薔薇の花園
鷹島隆夫
老婆
何かを書くというのは私の想像以上に頭のフル回転や日頃の中の少しの発見、そしてそれらを活用するための発想と想像力が多いに必要不可欠で、そのエネルギーも同じくあらなくてはならないのである。
しかしどんな漫画家や小説家にも想像に必ず起こりゆる災難がある。それはスランプに陥ることである。
分からない読者もいると思うので簡単に説明すると、自分で発想ができなくなってしまうという恐ろしい災難である。私はそれにジワジワと気が付かないうちに襲われていたのであった。
そんな場合は自分の好きな事・得意な事・やりたい事などで気分転換をして脳の灰色の細胞を活発に働かせる人がいる。私もその一人である。
私は今海沿いの歩道をひたすら歩いている。空は黒墨のような黒さで森林の方から己の羽を擦り付け合う虫の声がひたすら鳴り止まない。それが私のしゃくに触る。
実は最終便の汽車に乗り遅れてしまい、今宿を探して来た海沿いの道を逆走しておよそ10分は過ぎている、しかし一向に見つからず、ただ体力と時間が減っていく一方である。
どれくらい歩いたのであろうか?もう時間を気にするような気分ではなくなった。
すると前の方からズルズルと何かを引きずるような音が聞こえてきて次第に大きくなっている。汽車の事もあり、不安が私の心に押し掛かる。
私の少しの先にある街灯の下に照らされたのは、腰が弓のように曲がった人で頭に縛った手拭いから除いたその顔は少し驚きがあった老婆の顔であった。私の目の前に来て、
「あんた、、ここらへんじゃ見掛けない顔だね~。こんな夜中にどうした?」
「あ、、、私旅をしてまして、しかし汽車の最終便に乗り遅れてしまい、宿を探して歩いているんです。」
「あーなるほど。」
老婆は後ろへ向いて
「ならここから少しの所の海沿いに薔薇旅館という宿があるからそこへ泊まるといい。では気を付けてな。」
「そうなんですか!?助かりますありがとうございます。」
そして私は歩き出した。
老婆の言葉は本当だった。ほんの少しの所に一軒だけ明かりが窓から漏れていた。
そして光の目の前に着くと、どうして薔薇旅館なのか察した。旅館は昔からある和風で、木の黒さが私に年季を感じさせ、その和風には合わぬ色とりどりの薔薇の花園が玄関に続く石の通路以外に一面に咲いている。そして入口の上に木の看板があり、筆で達筆にこう書かれている。
「薔薇旅館」
と、、、、、、。
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