第59話「貴族牢と側妃の策略」
進級パーティで婚約者破棄騒動を起こした事が問題視され、僕たちは貴族牢へ幽閉された。
貴族の牢屋なので普通の部屋と変わらず家具もテーブルも椅子もベッドもある。
トイレとお風呂もついている。
アルド殿下とべナットも貴族牢に入れられているが、僕とは別の部屋だ。
なぜ僕たちが貴族牢に入れられなければいけないのか!?
僕たちは悪女たちからか弱いミアを守っただけなのに!
罰せられるなら悪辣な手段でミアをいじめていた彼女たちだ!
王城では文官たちが、
「進級パーティで問題を起こした第二王子は王位継承権を剥奪し一生幽閉すべきだ」とか、
「殿下を止められなかった側近の二人は貴族から除籍し、王都から追放すべきだ」
などと勝手なことを論じているらしい。
牢屋に入っていてもそういう情報は入ってくる。
食事を持ってくるメイドが直接教えてくれたり、食器の下にメモが隠してあったり。
自分が正しいと思っていても、長い間牢屋に入れられていると不安になってくる。
だけど幸いなことに、僕たちが貴族牢に入ってる時間はそんなに長くなかった。
貴族牢から出るように言われ、メイドに案内された部屋に行くと、そこにはアルド殿下とべナットがいた。
久しぶりに幼馴染の顔が見れて、少しホッとした。
自分で思っていた以上に、貴族牢での生活はきつかったらしい。
そして部屋にはなぜか、アルド殿下の実母である側妃様もいらした。
側妃様は僕たちに、
「全てはミア・ナウマン男爵令嬢のせいにします。
みな男爵令嬢に魅了の魔法をかけられていたのです。
わかりましたね?」
と言った。
側妃様の言い方はやけに含みがあった。
ミアは魅了の魔法なんか使えない。
仮にミアが魅了の魔法を使えたとしても、魔力量の少ないミアの魔法は魔力量の多い僕には効かない。
僕は「どういう意味ですか?」と側妃様に聞こうとした。
しかしその時、
「分かりました、母上」
「承知いたしました。側妃様」
殿下とべナットがそう言ったのだ。
僕より成績の悪い二人が理解できた話を、成績優秀な僕が理解できないのはら僕のプライドが許さなかった。
殿下はともかくべナットなんか、筋肉と剣術とご飯のことしか頭にないじゃないか。
今さら僕だけ「分かりません」なんて言えない。
「ザロモン侯爵令息、あなたもよろしいですね?」
側妃様に年を押された。
「はい、側妃様。
承知いたしました」
僕はプライドが邪魔してそう答えることしかできなかった。
その選択が僕だけでなく、周りも破滅に導くとはこのときの僕は夢にも思わない思わなかった……。
☆
殿下とべナットは僕より先に側妃様に呼び出され、ミアがブルーノ公爵令嬢とメルツ辺境伯令嬢とエミリーにいじめられたという話が、嘘だと知らされていた。
「キスが庶民の間では友情の表現」という話も嘘で、ミアは学園に玉の輿狙いでやってきて、手当り次第男をたぶらかしていたことなど、色々と聞かされていたのだ。
王妃様は僕の成績がいいから僕には、
「全てはミア・ナウマン男爵令嬢のせいにします。みな男爵令嬢に魅了の魔法をかけられていたのです。わかりましたね?」とだけ伝えれば、全てを理解できると思っていたらしい。
側妃様は僕を過大評価していた。僕を一を聞いて十を知ることができる天才だと思っていたようだ。
本当は僕は言葉の行間を読むのが苦手で、一から十まで説明を受けないとわからないというのに……。
側妃様からミアの正体を聞かされた殿下とべナットはあっさりミアを捨てる決断をしていたようだ。
そんなことすら僕は聞いていなかった。
あの場にいた僕だけが、何も知らされていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます