イムラン(駆け出しの戦士)、そしてアーテンに助けられたことで冒険者を目指すことになった駆け出しの魔術師の兎型獣人の少女ルテナがいた。因みにルテナはアーテンに片想いしていた。また、彼女は不器用なくせに何故かマイに教えてもらい、千羽鶴を折るようになった(下手くそだが)。

 さて、16歳の巨乳美少女に成長したマイは、遺跡から発掘された貴重な難解折り紙本を解読しながら徹夜で折るのを日課としていた(一応医療の本も読んでいた)。しかしどうしても折り図(折り紙の折り方をワンステップずつ詳細に説明した図)が理解出来ない箇所があり悩んでいた。そんな時、折り紙らしき彫像がある遺跡の噂を聞きつけ、彼女は何かヒントがあればと期待しパーティーメンバーに頼み込んで探索に出かける。既に探索され尽くした遺跡ではあったが、皆嫌な顔一つせずに付き合ってくれた。到着すると入り口に折り鶴の像が飾られたいたが、遺跡にはめぼしい物は何もなく、突き当たりの大広間にはひび割れた石の床と、ドラゴンやペガサス等の折り紙作品を模した幾つかの石像があるばかり。マイは「これは○○氏の作品の悪魔ね」等と全ての作者と作品名を言い当てた。発見したのはひび割れの中に挟まっていた皮で折られた小竜の折り紙だけで、帰ろうとしたとき突如穴を開けて遺跡に迷い込んだ巨大なミミズ状のワームが入り口に陣取りパーティーに襲い掛かった。慌てて応戦するもまったく勝ち目はなく、逃げることも叶わない。襲われそうになるマイをイムランがかばおうとして壁に吹っ飛ばされる。そんな時、マイのポケットから「目ん玉かっぽじって石畳をよく見ろ!凡人からすれば単なる床でもお前ならその真価がわかる筈だ!」という小竜の声が響く。つられて下を見たマイは、正方形の石畳が実は折り紙の巨大な展開図(折り紙の設計図ともいうべき一枚絵で、作品を折った時に折り紙につく折れ線を図示化したもの。ある程度折り紙を習得した者はこれを見ただけで完成形が脳内に浮かぶ)であることに気付き、しかも獣人を含む地球上の全生物の展開図であることを理解する(折り紙と医学の素地もあった為)。そして彼女はこれを応用すれば生物を折り紙のように「開く」ことが出来ることを瞬時に悟った。「おおお!わかる!こいつは禁断の果実の超展開図だ!すげえお宝だぜ!ヒャッハー!」「早くワームの頭の正中線上に触れろ!」という小竜の小声に従い魔術師に高速魔法を唱えてかけてもらい魔物に接敵しちょんと触れると、なんとワームは細胞シートに変わり溶けて消えた。皆驚くも一番驚いたのは彼女だった。だが「今のは一体何をしたんだ!?」と聞かれても何も答えられず「なんか地下に潜って退散したみたいだよ…」としか言えなかった。また、その後凄まじい疲労感を覚えた。彼らは崩れ出した遺跡から急いで脱出した。


第3章

 帰り道、途中ですれ違った顔見知りのSランクパーティーに「俺達は村を襲うキマイラ退治だってのにお前達はのんきだな」と嫌味を言われムカつくも何とか耐える。治癒所に戻ったマイが小竜を取り出すと、「あー、苦しかったぜ!今度はお前のおっぱいの間に挟ませてくれよな!」と喋り出した。彼はあの遺跡の守護者で、「折り神」の能力に目覚める者が現れればその使い方をレクチャーする為に待っていたという。「折り神ってのは魔染前の偉大な天才があみ出した秘術だ」という。彼は折り神の秘密について語り出した。

 かつてとある島国に一人の天才がいた。彼は医者であり科学者であり哲学者でありオカルトマニアであり、そして大の折り紙好きであった。彼は発生学や解剖学などの医学知識から、生物とは細胞シートを幾重にも折りたたんだ究極の折り紙作品であると仮定し、また、この世界も何次元にも折りたたまれた存在であると確信していた。彼は現世には珍しく異界から滲み出て来た極少量の魔力を体内に有していた。血の滲むような研究の結果、彼は生物のある一点を魔力を帯びた指で突っつくと生きたまま細胞シート状に開き、更に別の生物へと折り変えることが出来るようになった。そもそも生物の体内には生まれつき蜘蛛の巣のように無数の目に見えないような小さな折り目がびっしりと刻印されている為、要となる一点を見極め、そこに魔力を込めて繊細に触れれば、生物は自ずと取るべき形をとるのだ。数時間かけてやっと完成させた折り紙を一旦開いてまた完成形に戻せば数分で出来るのに近いだろう。彼はこの能力を「折り神」と名付けた。但し何故か自分自身に対して使うことは出来なかった(切断された自分の身体に対しては可能)。更に修練を積んだ彼は果ては次元をも開くことが可能となったが、それには莫大な魔力を要すると予想された為実践しなかった。

 当時この世界は何度目かの世界大戦に突入する寸前で、二つの大国の間でミサイル攻撃が行われそうになっていた。この島国は中立を自任していたが、地理的条件から戦果を避けるわけにもいかない状況だった。ある時どちらかの大国から一つの大陸をも消し去るほどの威力のミサイルが発射され、誤ってこの島国へ落ちると予想された。いち早くそれを察知した天才は一か八かの賭けに出る。折り神の能力でミサイルの着弾地点に異界への門を開き、被害を食い止めようと画策したのだ。結果作戦はうまくいった。

 だが問題はその後に起こった。異界はミサイルで即座に滅んだが、滅亡寸前に辛うじてこちらの世界に逃れて来た者達がいたのだ。彼らは強い魔力を持ち、角の生えた獣の顔を持ち、魔族と名乗り人間を呪い、魔法による大虐殺が始まった。また、異界から流出した魔力は人間にとって有害なもので、それが人間の体内に流れ込んだ為、運よく適合できたものは獣人と化して生き残ったが、他は全て滅んだ。また魔力の影響を受けた動植物は魔物となった。魔力を使いすぎた天才は後悔したが時すでに遅く、次元の門を後世の者に閉めて貰う為、やむなく折り神習得の基礎となる、全ての生物を開く展開図を石畳に記し、失意の内に死んだ。だが予想に反し門は次第に自然に縮小していったという。

「お前がやったのは『開く』という折り神の初歩の初歩の行為だけだ。練習すれば生物を『折り直す』ってことが出来るようになるし、他にもいろんな応用技がある。例えば生物に簡単な命令を与えることも出来るし、失った身体の一部を再生することだって可能だぜ。脳はちと難しいけど。あと、折る側はすげえ疲れるし、折られる側はすげえ激痛を伴うけどな……一時的だけど」「本当!?じゃあ、切り落とされた腕とかも…」「楽勝楽勝!だがまずは実践を積まねーとな。そんなわけで出かけるぞ、ほれ!」「ど、何処へ!?」「ほれ、さっきあのぼんくらどもが言ってたじゃねーか。キマイラ退治だよ!」というわけで、マイはしぶしぶ真夜中に、家畜や村人を襲うキマイラが出没するという近隣の村まで出かけて行った。

 村に到着すると、Sランクパーティーは既にキマイラと会敵していたが苦戦していた。戦闘は激しくとても介入できそうにない。「ど、どうすれば……!?」「バカかテメーは。敵じゃなく、人間に折り神を使うんだよ!」「!」小竜のアドバイスのおかげで気づいたマイは、傍らで待機していた上級治癒師の額をちょんと突っつく。するとなんと彼は絶叫しながら縦に裂けて折りたたまれ、巨大な怪鳥に変化して、キマイラを引っ掴むと上空に持ち上げて地面に叩き付けて殺す。やがて降り立った怪鳥の頭を再びマイが突っつくと元の姿に戻った。「な、なんだ今のは……!?」Sランク達があっけに取られているうちに、マイはさっさと退散した。「やりゃー出来るじゃねーか、巨乳ちゃん!」「その呼び方はやめてよ!すっごい疲れたし……でもこれでアーテンさんの腕を治せる!」しかしそれを影から見ていた透明化した魔族のドラールがいた。ドラールは魔族の三巨頭の一人、マイザーの元に情報を送り、待ち望んだ聖魔王の後継者が現れたと伝える。聖魔王とは「かつて聖魔王と呼ばれる魔族がおり、様々な魔物を生み出して支配し、世界を手中に収めようとするも、ある日忽然と姿を消す」という伝承が獣人側に残っていた(因みにマイが直接見ることが出来なかった過去の情景などについては現在のマイお婆ちゃんが適宜補足説明します)。


第4章

 翌日、さっそくイムラン(軽いケガで済んだが)の様子を見にアーテン達の家を訪れたマイの元に、帽子を被った一人のライオン型獣人の男性が門の前で現れる。彼はマイと二人きりで話がしたいといい、開けた公園に行く。彼はそこで帽子を取って角を見せ、自分の正体が魔族の三巨頭の一人、マイザーであることを明かし、マイが聖魔王の後継者であると告げ、魔族の復興の為に聖魔城まで一緒に来て欲しいという。

 マイザーの説明によると、魔染後、帰るべき故郷を失い魔力の供給も少なくなった魔族達はゆっくりと、だが確実に弱体化していった。それを憂いた一人の魔族の少女がいた。彼女は魔族の中でも魔力は一番低く、角もなく虐待されたが、獣人にも魔族にも愛情を持って接し、滅びゆく魔族を助けようと決心し、独自の調査で魔染の原因である折り神の秘密を突き止め、遂にそれを独力で習得した。そもそも魔族は人間や獣人の文化に関心が無く、むしろ嫌ってさえいたし、人間の技術は習得不能と言われていたが、獣人と交流のあった彼女にはそんな偏見は一切なかったのだ。彼女は医学にも折り紙にも通じていた為、折り神を極めることが出来たのだ。彼女は種族の分け隔てなく治療した。治療不可能な程傷ついていた者はやむなく別の姿に変えた為、「様々な魔物を生み出し」と誤って伝えられたのだった。しかも全ての力を使って閉じかけの門を押し広げ、魔族に魔力を注ぎ込んだ。その代償としてか、その後しばらくして死亡したが、魔族はその偉業を称え、彼女を聖魔王と呼び敬い奉った。その門が再び閉じようとしているのだ。

 当然断るマイだったが、そこにマイザーの部下が現れ彼女を取り囲む。動揺するマイだったが「落ち着いてしゃがんで地面を見ろ!」という小竜の声に従うとそこには蟻の行列がいた。彼女は蟻を蜂の大群に変えて魔族をてこずらせるも、マイを助けに来たアーテンを姿を消したドラールに拉致され「聖魔城でお待ちしております、聖魔王様」というマイザーの声と共に、アーテンは連れ去られた。

 マイは駆けつけたイムランとルテナと共に一路聖魔城を目指すことにした(小竜もついでに紹介され、マイの胸の隙間を住みかとした為ことあるごとにイムランと喧嘩する)。しかし道中ルテナはマイに鉱山の近くの町にある自分の実家に寄って欲しいと頼む。実家には彼女の母と兄が暮らしており、鉱山夫だった兄は落盤事故で両下肢を失い寝たきり状態だったのだ。それを姿を消して攻撃範囲外で聞いていた魔族ドラールは、先回りしてマイの実家の町で待ち伏せする。ドラールはマイザーに最も忠実な部下であり、幼い頃から実の娘の様に彼に育てられた。よってマイザーを蜂で攻撃したマイを許せず「殺すな」という命令に背いて暗殺しようと企んだのだ。

 さて、一行が家に近付き、マイが他の二人と距離が離れたところをドラールが襲おうとするも、先に魔法攻撃を受けて血を流す。実は魔力感知が得意な魔術師のルテナは話を聞いている魔族の存在を感じ取っており、透明化する魔族対策として、旅の途中で予めマイに頼んでルテナの姿をマイに変えてもらい、マイが魔術師のローブを纏って顔を隠していた。魔術師は敵の魔力を察知しやすい為ルテナはマイと入れ替わったのである。動揺し姿を現したドラールに本物のマイは触れ、カナリアと化した。そしてルテナの兄を治療し大いに感謝される。因みにカナリアは鉱山で危険を知らせるために死ぬまで使われることとなった。


第5章

 長い旅路の果てに、一行は遂に聖魔城に通じる竜の谷に差し掛かる。この谷には多くの竜が生息し許可なき者を攻撃してくるという。どう突破するか考えあぐねていると、谷にSランク冒険者達やアーテンの顔馴染みの冒険者達の姿を見かける。彼らはマイ達の噂を聞き、アーテン奪還の手助けの為に急ぎに急いでここまで駆けつけてくれたのだった。マイは全員をドラゴンに変え、彼らが谷の竜と戦っている隙にイムラン、ルテナと共に聖魔城へと乗り込んだ。

 城では大勢の魔族が待っており礼儀正しく一行を玉座の間へと案内する。そこにはひび割れた石畳の床と人が一人通り抜けられる大きさの白い円と化した門、そして門の側で縛られたアーテンと玉座に座るマイザーが待っていた。マイザーはこの城は天才が魔染後に門を内部に封印する為に造ったものであり、この石畳は天才の残したもう一つの森羅万象の展開図で、宇宙のことわりを表したものであると語り、マイの更なる覚醒を促し、アーテンの命と交換に門の解放を命じるが、アーテンはマイに従うなといい、力を振り絞って門に飛び込み自ら命を絶つ。

 嘆き悲しむマイを尻目にマイザーは彼女達の隙を突いて今度はイムランとルテナの二人を捉え同様に命ずる。自分はあくまで獣人であり魔族ではないと主張するマイにマイザーはペンダントの片割れを見せて自分がマイの父親だと告白し、角のない出来損ないの彼女を捨て、聖魔王と同じ境遇におき、彼女が新たな聖魔王となるかどうか、密かにドラールにずっと監視させていたのだと説明し、マイは呆然と立ちすくむ。マイザーは更に迫るも、小竜が聖魔王の本当の気持ちをマイに伝える。聖魔王の本音は獣人と魔族間の平和であり、再び門を広げて魔族に活力を与え、結果戦乱を悪化させたことを悔やんでいたのだ。懊悩した挙句、マイは結論を出し、空間を開く。但しそれは門を広げるものではなく、もう一つの門……魔族と呼ばれる存在を吸い込み異世界に連れ去る黒い門だった!企みに気づいたマイザーは吸い込まれる瞬間にマイを殺そうと最大級の呪いを込めた魔法を放つも、ぎりぎりでイムランがマイをかばい頭を打たれる。慌てて彼女は折り神の力で彼を治療しようとするが脳の大部分を失っていた為止む無く猫型獣人の赤ん坊に変える(成長して脳が元の大きさに戻るのを期待した)。

 やがて自分も耐え切れず吸い込まれる寸前、小竜の全身が輝いて姿が一人の猫型獣人の女性へと変わる。実は彼女こそが聖魔王だったのだ。彼女は亡くなる間際に自分の皮膚を剥いで小竜を折り、自分の真の願いを伝える為、展開図のある地下遺跡に隠したのだ。「嘘よ!だって言い伝えによると、あなたは小竜さんと全く性格違うじゃないの!」「私も小さい頃はおっぱい好きの腕白な女の子だったんですよ、フフッ。ではお行きなさい、マイよ。愛しい人と共に」という言葉を残して聖魔王は力を使い果たしたマイの代わりに魔族を吸い込む黒い門を閉じると消滅する。全ての魔族が消え失せた後、マイは自分が魔力を使い果たし老婆に変わっていることに気づく。絶望するマイだったが、腕の中の赤ん坊の泣き声に励まされ、崩壊する聖魔城からルテナと共に脱出する。


第6章

 全ての映像を見終えたロマンは自分の過去を知って驚くも、何故これを見せたのかと瀕死のマイに迫る。マイ曰く、マイザーの最後の呪文は、消え去る間際の彼の台詞によると、「この攻撃を受けた者を、魔族の三巨頭は命を賭しても殺さねばならない」というものだった。いくら姿を変えても呪いはまだ生きている可能性が高い。よって幼い彼に、マイが亡くなっても自分で自分の身を守れるよう、急遽折り神の能力を身につけさせる必要があった。彼に医学と折り紙を教えたのはその下地作りの為だったのだ。そして遺跡や城の石畳はどちらも崩壊し、今やマイの記憶の中にしかない。だからこそこの遺物が必要だったのだ。マイと別れたくないと嘆くロマンに、今際の際のマイは優しく告げる。子育てはもう一度人生を経験するようなものであり、自分は16歳で老婆となったが5年間も大好きなイムラン=ロマンの世話が出来、もう一度奪われた人生を過ごせて夢のような日々だった。これっぽっちも悔いのない人生だった。ロマンにはこれから今以上に苦難の日々が待っていると思うが、かつてのイムランはどんな辛い目にあっても希望を失わず、死力を尽くしてマイを守ってくれた。だから自分の死後も決して諦めず前を向いて生きなさい、と。

 翌朝、冷たくなったマイの遺体を拭いていたロマンは、彼女の身体の皮膚の一部が正方形状に切り取られていることに気づく。そして「あら、バレちゃった?」という声が、ベッドの下から響いた。そこには皮製のグリフォンの折り紙があった。(終)


 全体として11万字程度の長さになると予想されます。続きとしては、今度はロマンが主人公となり、グリフォンに助けられながら折り神の修行をする傍ら、新たな折り神の使い手や残る三巨頭と戦ったりしながら門にまつわる争いに巻き込まれていく展開を考えております。また、魔染に至る時代の天才の話も面白そうですね。

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