第19話 貴照、雅なお詫びで逆転を目論む
「あ、あ、あ、あのもさ小娘! 告げ口しおった!! なんと賤しい、なんと小狡い! ここまで品性のない者が昇殿を許されるなど虫唾が走るわ」
文が局の仕切り役である
謝罪は絶対にしなければならないところまで来ている。
「この私が……名門に生まれて容姿に優れ、友人も多く煌びやかな女性遍歴を持ち社交界でも花形の私が、あの、取るに足らない身分の、地味顔のオタク女に……、頭を下げる……だと?」
貴族社会は理より法より家名が優先される。
本来なら下臈の女房一人どう扱っても許される身分のはずなのに、忠子の後ろには法の遵守を尊ぶ徳子が付いていた。
「何故私が悪いのだ?! 私のお手が付くなどあのような下賤の女には泣いて喜びむしろ平伏して
部屋の中をドスドスと品のない音を立てて歩き回るが、帝の妃から謝れと命令されたも同然なのだ。謝意を示さずには済まされない。
だが文を送れば物が残ってしまう。何としても口頭で済ませたかったが、決して飛香舎に入れてもらえはしまい。
仕事で局から出てきた忠子を捕まえようにも理知か彼に近しい人物が脇を固めていて隙がない。
「どうしたものか……」
頭を抱えた貴照の目に、歌会のお知らせが飛び込んできた。
「これでおじゃ!」
右大臣が主催する管弦と歌の宴であるから、娘である
その席で気の利いた歌の一首も披露し、女御に贈って機嫌を取りついでに謝罪も添えればいい。
こんな雅なお詫びを突っぱねれば、風流に欠け情がこわく優しさや思いやりのない女だと非難に晒されるのは徳子の方だ。
権力は闇を生む。
光が強ければ影も濃いように、徳子の揚げ足を取るのを虎視眈々と狙っている者もうじゃうじゃいる中でならそこまで強硬な態度は取れまい。
特に
「そうと決まればよいお
貴照はお手入れを欠かさない硯と筆をいそいそと取り出したのであった。
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読んでくれてありがとうございました!
身分を笠に着た勘違い悪役として出したばってん、貴照可愛くなってきたばい……
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