第21話「デルミーラの結婚」
「今まで誰にも言えませんでしたが、わたくしも……フォンジーに、酷い目に合わされていましたの……。
ううっ……思いだしたら涙がこみ上げてきました。
ごめんなさい……暗い気分にさせてしまって……」
美しいわたくしが瞳に涙をたたえ上目遣いで訴えれば、男たちは簡単に落ちた。
今なら侯爵家より格上の辺境伯や公爵だって落とせる。
わたくしがそう確信したとき、彼と運命的な出会いを果たした。
ハリマン・シーラッハ、眉目秀麗、学生時代の学問の成績も優秀で、資産家の若き公爵。
三年前に事故で奥方を亡くされてから独り身、わたくしの五歳年上。
シーラッハ公爵は大人な色気と、時折見せる憂いを帯びた表情がたまらなく魅力的な方だった。
後妻というのが気になるが公爵家には跡継ぎがいない。
彼と結婚すればわたくしの子が次の公爵になれる。
真面目なだけが取り柄の落ちぶれ侯爵のフォンジーと結婚するよりはずっといい。
わたくしは悲劇のヒロインを装ってハリマンに近づき、彼の心を掴み結婚することに成功した。
初夜に処女じゃないことを追求されたが、フォンジーに無理やり侵されたからだと泣きながら訴えると、お人好しの公爵はあっさりと信じてくれた。
その上わたくしに同情までしてくれた。チョロい男だわ。つくづく世間知らずの公爵様は扱いやすくて助かるわね。
公爵の前妻は深層のご令嬢だったらしい。彼は貴族の娘は前妻みたいに俗世に染まっていない箱入りだと思っているのかしら? だとしたら笑えるわ。
彼がわたくしの本性に気づく前に、跡継ぎを生んで地位を盤石にしておきましょう。
公爵は世間知らずだが女性のエスコートには長けていた。
その上リッチなので、オートクチュールのドレスや珍しい宝石をふんだんに使ったアクセサリーを沢山買ってくれた。
二度目の結婚だけあって夜の営みの方もなかなかのものだ。
一年後には跡継ぎの長男にも恵まれ、その子がすくすく成長し、わたくしは今とても幸せだ。
わたくしはとても幸せで、これからもこの幸せが続いていくはずだった……。
あんなことが起きるまでは……。
☆☆☆☆☆
少しでも面白いと思ったら、★の部分でクリック評価してもらえると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます