日本繰返昔話:うりひめこ編

@nanasinonaoto

第1話? うりひめこ

むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。ある日、おばあさんが川へせんたくに行きました。川上から箱が二つながれてきました。プカプカ、プカプカ。これを見ると、おばあさんが呼びました。

「実のある箱はこっちこい。実のない箱はあっちいけ。」

 実のある箱がよってきたので、おはあさんはそれを拾って、家へ帰りました。実のない箱がどうなったかは、また後でお話しします。


 おばあさんは、晩におじいさんとふたりで箱を開けてみたら、中から大きなうりが出てきました。

「まあ、りっぱなウリだ。なんというウリだろう。きっと、うまいウリにちがいない」

 包丁をあてようとすると、もうウリが二つにわれて、中から、赤んぼが生まれてきました。オギァ、オギァ、かわいい、女の子だったのです。そこで、この子をうりひめこと名前をつけました。だいじに育てているうちに、美しい娘になりました。機織りがたいへんじょうずになっただけでなく、とても聡く、布の出来とあいまって町でも評判を呼んでいました。


 ある日、おじいさんとおはあさんは、いっしょに山に行くことになりました。そこで、おじいさんがいいました。

「うりひめこや、うりひめこや、わたしたちは山へ行ってくるからね。用心して、留守番をしておいで。ひとりでいると、アマンジャクという悪い女がやってくる。アマンジャクは長いツメをしていて、とても、おまえなんかかなわない。窓や雨戸にかけがねをしておくけれど、外からよんでも、決して返事をするんでないよ」


 こういって、ふたりは出ていきました。うりひめこは、ある準備をしてから、部屋のなかで機織りを始めました。

「トッキン カタリ キン カタリ

 管こ無くとも 七ひろ織れる

 トッキン カタリ キン カタリ」


 案の定、アマンジャクがやってきました。

「うりひめこ、うりひめこ、おれといっしょに遊びましょう」

 ねこなで声でアマンジャクはよびました。うりひめこが知らぬふりをしておりますと、ますます、ねこなで声を出して、

「うりひめこ、うりひめこ、ここのところをあけてくれ。ほんのすこし、ツメのかかるだけあけとくれ。」

 うりひめこはこわくもなりましたが、勇気を出して言いました。

「いやよ。ツメのかかるだけあけても、かけがね外して戸口をあけてしまうもの」

「そんなことをするものか。約束するからあけとくれ」

「約束のかたをもらえなきゃ、ちっとも信じられるものですか」

 そうしてまた機織りを始めようとすると、アマンジャクは言いつのりました。

「約束のかたって、なんだ?なんでも取ってきてやるぞ?」

「ほんとになんでも?」

「なんでもだ!おれは嘘つかない!」

 アマンジャクのことなんかこれっぽっちも信じられないうりひめこは、それじゃあともったいつけて言いました。

「じゃあ、あなたの長いなが~いツメを全部ちょうだい。そしたら戸口をちょっとだけ開けてあげる」

「いやだね!とっても痛そうなのに、戸口をちょっと開けてくれるだけなんて、つりあってないじゃないか!」

「いやならいいわ。私は機織りをしなきゃいけないの。町でも評判なんだから」

「機織りなんかより、長者どのの裏畑に、桃の実もぎにいかないか」

「いやよ。おじいさんやおばあさんにしかられるし、もしかしたら長者どのも私の布を楽しみにしてるかも知れないわ。あなたがここに居座って出来上がりを邪魔するのなら、きっとお仕えしてる人たちが様子を見に来るわ。それにおじいさんとおばあさんがあなたの意地悪を知ったら、きっと追いかけ回していじめぬいてしまうわ」

「うりひめこはひどいことを言うなぁ」

「だって、あなたについてひどい話しか聞いたことないもの。身に覚えがあるんじゃないの?」

 身に覚えしかないアマンジャクは、ぼやきました。

「それは、そうかもしれないけど・・・。でもそしたら、どうしたら、うりひめこはおれを信じてくれる?」

「さっき言ったとおりよ。あなたの長いツメを全部私にちょうだい。そしたら、戸口をちょっとだけ開けるか、もう一つのご褒美か、どっちかを選ばせてあげる」

「どんなご褒美かは、教えてもらえないのか?」

「ダメよ。あなたは、あなたが信じられる誰かか証を立てたいのでしょう?さあ、そろそろ帰って。私は機織りをしないといけないの」


 長者の従者に追い立てられたり、おじいさんやおばあさんにいじめられたりしたくはなかったアマンジャクは、その場では決められずに、すごすごと、深い谷間にある住処の洞窟に帰りました。

 アマンジャクは、悩みました。ツメを十本も抜くのは、怪(あやかし)だとしても、とても痛くて、望んでやりたいこととは思えませんでした。

 それでも、戸口をちょっぴり開けてもらうのは釣り合わないとしても、もう一つのご褒美が気になってしかたありませんでした。

 誰かに信じてもらえるのも、それが町で評判の器量良しで、長者どののお嫁さんにもらわれるんじゃないかという噂を聞きつけていたのも、アマンジャクの決心を促しました。


 その晩、うりひめこは昼間に何があってどんな話をしたのか、すっかりおじいさんとおばあさんに伝えて、次の日に何をしてほしいのか頼みました。

 二人はアマンジャクのしつこさを知っていたので、つきまとわれたひめうりこがやむなく相手をしただけでなく、うまくあしらい返したことをほめておきました。

 うりひめこは、ちょうど良い機会と、自分の秘めた望みを二人に伝え、二人は驚いたものの、それがうりひめこの望みならと受け入れました。


 はたして次の日、おじいさんとおばあさんが出かけて、うりひめこがまた一人きりになった頃に、アマンジャクはやってきました。


「うりひめこ、うりひめこ。約束のツメをそろえて持ってきたぞ。戸口を開けるか、いいや、もう一つの褒美が何か教えておくれ」

「その前に、ほんとにあなたのツメがきれいさっぱり無くなってるか、確かめないと」

「戸口をほんのちょっとでも開けてくれれば、その目で確かめられるよ」

「そうやって、ツメがちょっとでも通る隙間が出来れば、あなたは戸口を開けてしまえるのでしょう?だから、おばあさんに確かめてもらうわ」


 アマンジャクがぎょっとして振り返ると、おばあさんとおじいさんがそろっていました。

「両手と両足をお出し。ツメがきれいさっぱり無くなってたら、あたしらもあんたを信じてあげよう。もし無くなってなかったら、とげばかりの茂みをひきまわしてやるから覚悟おし」

 スキやクワを手に、じりよってくる二人を前に、アマンジャクは慌てました。

「ま、まてまて、まってくれ!ツメは切ってきたぞ!」


 アマンジャクの両手両足の長いツメは、たしかに根本から、一本残らず切り取られていました。

「こりゃあ、めずらしいこともあるもんだ。アマンジャクが約束を守るなんて」

「うりひめこが褒美を約束してくれてたから。だから、今度は、うりひめこが約束を守る番だ!」

「いいわよ。じゃあ、戸口をそのツメが通るくらい開けるのと、ご褒美のどっちがいいの?」

「褒美の方だ!」

「ご褒美はね、私が、あなたの、ともだちになってあげるというものだけど、どうする?」

「とも・・・だち?」

「そう。あなた、ともだち、いないでしょう?」

「・・・・・」

「だから、私が、あなたの最初のともだちになってあげる。さしあたって、機織りから教えてあげようか。あなたが、覚えたいならだけど」


 おじいさんとおばあさんは、事前に、うりひめこから話を聞いていたとはいえ、アマンジャクなどというアヤカシと友達になって大丈夫なのかと心配しておりましたが、うりひめこは二人を安心させるように、かすかにうなずいてみせました。


 アマンジャクは悩んでおりましたが、やがて、うりひめこに尋ねました。

「ともだち、いない。だから、うりひめこがなってくれるのは、うれしい。でも、なんで、機織り?」

「あなた、私にちょっかいかけにきたの、評判を聞いたからでしょう?」

 アマンジャクは、渋々とだけど、うなずきました。

「それで、見つかって怒られるかも知れないのに、長者どのの裏畑の桃をもぎに行こうって、誘ってきたのはなんで?」

 アマンジャクは、答えられませんでした。

 うりひめこは、問いを重ねました。

「あなた、誰にでも、化けられるのよね?」

「あ、ああ。できないこともない」

「それで、私の代わりに、長者どのに、嫁入りしたいのよね?」

 アマンジャクは心底おどろき、叫んでいました。

「なんでそれを知っている?!」

「さあ、なんでだろうね。でも、町で私が評判になって、長者どのからそんな話が来るかもって心配になったから、あなたは私のところに来たんじゃないの?」

 アマンジャクは黙り込んでしまいました。

「だから、私と入れ替わりに嫁入りしたいのなら、機織りはできないとダメ。私じゃないとばれちゃったら、追い出されるくらいじゃすまない。クビも取られてしまうかもよ?」

「わかった。でも、おれが機織り覚えて嫁入りしたら、うりひめこは嫁入りできなくなるぞ?」


 うりひめこは、ちらりとおじいさんとおばあさんを見てから言いました。

「暮らしに困らないって意味では、悪くないのかもね。でも、長者どのは、お金には困ってないのに、お金が大好きなの。私をお嫁にもらいたいっていうのも、私が織る布が評判になってるから。私と会ったことも無いのにね」

 おじいさんがわずかにうつむきましたが、気づかないふりをして、うりひめこはアマンジャクに尋ねました。

「管こがなくて、織れないっていうなら、それくらいは準備してね。誰からも盗んだりしても、黙って借りてきても、ダメだからね」

「わかった。何とかする」


 それから数日して、アマンジャクは管こを用意してきて、機織りの手ほどきが始まりました。確かに、あの長いツメは邪魔だったと、アマンジャクはまた伸び始めたツメは削って邪魔にならない長さに保ちました。

 さらにしばらくして、長者どのから正式に、うりひめこを嫁にほしいと、おじいさんとおばあさんに申し入れがありましたが、うりひめこは、嫁入り修行をしないといけないからと断ってもらいました。

 うりひめこはその言葉通り、アマンジャクが嫁入りしても、ちゃんと機織り以外の仕事も出来るように仕込み始めました。


 さらにしばらくして、季節がいくつか変わる頃になって、アマンジャクの機織りも嫁としての仕事もふるまいも、なんとか様になってきましたが、町での評判は、ばらつきました。うりひめこが織ったところと、アマンジャクが織ったところが、くっきりと区別がついてしまっていたからです。

 そのころには、長者どのもじれてきていて、何度もおじいさんに催促をかけていました。

「のう、うりひめこや。アマンジャクも並くらいの布は織れるようになった。立ち居振る舞いも様になってきたし、一通りの仕事もできるようになった。そろそろ、いいのではないか?」

 アマンジャクも得意そうにうなずいていましたが、うりひめこはうなずきませんでした。

「まだダメよ。私が織れる部分が無くなってしまえば、アマンジャクは嫁入りしても、すぐに追い出されてしまうわ。だから、花嫁衣装が織れるまではと、まだ待ってもらって」

 おばあさんからも、嫁入りしてすぐに離縁されるのはかわいそうだとさとされて、アマンジャクはまだがんばることにしました。


 それからの冬を越すまでの間、昼も夜も無く機織りを続けたアマンジャクは、めきめき腕を上げました。

 その間うりひめこもまた腕を上げましたが、もう二人で織ることはやめていたので、人々はまた調子が戻ったのだと評判を上げ、長者どのはまた盛んに催促するようになりました。


 やがて雪が溶けて春の花々が咲き始める頃、うりひめこは旅支度を終えました。ずっとうりひめこと過ごしてきて、アマンジャクはうりひめこの姿で過ごすことが当たり前になってきて、おじいさんとおばあさんが呼びかけた時にどちらもが同じ様子で同じ声で応えていました。アマンジャクと不意に呼びかけて応えようものなら、ご飯抜きの罰が与えられたので、アマンジャクはうりひめことして振る舞い、おじいさんとおばあさんにもほとんど見分けがつかなくなっていました。ただ、時々ツメをやすりで削らないといけないので、そこで見分けがつくくらいでした。


「本当に、行ってしまうのか?」

 アマンジャクは、うりひめことの日々を名残惜しく思うようになっていました。

「ええ。あなたの嫁入りに私がここに残っていたら邪魔でしょう?私は嫁入りに興味が無いから、旅に出るの」

「でも、本当なら、お前が嫁入りして幸せになる筈だったのに・・・」

「気にしなくていいのよ、本当に」

 うりひめこは、アマンジャクが時々親に会いに戻る間に織り上げておいた、見事な打ち掛けをアマンジャクに渡して言いました。

「あの長者どのは、たぶん悪い人ではないのだけど、もうお嫁さんを何人も持っているの。それでまた商いを大きくしたりして、商売をしてる人としては間違いないのだろうけど、私はそこに加わりたいとは思えなかったの。だからあなたも、他のお嫁さんたちに腹を立てたり、意地悪したり怪我をさせたりしてはダメよ。この打ち掛けと引き替えに、私と約束なさい。いいわね?」

「わかった。約束する」

「おじいさんとおばあさんのことも、よろしくね。二人とも、ここに残るうりひめこのことを、よろしくお願いします。今まで、ありがとうございました」

 そうして、うりひめこは打ち掛けをアマンジャクに渡し、アマンジャクの親と一緒にどこかへと旅立っていきました。


 うりひめこは、アマンジャクの親の住処、谷底にある洞窟につれてこられました。

 アマンジャクの親はどうしても気になっていたことを尋ねました。

「どうして、入れ替わりを自ら受け入れた?」

「言ったでしょう?あの長者どのに嫁入りしたくなかったの」

「それが本当だとしても、それだけではないだろうに」

「どうしてそう思うの?」

「お前の魂は、不自然だ。一つじゃなく、二つが入り交じってるように見える」

「生まれ変わりって、信じる?」

「信じる」

「じゃあ、そんな類のものよ」

「そうだとして、どうして娘のことを気に掛けた?」


 うりひめこは、アマンジャクの親の目をじっと見つめて言いました。

「おばあさんにね、聞いたの。私を拾った時のことを」

「それが、どうした?」

「箱は、二つ流れてきてたって。私はその中に入ってたうりの中から出てきたらしいわ。実のない方はあっち行け、って言われた箱の方には、何が入ってたのかな、って、気になってたの」

「死にかけの赤子が、入っていた」

 アマンジャクの親は、深いため息をつき、うりひめこもかぶりを振ってから、先をうながしました。

「それで、死にかけてた赤ん坊を、あなたはどうにかして、生かして、いいえ、アマンジャクとして生まれ変わらせた?」

「あやかしの類がどうやって生まれ、増えるのか、自分たち自身でさえよくわかってはいない。ただ、その時はわかったのだ。だから、尋ねた。このまま死ぬのと、アマンジャクとして生まれ変わるのと、どちらがいいか」

「赤ん坊に?」

「ああ。死にかけだったが、うなずいたように見えた。だから、丸呑みして、食らって、腹の中で溶かして、尻からひり出した。アマンジャクとして」

「それで、おばあさん達に育てられてる私のことを、あなたの娘に教えたのね」

「そうだ。あたしと一緒にいても、アマンジャクとして生きていくだけだ。いつどうやって終われるかもわからん。だったら、別の生き方のきっかけになればと思って、教えた。生まれにつながりがあったかも、知れなかったしな」

「まあ、たぶん、生まれにつながりは無いとは思うわ。どの道、私も捨てられた子の一人ってだけだと思うし」

「それで、これからどうするつもりだ?」

「明日、二人で、嫁入りするあなたの娘の姿を見送ってから、どこか適当に旅をするわ」

「別の嫁ぎ先でもさがすのか?」

「ううん。当面はいいわ。本当に落ち着きたい先が見つけられるまで、あなたの気が向く間は、私につきあってね」

「娘の友達に、お前はなってくれた。恵まれた嫁ぎ先も譲ってくれた。何も問題が無いわけではなさそうだが、かといって、お前が娘の恩人であることはかわらない。だから、私が消えて無くなるか、お前の寿命がつきるくらいまでは、つきあってやろう」

「女の一人旅って物騒だしね。頼りにさせてもらうわ」


 そうして、うりひめことアマンジャクの母親は、翌朝、嫁入りするアマンジャクの娘の姿を見送ってから、どことも知れぬ先へと旅立って行きましたとさ。


ーーー

これは、うりひめことして、生まれ変わった、いや転生した、水無瀬稲穂という女子の物語の一つ。


最初の記憶してる世界では、普通の学生で、本好きなだけの子供だった。それが、新型コロナとかって世界的な感染症で死ぬ間際に、どうせなら、いろんな物語の世界に生まれ変わってみたいって思ってしまったせいか、それが叶うようになってしまった。


このうりひめこという女の子の物語もそう。日本の昔話の一つで、桃太郎の女の子バージョンとして有名な方なんだけど、内容はいろんなバリエーションがあってね。アマンジャクにばらばらにされて殺されてお肉を料理されて、私になりすましたアマンジャクにおじいさんとおばさんが食べさせられたりとか、長者どのの裏畑の桃の木に連れて行かれて、てっぺんの方まで登らされて落ちて死んでしまって、入れ替わったアマンジャクが長者どのに嫁いだりとか。


 で。私もいろいろ対策してみた訳ですよ。おじいさんとおばあさんが二人して出かけてしまうタイミングはどうやってもやってきて、アマンジャクがやってきてしまう。

 それまでに刀を手に入れてもらったりとか、用心棒を雇って待ちかまえてもらったりとかね。退治したり追い払っても、親の方が復讐に来たり、呪いでひどい目にあったりした。

 その前に、どうにか長者どのの家に嫁入りしてみても、いつの間にかお嫁さんの一人にアマンジャクがなりすまして入り込んできていろいろめちゃくちゃにされたりとか、告発して追い出したり退治しても、以下同文て感じで私が恨みを買って、やっぱり酷い目にあった。

 長者どのも悪い人じゃないんだけどね。あやかしの類が相手だとどうにもならないことの方が多くて。


 だから、もうこの物語だけでも、やり直した(やり直させられた)回数は、十回や二十回じゃきかないくらい。

 敵に回してダメなら、味方に回してみたらどうだろう?、て発想を転換してみて、アマンジャクの信頼を得る流れをつかむまでにも何度かやり直したし、アマンジャクだけを嫁がせないとダメとか、私が残ってるとやっぱりダメとか、そういったのを突き止めるまでにもまた何度もやり直しが必要だった。


 いや、確かにさ、願ったよ?物語の世界に転生してみたいって。だけどさ、いやもういいや。どうにか、今回はこのまま「解決した」物語として終われそうだし。


 アマンジャクの母親と旅に出て数年後に訪れた海辺に住んでた漁師の若者と一緒になって、それなりに満ち足りた人生も過ごせて、うりひめことしての一生も終われた。嫁入りしたアマンジャクの娘も、長者どのとの間に娘も生まれて、幸せに暮らせていたらしい。

 良かった。


 私は、旦那と子供たちと、それから遠くから見守ってくれてるアマンジャクの母親に看取られながら、その物語の中での生を終えた。


 これで本当に終われるのかと思うとそうでもなさそうだったので、次はどんな物語なのか、簡単に終われればいいなと思って、意識が途切れ、また戻ったと思ったら、またおじいさんとおばあさんの間の子供として生まれてた。

 どう見ても、二人から生まれてくる筈も無いくらいの親に見えたのだけど、神様に一生懸命お願いしたら、私を授かったのだという。

 まぁ、それはいい。男の子として生まれたのも初めてじゃないし、それも置いておこう。生まれて何年か重なっても、私がものすごくチビ、というか、ありえないくらいの小人こびとなことから、今回生まれついた物語の登場人物に心あたりがついた。私が外に出るようになって、周りの大人も子供も、私を「一寸法師」と呼ぶようになったから。


 さて、大筋は覚えてる、筈。あまり不幸ルートは無かったと思うけど、今度はどんな苦労をさせられるんだか・・・。まず、誰かのてのひらの上で踊ってみせないといけないんだっけ。その前に、アリさんとお話しできるようにならないとか。大変だな・・・



(続く?)

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