ロボット・アリ・ガットン

夢ノ命

第1話 【月で暮らし始めたロボットたち】


君は、もしも君の友達が、

君よりもロボットと毎日遊んでいるとしたら、どう思いますか?


う~ん、ちょっと悲しいですよね。

そんな時代もあったのです。


???


と思った君、『当ったり』です。


これからするお話は、

今からそれほど遠くない未来のお話です。


君の豊かな想像力で、

いろいろ想像しながら聞いてくれると、うれしいです。


その頃は、大人も子供も誰もがロボットを心から大好きでした。

とても役に立ってくれて、何でも代わりにやってくれるからです。


一家に1ロボットというよりも、

1人に1ロボットという感じで、誰もが家族の仲間として、

ロボットと一緒に暮らしていたのです。


地球上に星の数くらいロボットがいたと言っても

大げさではありません。


飛行機や船、自動車や自転車の運転もロボットがやりました。

お料理もロボットが作り、掃除や洗濯、

犬の散歩もロボットがやってくれます。


郵便局や銀行の窓口の仕事はロボットの役目です。

お医者さんは、それぞれの町にドクター・ロボットがいて、

お米作りや畑を耕し収穫するのもロボットがやりました。


子供たちは、ロボットと友達になり遊びました。

大人たちは、結婚相手にアンドロイド型ロボットを選びました。


君の宿題も、君に勉強を教えてくれるのもロボットがやってくれたとしたら

君はどう思いますか?


そうですね。君が思っている通り、

そんな時代は50年ほどしか続きませんでした。


みんなが、代わりにやってもらえることに、あきてしまったのです。

やがて、人間たちはロボットから離れていきました。


ロボットは、次々にムーンシャトルで運ばれ、月に捨てられました。

そして、月にはロボットを積み上げてできた高い山ができました。


しばらくすると、その山の頂きの上で、

3台の壊れていないロボットが、暮らしはじめました。


『ガットン、ガットン何をそんなに眺めているんだい?』


ロボットのテクノがたずねました。


『ああ、地球って青いなあと思って』


ロボットのガットンは、そう言うと、なつかしそうに宇宙に浮かんだ青い星を、

胸のドアから望遠鏡システムを引き出して、見ています。


『地球は、もう過去の星さ。僕らは捨てられたんだぜ。

見たって何にもなりゃあしない』


ロボットのテクノは、車両走行タイプのロボットがみんなやるように、

タイヤ交換をしながら、そう言いました。


『わかってる。わかってるんだけど……それより、コンピは?』


ガットンは360度対応の円形ロボットがするように、

体をまわして、コンピを探します。


『あぁ、アイツはガラクタになったロボットたちの胸の奥のコアボックスから、

知識をダウンロードし続けてるよ。あんなに、自分の中に知識をつめこんで何が面白いのか』


ガットンはコンピを探そうと、山の頂きからゆっくりと降りていきました。

ところどころにまだ、システムが作動しているロボットがあり、

ガットンがその上を走行すると、文句が飛びます。


しばらく降りていったところでガットンは、壊れかけたロボットのたちに埋もれるようにうずくまっているコンピを見つけました。


『やあ、コンピ。ここにいたのかい?』


ガットンは、コンピの顔を探しました。


『何だと言うんだい?研究の邪魔はしないでくれたまえよ』


そう言い終わると、穴の中から高速で回転させた顔が出てきました。

頭には、穴堀り用のドリルがついています。

コンピは、穴堀り用のロボットがするように、熱くなったドリルにすぐ送風を当てはじめます。


『君のことが気になってね。もしも故障していたら、助けが必要かなと思って』


『ありがたいが、心配は無用にしてくれ。

…………それはそうと、良い情報を手に入れた。知りたいか?』


『良い情報って、どんな?』


ガットンは、コンピに顔がくっつくくらいに近づきました。


『よせよせ、磁器センサーがハウリングする』


案の定、ピ~ピッピッピッピッピッピッという音が鳴り響きました。

思わずガットンが、1メートルほど後ずさると、音がやみました。


『どんな……』


『まて、まて、また近づこうとするな。そこで待て。教えるから』


コンビは、右目を立体映写モードに切り替えて、

ガットンの正面に映像を写しはじめました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



人間のある有名な意識研究家が教壇に立って講演している姿が写し出されました。



〈続く〉

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