第6話「真実」




でもそれなら、先ほどのリック様の言動もうなずける。


本当に魅了魔法にかかっていたのなら魅了魔法が解けたあと、自分を操り、大勢の前で取り返しのつかない愚行を犯させたミア様を恨むはず。


ミア様を愛人として囲う、ミア様の家族の面倒を見たいなんて言わないはずだ。


ということは、第二王子殿下とリンデマン伯爵令息とリック様が学園でしていたことは、全部本人の意思だったということですね。


「黒幕はアルド殿下の母親の側妃様だろう。

アルド殿下の罪を軽くするため、アルド殿下と側近の二人がミアの魅了魔法にかかったことにした。

本来なら王命による婚約を勝手に破棄すると宣言し、公衆の面前で公爵令嬢に冤罪をかけ罵倒するなんて真似をしたら、謹慎なんて生ぬるい罰で済むはずがないからね。

王位継承権を剝奪され、王族から除籍される」


「確かにそうですね」


アルド殿下、リンデマン伯爵令息、リック様はそれほど大きな過ちを犯したのだ。


「だからブルーノ公爵とメルツ辺境伯と協力し、アルド殿下とリック・ザロモンとべナット・リンデマンの三人に監視をつけた。

三人がどこかでボロを出すことを願ってね。

アルド殿下とべナット・リンデマンは、役者顔負けの演技力で、

『魅了魔法のせいでおかしくなっていたんだ、許してくれ!』

と言って婚約者に土下座していたので、残念ながらしっぽをつかめなかった。

リック・ザロモンが愚か者で助かったよ。

奴は謹慎が解けてからの二週間、ミアとその家族の所在を探り、ミアとその家族を助ける方法を探していたのだよ」


リック様がグロス子爵家を訪ねて来るまでに、謹慎が解けてから二週間もかかった理由が分かりました。


まさかミア様とミア様のご家族の所在と、彼らを助ける方法を探していたなんて。


お一人だけ謹慎が長引いているのではとか、魅了魔法が解けた影響で体の調子が悪いのではと、心配して損しました。


ミア様は、第二王子殿下とリンデマン伯爵令息とリック様の背負うはずだった罪まで押し付けられたのです。


リック様がどんなに頑張ろうと、助けられるはずがありません。


リック様はお勉強は出来ても、応用がきかないタイプだったようですね。


「だがまさかリックが、エミリーに暴言を吐いた上、エミリーに暴力を振るおうとするとは思わなかった。

捜査のためとはいえ、娘がクズに罵られているのを黙って見ているのは辛かったよ。

許しておくれ」


「大丈夫ですよ、お父様。

ちっとも怖くありませんでした。

それにリック様の本性が分かりました。

リック様との縁が切れて清々しています」


「奴への拷問……取り調べが終わったら、リックとエミリーの婚約はザロモン侯爵家の有責で破棄する。

それまで耐えてほしい」


「はい、お父様」


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