ピケットとポポッコ
第1話 ちいさくなったピケット
「ちいさくなったピケット」
ここはちいさないきもの、クリケットたちが住む国クリケディアです。クリケットとは大きく三つの種類に分かれます。
全身真っ黒で、尖った口に大きな目をした「クリケット・カラアリ」
真っ白の毛に覆われた、口ひげをつけている「クリケット・グラーモ」
まんまるな体に大きな目を一つつけた「クリケット・エガアイ」
そしてみんな素敵な
そんな生き物が暮らしている国は、犬や猫や人間だって行けます。そしてみんなクリケットたちと同じくらい小さくなって、楽しく過ごしているのです。
ある日口の尖ったクリケット・カラアリ・ピケットが帽子をかぶろうとして、おや、と思いました。いつもかぶっているのと同じ帽子なのになんだか少し大きいような気がしたのです。
それでもピケットはかまわず、(そんな日もあるだろう)と考えて、そのまま出歩きました。
次の日もなんだか昨日より少し大きいような気がして、それでもやっぱり気にしませんでした。
けれども次の日、友人のカラアリ・ポポッコが言いました。
「君、少し見ない間に小さくなってないかい」
「そうかな? 少し帽子が大きい気がしたけれど、そんな事があるものかな」
「またなにか変なものを食べたんだろう。いつから小さくなったんだい?」
「いつからだろう? 忘れてしまったよ」
そして次の日も、その次の日もピケットはちいさくなっていきました。今ではすっかり帽子の上に座れる大きさになってしまったのです。
「ピケット、本当に何も食べてないのかい?」
ポポッコは心配して何度も尋ねます。ピケットもうんうん唸って考えましたがちっともわかりません。そこで二匹は森に住む猫のおばあさんの家を訪ねました。年老いた猫は物知りですから。
ポポッコが頭にピケットをのせていくと猫のタマおばあさんは「おやまあこんなに小さくなって」と言って迎えました。
「お前この間あげたキノコのスープを忘れてるだろう、あれを飲んだら今度は大きくなるキノコのスープを一口飲まないとどんどん小さくなるって言ったろう」
タマおばあさんはクツクツと大きくなるキノコのスープを作りはじめました。ポポッコは呆れて椅子に腰掛けます。
「さあできたよ、これを三口お飲み」
「いただきまあす」
ピケットは小さな口で一口、二口、三口飲みました。
「おいしいなあ、もっと飲んじゃ駄目なの?」
「ピケット、今度は大きくなって止まらなくなるからな」
ポポッコは残りのスープを飲んでしまいました。けれどもすぐに小さくなるスープを飲んでおいたので、ポポッコが大きくなることも小さくなることもありませんでした。
「君ってばなんでこんなスープ飲んじゃったのさ」
「お散歩してたらね、タマおばあちゃんのお孫さんが大きくなるスープを飲んでたから、小さくなる方をもらったの」
「猫ってのはすぐ大きくなるから飲んでも大丈夫なんだから、クリケット以外の生き物の食べ物なんて簡単に食べるんじゃないよ」
けれどもピケットはまたスープを飲めるのはいつになるか考えるのに夢中だったのでした。
おわり
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