幕間
……しかし大きな館だ。何となく辺りを見回っていると、客間の机の引き出しから一冊の手帳を見つける。
かすれたり破れているページも多く、判読箇所は少なかったが。
「140日目。一流の建築士と一流の資材を使って作り上げた別荘だが、困ったことになった。・・・・が、・・・・て、・・・・・・してしまうらしい……」
「143日目。どうも隣国がきな臭い。私はとっくに政治の世界から退いたというのに、今更・・・・で、・・・・・・たまるものか。・・・・・・にはきつく言伝を頼んでおいた」
「148日目。・・・・が、・・・・・を連れてやってきた。わざわざこんな所まで来るとは……老人に隠居させるつもりはないという事か……」
「150日目。笑いがこみあげてくる。乾いた笑いだ。どうして人は争いたがるのか、あきれる。・・・・・・・が後継者に相応しいとあれほど言ったというのに。だからこうなるのだ」
「154日目。やれやれ、けっきょく本家に戻ることになってしまった。またいつでも戻ってこれるように、・・・・と・・・・・・・しておく。金はいくらでもあるが、いつまで管理してくれることやら……」
「156日目。明日は最終日だ。短い時間だったが、やはり私は喧噪よりも静謐を愛する人間だということがよく分かった。それだけで儲けもの、としておくべきか」
この家を建てた人間の手帳……
第一線から退いてこんな辺鄙な場所に終の棲家を作ったのだろうが、しかし、それは長くは続かなかったようだ。
手帳の最終ページには、255年前の六の月と記されている。いつの時代も、人は悩み続けているものらしい。
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