第66話「キャラバン」



「村長さんお邪魔します」


「おお、その声はリックか?

 待っていたよ。

 早速で悪いが手紙を読んでくれんかね?」


「はい」


僕はテーブルに置いてあった書状に目を通した。


「なんて書いてあったのかね?」


「はい。

 こんどエンデの町に旅の隊商キャラバンが来るそうです」


「読んでくれてありがとう。

 エンデの町にキャラバンが来るのは一年振りじゃのう」


「隊商が町に来ると、何か特別な物が手に入るのですか?」


「エンデの町では手に入らない、最新式の弓や短剣、薬草などが売られている。

 他にはも特殊なインクや絵の具、魔導書や魔術師が使うの杖なども売っているが、高くて儂らには手が出せん」


「エンデの町で売ってる物と、隊商が持ってくる物は違うんですか?」


「キャラバンが売っている物は最新式なのじゃよ。

 その分値が張るがね。

 グランツの使っている弓や短剣も、何年か前にキャラバンから買った物だよ。

 あの年はワーウルフが村の近くまで来て大変じゃったが、奴らを倒したおかげでその毛皮が高く売れてのう」


そういえば、グランツさんの使っている弓や短剣は年季が入っていたな。


グランツさんはこの町で一番狩りが得意だ。


食料を取ってくるという意味でも、魔物を倒してくれるという意味でも、彼はこの村になくてはならない存在。


その彼の武器がボロボロというのは村としては心許ない。


「村長さん、こちらから隊商に物を売ることは可能ですか?」


「それは可能だが」


「魔物の毛皮以外で、高く買ってもらえそうな物はありますか?」


「売ると言ってもこの村は貧しいからのう。

 幸いなことにワーウルフの群れも、あれ以来村の近くには来んしのう」


「例えば、こんな物は売れますか?」


僕にはあるアイデアがあった。









「リック先生、お帰りなさい!」

「村長さんのところにきたお手紙にはなんて書いてあったの?」


「ただいま、リヒト、シャイン。

 こんどエンデの町に隊商キャラバンが来るって書いてあったんだよ」


グランツさんの家に帰るとリヒトとシャインが出迎えてくれた。


キッチンからパイが焼けるいい匂いがする。


「キャラバン! ボクも見に行きたい!」

「私も!」


「こらこらガキが行くところじゃねぇよ!

 十年早い!」


「グランツさんのケチ!」

「ケチーー!」


「キャラバンが来る時期は人さらいも増えるんだ!

 この村に帰れなくなってもいいのか?」


「人さらいやだー!」

「怖ーーい!」


グランツさんに脅された子どもたちが、僕の後ろに隠れた。


「お前らが成長して、俺みたいにあごヒゲを蓄えたワイルドな男になったら連れてってやるよ」


「私女の子だがらおヒゲ生えないもん!」

「それって何年後〜〜?

 ボク、大人になってもグランツさんみたいなヒゲもじゃになりたくな〜い」


子どもたちの言葉にグランツさんは密かにショックを受けていた。


それにしても人さらいか、そんな物騒な物が本当に出るのかな?


それとも子どもたちを怖がらせる為に言っただけ?




☆☆☆☆☆☆




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