第79話 百合吸血鬼の夜
あぁ、これが私の求めていた理想郷。
いま目の前に広がっている光景こそが、私が求めて止まなかった世界の一欠片!
幼い兄妹は【戦域の掌握】で寝静まっているのは把握済みであり、念には念を入れて部屋を両断するかのように【鮮血魔法】で巨大カーテンを設置していた。
手を伸ばせば指先から伝わってくるは、ツルツルでいてもちもちなしっとりとした肌の感触。
これ以上の
「んっ、……お姉さま、くすぐったいですわ」
露出された太ももから始まり、足の付け根・おへそ・胸へと徐々に上へ上へと伸ばした手をゆったりと這わせていく。
そんなリアにアイリスは身に着けていたドレスを乱れさせ、我慢できないといった様子で熱気の籠った吐息を吐き出した。
「ふふ、だって貴方の肌気持ち良いんだもの。 正直、今すぐにでも牙を立てたいのだけど直ぐに食べちゃうのも、勿体ないじゃない?」
「うぅ、私の身体など……お姉さまに比べてしまえば見劣りも良い所ですわ。 身体は小さいですし、肉付きだって良いとは言えませんもの。 それに……胸だって」
アイリスはもじもじと体をくねらせると、自身の身体を見下ろすようにして顔を下ろし、徐々に気に病むような様子で声を籠らせて俯いてしまう。
そんな愛しい妹の可愛すぎる様子に、リアは背中に幸せの二つの弾力を感じながらアイリスを無理やりに引き寄せる。
「っ、ひゃっ!?」
胸元にぽふっと顔を押し当て、飛び込んできたアイリスをリアは愛情と慈しみをめい一杯込めながら堪らない様子で抱きしめた。
「もうっ! どこまで私を煽るつもり? そうやって可愛いことばかり言うから、私が我慢できなくなるのよ」
「え、……え? 別に、煽るつもりはっ」
「口答えしないー。 貴方は黙って、いや存分に鳴いて私に可愛がられてればいいのー。 ねぇ、レーテ?」
例え恥かしさを誤魔化す為の思わず出てしまった言葉だとしても、アイリスはもっと自分の魅力に気づくべきなのだ。
身体が小さい? 抱きやすくて最高じゃない。 肉付きが悪い? もちもちしてて何を言ってるのかしら。 胸が小さい? 小振りなものが好きな人だって一定数いるの、私は大きさは問わないけどそれもこの子の魅力の一つよ。
リアは内心でアイリスの言葉を全否定して、良い所をあげればキリがないのにと思いながら、背中から聞こえてくる声に耳を傾ける。
「えっ、あ……その、私からはなんとも……。 申し訳ございません」
「はぁ……ごめんなさい、困らせちゃったわね。 じゃあ貴方が想う限りの愛情を一杯に籠めて、私を抱きしめて欲しいわ」
そう言ってリアはアイリスを抱きしめながら、レーテへと身を預けるようにして倒れこんだ。
すると、体勢として背中に感じていたレーテの胸元はリアの寄りかかりによって、これでもかと圧迫され続けるとむにゅむにゅと形を変えその柔らかい感触を余すことなく伝えてくる。
(この弾力っ! 体が溶けるぅ~。 前にはアイリスのぽかぽかした体温、後ろにはレーテの柔らかい弾力と微かに感じられる爽やかな甘みのある香り。 あ、ダメ……頭がくらくらしてきた。 私いま、幸せにサンドイッチされちゃってるよ)
幸せを噛みしめ予想していた以上の満足度を得ていたリアに、頼んだのは自分自身とはいえ更なるレーテの追撃が加わるのだった。
「はい、喜んで。 では失礼します」
「んっ、……はぁ」
耳元で呟かれた美しい声にリアの耳は過敏に反応してしまい、体中にぞくぞくとしたものが駆け巡る。
するとレーテは両手を胸元に回し、アイリスと絶妙な間隔と取りながらこれでもかと抱擁する力を込めながら、耳元に顔を押し付けてきた。
感じられるは確かな抱擁と暖かな体温、そして包み込むようにして爽やかな安心感を与えてくれるレーテの狂おしい程に大好きな香り。
「ふふ……もう、どうにかなっちゃいそう♪」
体勢的にリアはレーテを見上げる形となり、覗きこむようにして見下ろしてくるメイドさんの頭部を片手で優しく抱き寄せると、そのまま唇同士を触れ合わせる。
「はむっ……、ちゅっ……んふっ」
「んっ……ふぁっ、んっ、はぁっ……リア様」
思わず強引に引き寄せてしまったレーテの唇はぷるぷるとした感触を感じると同時に、啄むようにしてその口元をどちらからともなく押し付け合う。
舌にちょんっと触れ合うは、隠れるようにして縮こませた控えめな可愛らしい舌先。
(んふっ、可愛い♪ もっと食べたくなっちゃうわ)
数秒程度の短いキスをして互いに唇を離すと、胸元でリアを感じていたアイリスががばっと頭だけ動かして見上げだす。
「レーテっ、あなた私より先にお姉さまと、っずるいですわ! 私にもキスを、ううん。 私のすべてを……召し上がってください、お姉さまぁ♪」
猫なで声っ、なんて可愛らしいものじゃないわ。 これは囁きに甘え声を含ませた、脳を揺さぶるかのような蕩けるウィスパーボイス。
アイリスは暗闇の中でも美しい両の赤い瞳を潤ませながら可愛らしい頬を赤く染め、懇願するように見上げてくると半開きにした唇を強調するかのように突き出し、リアの胸元に甘えるように抱き着いてきたのだ。
(か、か、かっ可愛いぃぃぃ!! ちょっとそれは反則よ? そんなことされてやらない人居るの?
はぁ、そんな可愛い目で私を見ないで……あ、ぁぁ、もう無理ぃ! 早くっ、早く欲しい!! 貴女の全部を……私に味合わせて)
「そんな可愛いことばっかり言って、後悔しても知らないわよ。 こっちにおいで、アイリス」
「はいっ、ご存分にお召し上がりくださいですわ」
歓喜した様子でこれでもかと抱き着いてくるアイリス。
全身余すことなくリアと触れていたいという気持ちがはっきりと見て取れ、這いよる両手は勿論のこと、ねっとりと絡ませる足は逃がすまいと太ももで挟みこみ、豊かな胸元に押し付けるようにしてムニムニと小振りな胸を当ててくる。
リアは「はやくはやくっ!」と言った表情で見詰めてくるアイリスの首元に顔を埋め、ペロペロと味わうように舌で舐めるとその二つの牙を突き立てた。
「はむっ、……んっ」
「あぁんっ、……はぁ、はぁ……、はふぅー♪」
耳元に聴こえるは我慢できずに漏れ出した、アイリスの嬌声を帯びた艶めかしい吐息。
突き立てた牙はずぶずぶと綺麗な肌に喰い込ませると、溜め込まれたものが湧き出る様に鮮血を滲ませ始めた。
「ちゅぅっ、んっ……んっ、はぁ……はむっ」
「……ひぅっ、あぁ……お姉さま、そこはっ……んっ」
嬌声が部屋内へと鳴り響き、甘えるような声で「もっと、もっと」と首筋を伸ばして体を押し付けてくるアイリス。
一飲みする毎にその小さな背筋をくねらせ、悶えてしまう彼女によって生じた僅かな空気の流れ。
それは酔ってしまいそうなほど熟した果実の甘い香りを漂わせ、リアの鼻腔へと運んでくる。
「れろぉっ、ちゅぅっ、……はぁ、んっ……あはっ、甘い♪」
「ひゃぁっ、んっ……はぁ、はぁ……それは、よかったですわぁっ」
淫靡な空気が充満し、甘すぎる血の匂いと興奮した吐息を漏らすアイリスは恍惚とした表情で微笑みを浮かべると、ぎしぎしとベッドを軋ませながらリアに首に腕を回し始めた。
「んふっ、……はぁ、んっ……アイリス、もっと貴方が欲しいわ。 ……頂戴」
「はぁ、……はぁ、はい、アイリスを好きなだけ……味わってくださいまし。 んっ、お姉さまぁ」
そんな可愛い妹の甘えた様子にリアは首元から口を放し、妖艶な笑みを浮かべながらぺろりと口元の血を舐めとると、捕食者の瞳をその小振りな唇へと向ける。
吸血した血が腹部へ落ちるのを感じ、吸血鬼としての本能が体全体で喜びを感じているのわかる。
既に呑み込んだはずの血液は未だ、口内にその余韻を残し続け、際限なく溢れるこの気持ちはどうにも止まりそうにない。
(あはぁっ♪ おいしい~、これよこれ! もっともっと欲しいわ! どろどろに溶けて、何もかもがわからなくなっちゃうくらい、浴びるようにこの血を味わっていたいわ!! ……でも、その前に)
リアは包み込むようにしてアイリスを引き寄せると、その無防備な食べられることを待つだけの唇を捕食する。
押し付けられた唇はぷるぷるとしており、接吻した瞬間に迎えられるは激しすぎる程に甘えてくる小さな舌。
「れろぉっ、……はむぅ、ちゅっ……」
「んっ、……どうですの? ……ちゅぅっ、アイリスは……はむっ、……満足させられて……んっ、おりますか? れろぉ」
口内をなめ尽くす勢いで舌を絡め、淫靡な雰囲気を全身から垂れ流しながら可愛らしく問いかけてくるアイリス。
言葉を発する度にその小さな舌は口内を激しく動き周り、必死に甘えつつも奉仕してくれる妹に堪らなく暖かいものを胸に感じながら、その小さな頭を慈しむように何度も撫で続ける。
「んっ、ふぅ……貴女を味わえるのに、満足しない筈がないじゃない。 ちょっと、熱くなってきちゃったわ」
「ふふっ……私もです。 お姉さまっ」
光のない暗闇の空間で唇を離しながら半透明なアーチを伸ばし垂らすと、リアとアイリスは互いにとろんとした瞳で見つめ合い、どちらからともなく微笑みを浮かべる。
リアは肉食を彷彿とさせる瞳で妖艶を笑みを作り、舌先で唇をちろりと舐めとるとおもむろに身に纏った装備に手をつけ始めた。
本来であればインベントリ機能を使い瞬時に着替えは済ませられる。
しかし、吸血鬼の本能に呑まれつつあるリアはその雰囲気すら楽しみながら、前と後ろから感じられる凝視するような視線に口元を緩めた。
そうして一糸まとわぬ姿のリアが出来上がると、脱いだばかりのガチ装備をアイリスに手渡し、振り返りながら
「さぁ、続きをしましょう? 今度は貴女を頂戴……レーテ」
そう囁くように言葉にしたリアは口元に白い牙を零れさせて笑うのだった。
あれからどれだけの欲求を満たしたか。
隣には、コアラの様に腕や足組んで幸せそうに笑みを浮かべたアイリスと控えめに手を繋ぎながらもしっかりと指を絡ませ、はにかむ様に微笑むレーテ。
そんな二人はリアと同様に衣類を一切纏わぬ姿で横になり、1つのベッドを共有して添い寝していたのだった。
(はぁ……♪ 最高の一時だったわ。 もう何もしたくない、ずっとこのままで居たいなぁ。 ……もし、ここに
幸せを噛みしめながらも、今後のことを考え思考に耽っているリアにアイリスは心配そうな顔を向けてくる。
「……お姉さま、どうされたのですか?」
「どこかお加減でも悪いのでしょうか?
そう言って二人はまるで自分のこと以上に不安げに眉を顰め、可愛らしく美しい顔で覗き込んできた。
両隣から向けられる純粋な想いに、胸の奥深くがじんわりと暖まってくるのを感じながらリアは首を左右に振るう。
「ううん、なんでもないわ。 ただ、今後のことをちょっと考えててね」
「今後のこと、ですの?」
「……」
リアの言葉にアイリスは要領を得ずにオウム返しで問い返してくるも、反対にレーテは何かを察したようだった。
そうそれは二人への指導、厳密にはアイリスを真祖へと至らせる為のレッスンを、今後どうするかということである。
今日の自分自身の体たらくを考えれば、技術は教えれるにしろ実践的な練習は、リアへの精神的な負担が大きい。
やれなくはないが、正直言ってやりたくないのが本音だ。
それは先程までの二人との愛し合う行為によって、触れれば触れるだけ、その想いは募り再認識するばかりだった。
(アイリスが"支配戦"を習得したとしても相手が真祖である以上、パッシブやスキルの階位差によって余程PSがない限り、勝てる確率は半々が良い所。 私が
両隣から押し付けられるモチモチとした
そして、突然の始祖の挙動に心配な表情を更に深めていた二人へ、ニヤリと口元を歪めたリアは安心させるかのように順番にキスをする。
「ひゃぅっ、……お、お姉さま?」
「んっ、リア様……?」
すると二人は驚きながらもその表情から心配を消失させ、何事かと今度は疑問を浮かべだす。
「ちょっと悩んでたことがあるのだけど……いま解決したわ。 これも二人のおかげね♪」
今後すぐには、第一王子の護衛の依頼もあって行動できないだろうけど、合間時間を縫って見に行くのはいいかもしれない。
私がやれないのは恐らく、戦闘中のアイリスの手助けと真祖を直接この手で殺してしまうこと。 ならば殺さなければいい。
(私が真祖をやりに行って、殺さないように徹底的な攻略法を見つければいいのよ! 名付けて『誰でも勝てる! 簡単ニート真祖の倒し方マニュアル』ね。 ふふ、模擬戦とはいえ二人をこれ以上傷つけなくていいのは、ほっとするわぁ)
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