灰の日
クジラ牛乳
第1話 個人的な趣味
30代 男性
僕はロリコンです。先日彼女にその事がバレてしまい、気持ち悪いと言われ、別れを告げられました。一時は結婚まで考えていましたが、泣く泣くそれを受け入れました。彼女のことは恨んではいませんし、別れたことには納得しています。
僕の性的対象は中学生くらいの女児で、もちろん実際にその年齢の女児とは関係したことはありません。あくまでもアニメや漫画などの2次元で要求を満たしてきました。しかしこのままだと、成人の女性とのお付き合いは出来なくなってしまうと思うと不安です。将来的には結婚したいと考えています。
僕は新聞の紙面を広げたまま、炬燵の上にA4の大学ノートを広げこの相談に対する僕なりの回答を考えてみた。
回答
あなたの性癖はおそらく治らないと思います。しかし成人女性とお付き合いした経験があるのですから、結婚を諦める必要はありません。今回はガードが甘かったと思います。自分がロリコンであることは隠し通すのです。紙媒体の収集をこれからはやめましょう。収集するのはデジタル題材のみにして、インターネットに接続していないパソコンに保存して、誰にも開けられないようにセキュリティを強化しましょう。そうすれば大丈夫です。
ここで僕は書くのをやめた。次は答え合わせだ。
プロの回答(精神科医)
性癖というものは個人差が大きく、道徳で語ることはなかなか出来にくいものです。とは言え、未成年者との性交渉は法律で禁じられており、このままだとあなたは犯罪者になってしまうかもしれません。
ほとんどの女性はあなたの性癖を受け入れられないでしょう。もし結婚したとしても、何十年もの間あなたは自分の秘密を隠し通すことが出来ると思いますか?おそらくそれは無理です。
もし将来結婚したいのであれば、あなたは専門医の治療を受けながら徐々にロリコンという性癖から脱して行くのが良いと思います。薬に抵抗があるなら、カウンセリングだけでも充分効果はあると思います。付け加えますがロリコン自体は決して犯罪ではないので、あなたは罪悪感を持たなくても良いと思います。慌てずにゆっくりと治療なさってください。
やはりプロの回答は具体的だし、今後のことも考えられている。それに比べて僕の回答は、誤魔化しを指南している。これではアドバイスにはならない。
「燃える日と燃えない日と灰の日があるのよ。」
キッチンにいたミホが、確かにそう言ったように僕には聞こえた。
「えっ、何だって?」
不意をつかれて僕はそう聞き返した。
「また私の話を聞いてなかったでしょ。」
彼女は唇を尖らせて不満そうな顔でそう言うと、僕のおでこにデコピンした。
「私、用事があるから帰るね。また来るから。」
別に不機嫌そうでもなくそう言うと彼女は僕のアパートから出ていった。
燃える日と燃えない日と灰の日だって?
一体何のことだろうか?
僕がその三つから最初に思いついたのは、ボクサーだった。勝利を目指して燃える日、あまりやる気の出ない燃えない日、そして矢吹ジョーのように燃え尽きて灰になってしまった日。
そこまで考えて僕はまた人生相談の回答作成に戻った。
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