第17話 のるかそるか3


「ぶふっ!! 何ということだ……!」


 ロングソードを取り落としそうになったトムヤム君の鼻孔からは、鼻血が止めどなく流れ出している。

 あまりの眼福にトムヤム君の時は止まった。

 

「こらああああああっ!! そこ! 頭が高いわああああああっ!」


「ええっ!?」


 神々しい下着姿のカヤタニに指差された団長の無頼庵ブライアンは、剣を両手で握り締めたまま、わなわなと震えている。……驚きと怒り、脅威と畏怖、羨望と劣情、その他色々な感情がない混ぜとなって彼を金縛りにしていたが、カヤタニの声に気圧されたのか、ついに……。


「聞こえてないの?! 頭が高い~!!」


「は、ははああああああああああああ~っ!」


 ゆっくりとではあるが、背中の赤いマントを力任せに引き千切ると、持っていた剣を包むように床に置き、カヤタニに捧げてしまった。


 団長が頭を垂れ、片膝を付いてカヤタニにひれ伏すが早いか、ルンバ・ラルも持っていた剣を十字架のように捧げて平伏した。


「め、女神様ああああああ~っ!」


 椅子にかけたまま静観していたアスカロンとも、これには感心して目を丸くした。


「ほう、こりゃスゴいな、あの団長が……」


「うーん、確かに……」


 無口で沈着冷静なはずの赤騎士穴金アナキンも、キャラに似合わず上がり、カヤタニのセミヌードに視線が釘付けとなっている状態だ。

 だが、魔法使いアビシャグには分かっていた……すぐに円卓の騎士達が我に返る事を。思慮深げに、かけていた眼鏡を鈍く光らせる。


「……はっ! 私は一体何をしているのだ?」


 鎧姿で片膝を付き、卓上のカヤタニを礼賛するルンバ・ラルが頭を上げた。


「ぶ、無頼庵ブライアン殿~!」


 呼びかけに触発されたのか、顔を伏せ腰を曲げた格好の団長も、かっと目を見開く。


「な、何という事だ、この私が……。円卓の七騎士の長であるこの私に、いとも簡単に片膝を付かせるとは……」


「そこ! まだ頭が高いいいいいい!」


『ははあああああああああっ!!』


 カヤタニに怒鳴られた無頼庵ブライアンとルンバ・ラルは、調教された犬のように仲良く伏せた。……が、だんだんと湧き起こる灼熱の怒りに、その身を焦がし始めた。


「――って、いい加減にせんか~! 我ら円卓の騎士団が忠誠を誓うは主君のみ! そちらにおわすゼノビア王女様以外に従う事は、断じてあってはならぬ~!!」


「これでもか~!?」


 ダケヤマがカヤタニを前屈みにさせると、真っ白なブラジャーからこぼれそうになる乳が揺れ、谷間が強調された。


「ぐぐぐっ……」


 

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