世界が終わるまで

ぱすてぃー

第1話

 そこはあたり一面が焼け野原だった。絶え間なく刀を振り続け何時巻ほど経っただろう。身体の自由は効かず今にも倒れ混みそうになるのをグッと堪える。

あたり一面は妖の死体で山ができ体は返り血で真っ赤に染まっていた。

周りにはまだ何体いるかもわからないほどの不気味に輝く無数の目が自分を取り囲むようにそこにあった。

力の入らない腕に喝を入れ妖達に相対したその瞬間。


ピピピピと目覚まし時計がなる。

『またこの夢か』そういいながら起き上がる。時刻は朝の6時『早く準備しないとな』そういいながら朝練の準備をする。

準備を終えた俺は靴を履き学校に走って向かう家出て曲がり角を曲がった瞬間そこには女の子がいた。『ヤバッぶつかる』と思った瞬間何かに弾き飛ばされるように俺は吹き飛ばされた。

「あわわだ、大丈夫ですか?」

としどろもどろになりながらこの辺では見ない黒いセーラー服の彼女は手を差し伸べてきた。「いててすいません前見てなくて...大丈夫です」

そう俺はいいながら立ち上がった。

「でも、血が...」

と言う彼女を横目に

「急いでるんですいません」

といいながら俺は朝練へと向かった。

朝練が終わり

「倫太郎今日はギリギリだったじゃん珍しいなー」

といいながら声をかけてきたのは親友のたかしだった。

「聞いたかよ。また行方不明者だってさうちの学校からも出たらしいぞ」

と少し目を輝かせながら話すたかしに

「興味ないよ。やばくなったらなんか棒でも持って戦えよ剣道部なんだからさ」

と笑いながら俺は答えた。


 クラスは誘拐事件の内容でもちきりだった。高校生以下の男女問わずもう6人が行方不明になっているようだ。

『妖怪の仕業だーってじいちゃんがさー』『怖いよねー』

などの声がクラスのあちらこちらから聞こえてくる。

教室のドアが開き

「よし朝のホームルーム始めるぞー」

と1日が始まりそして何事もなく放課後になり部活を終えて赤黒い夕暮れを帰路につく。

「誘拐事件か。」

教室での誘拐事件の事を思い出すながらしながら陽もだいぶ落ちた薄暗い道を歩く。


 後ろからか「おーい」とたかしの声が聞こえる。俺は呼ばれて振り向いたその時だ。たかしの後ろに2メートルは超えているであろう黒い影が立っていた。一瞬では理解できず目を細めて凝視する。たかしは怪訝そうな顔で

「なんだよー無視すんなよなー」

と笑いながらこちらに寄ろうとした瞬間だ。腕を掴まれ引き摺られていくたかしは

「冷た!な、なんだよこれ助けてくれー!どうなってんだー?」

と声を荒げている。たかしにはあの黒いものが見えていないようだった。

急いで駆け寄りたかしの腕を取る。その瞬間影はたかしではなく俺につかみかかろうとした。「たかし走れ!」

そういいながら俺たちは二人して走った。


 普段こない方まで息を切らしながら逃げてきた時だ目の前に廃墟の神社があった。

「ちょっと休憩しよう。この中なら隠れる場所もあるだろ」

と俺たちは廃神社の中に入る。隠れる場所を探しながら神社の中を探索する。するとたかしが

「倫太郎見てみろよこれ」

と指差す先には日本刀のようなものがあった。

「これで戦えるな」

と少し強がりを言った瞬間だ。

廃神社の扉が勢いよく揺れる。

「この中だろう…さあ行こう…お前を迎えに来たんだ…」

しわがれた声で扉をガタガタと揺らす。

「たかしいっせーので飛び出すぞ」

そう言うとたかしは少し震えながらも頷く。

「いっせーの!」

で飛び出した俺たちは黒く大きな手に腕を掴まれた。

それは黒く冷たくまるで凍った金属に皮膚が当たる感覚だった。咄嗟に刀を抜こうとするが錆びついているのか全く抜ける気配がない。

もうだめだと思った瞬間。

「祓えたまえ、清めたまえ、守りたまえ、覚悟隠し神!」

と女性の声が聞こえた。その方を見ると朝ぶつかった少女が神社にあった刀と同じような刀を持ち黒い物に向かい刀を振るう。しかし「きゃあ」と弾かれ飛ばされてしまう。


 黒いものは俺たちの腕を離し少女の方へと向かう。

『妖斬だ。食えば強くなる…妖斬ィィィ』

と掠れたような声で走って近寄っていく。少女に手を伸ばした瞬間黒いものの腕は宙を舞っていた。一瞬聞こえた風を切る凄まじい音しかし少女は気絶したままだ。

黒いものは

『ううぅ…痛い…人の子の肉…よこせ…よこせェェェ!』

と次はこちらに向かってくる。俺は少女が唱えたように

「は、祓えたまえ、清めたまえ、守りたまえ」

と刀を引き抜こうとする。しかし刀は抜ける気配がない。

刀を盾に突っ込んできた黒いものの突進を受け大きく吹き飛ばされる。

「がっはぁ…」と強く石にあたり意識が朦朧とする。

『ここで死んでたまるかと胸が熱くなる』

俺は刀の柄を強く握りしめる

「抜けろ!抜けろ!抜けろ抜けろ抜けろ!」

と声を荒げる。


 『ガチャン』と鎖のようなものが切れる音がする『オオオオオオッー!』と自身でも考えられないほどの雄叫びをあげる。

黒いものは雄叫びに躊躇したのか少し足を止める。


 刀が鞘から少しずつ抜ける。まるで炎のような刀身が見えてくる足元に円形の焼け野原が広がるそれは刀身が鞘から出れば出るほど円は広がっていく。

刀を完全に抜き切った時身体は痛みが消えていた。

たかしが

「おい!おい倫太郎身体が燃えてる!」

確かに身体は炎の様に燃えさかり頭の上には角の様に2本の火柱が立っている。熱さは一向に感じないむしろ身体が軽く力が溢れてくる。

黒いものは

『五色の妖斬だ…ヒィ…逃げなければ…』

と背を向けようとする。俺は考えるよりも先に身体が動く一瞬の間に黒いものの首元に刀が当たっていた。

刀はまるで豆腐を切るように黒いものの首を飛ばす。

まるで身体が動きを知っているかのように。


 刀を鞘に収めるとさっきまでの焼け野原は消え体は痛みのあまり立つのもままならなくなった。

目を覚ました少女は

「だ、だ、大丈夫ですか?」

と駆け寄ってくる。肩を支えられた瞬間後ろから

「こいつが五色か?まあいい連れて行け」

そう聞こえた瞬間後頭部に鈍い痛みが走り気を失った。


第2話に続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る