第60話「ミアとの約束と過ちと転落」




僕たちはミアに魅了の魔法をかけられ、進級パーティーでおかしな行動をしたということで解決した。


それによりアルド殿下とべナットと僕の三人は、幽閉を解かれ一カ月の停学処分と、自宅謹慎処分のみで済んだ。


僕は自宅に帰ってからもミアの事が気になって仕方なくて、進級パーティーのあとミアがどうなったのか調べた。


僕たちに魅了の魔法をかけたことにされたミアは、兵士に捕らえられ、牢屋に入れられたらしい。


ミアの実家のナウマン男爵家は、娘のしでかした不始末の責任を取らされ取り潰しとなっていた。


ナウマン男爵家の財産は全て、ブルーノ公爵家とメルツ辺境伯家とクロス子爵家の慰謝料に当てられた。


男爵家の財産を全て処分してもお金が足りず、ミアは娼館に売られることになった。


ミアは残りの一生を娼館で過ごし、そこで働いたお金は全て慰謝料に当てられるらしい。


そのことを知った僕は、いても立ってもいられなくてミアの元に向かった。


看守に賄賂を渡し、ミアのいる牢屋の中に入れてもらった。


ミアは酷くやつれていて、ボロボロの服を纏っていた。


初めて図書室で会ったときのキラキラしたミアはそこにはいない。


ミアが僕たちのせいでこんな目に合っているなんて……!


「助けてリック!

 あたしこのままじゃ娼館に売られちゃう!

 あたし魅了魔法なんて使っていないのに……!」


「わかっている!

 ミアはそんな魔法を使えないことは僕が一番理解している!」


「アルドとべナットに伝手を使って手紙を渡したの!

 でもあの二人からは全然返信が来なくて……!」


あいつらは僕よりも激しくミアとイチャイチャしていたくせに!


あっさりとミアを見捨てるなんて……!


酷い奴らだ!


「大丈夫、僕がミアを助けるよ!

 残りの慰謝料の額を教えて、僕が払うから!」


「五千万ゴールドよ!」


五千万ゴールドか……予想していたより遥かに金額が大きい。


僕は次男だから、受け継ぐ財産が少ない。


魔術師団に所属していればローンも組めるが、学生の身分ではそれも難しい。


「お願い、リック!

 あなたしか頼れる人がいないの!

 何とかして!」


ミアは泣きながら僕にすがりついてきた。


ミアに泣いて頼まれたら断れない。


「わかったよ。どんな手を使っても僕がなんとかする。

 その代わりミアには僕の愛人になってほしいんだ」


「愛人……?」


「本当はミアを正妻にしたいけど、僕は次男だから家を継げない。

 お金を得る為には婚約者のエミリーと結婚するしかない。

 爵位は低いが、クロス子爵家はお金持ちだから五千万ゴールドぐらい簡単に用意できるはずだ。

 僕は子爵家に婿養子に入るから、エミリーとも子作りしなくちゃいけないけど、跡継ぎが生まれたら彼女とは口も聞かないつもりだ。

 子爵家に別邸を建てて、君と君の家族を住まわせるよ」


「素敵な計画ね」


「君以外と子作りすることになるけど許してくれる?」


「もちろんよ!

 だってそれはあたしと、あたしの家族を助ける為でしょう?

 助けてくれたお礼に……あたしの初めてをリックに上げるわ!」


僕は今までミアとキスしかしてない。


殿下やべナットともミアとは、キスまでの関係だと言ってた。


ミアの初めては僕が貰うんだ。


僕はあの二人に勝ったんだ!





その時の僕はそんな浮かれたことを考えていた。


それがどれだけ愚かな考えか気づきもせずに。



☆☆☆☆☆☆




少しでも面白いと思ったら、★の部分でクリック評価してもらえると嬉しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る