第8話
「なんか……ごめんなさい……私行くね。」
「おい!乃々華!!」
おじいちゃんは私を必死に名前を呼ぶが私は振り返らず走る。やっぱりこの時代じゃあんなこと通用しない。
なにが勉強はいつか役に立つだ
なにが将来いい仕事つけだ
なにがまともな人になれだ
走っていつの間にか町の商店街通りに着く。空襲のせいで屋根がなく、雨に打たれる私。
「うう……もう帰りたい……」
私はまた走りだし、なにも考えず走る。雨は止まらないし、涙も止まらない。いい人に出逢うと必ず私のせいでああなる。だから私は人には関わりたくなかったんだ。いずれ莉央も冨樫も
お母さんもお父さんもおじいちゃんもおばあちゃんもおじいちゃんの友達も
いずれ私の元を去って私は1人になるんだ。
くらーいくらーいところで1人生きてくんだ。
私はある場所に着いた。そこは
「勿忘草だ……」
辺り一辺勿忘草だった。そこで日差しがでてきて綺麗な風景が広がった。
「勿忘草……私を忘れないで……か……笑えちゃうな……」
私は1輪の勿忘草を手で触りながらそう呟いた。
「あなたは可愛らしくて誰にも忘れられることなんかないよね?……私は違う……」
私が変わればみんなは優してくれる?
私が仮面を被っていい子になればみんなは私と話してくれる?
私がみんなの代わりに死ねばみんなは喜んでくれる?
私がいなくなれば幸せになれる?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます