第39話 ひとやすみ

「ただいま!」

 ドアのかぎを開け、荷物を置き、大翔は嬉しそうに誰もいない家に挨拶をした。

「ただいま」

 俺もそう言って、両手いっぱいに持っていた荷物を食堂の床に置いた。


「楽しかったし、塩も手に入ることになったし、行ってよかったね、健」

「そうだな」


「アイラ、ちゃんとお留守番したのよ!? お店に来たお客さんに「お休みです」って言ったんだから!」

 アイラは偉そうに胸を張って両手を腰に当てている。大翔が笑ってアイラの頭を優しくなでて、お礼を言った。


「ありがとう、アイラちゃん。はい、お土産」

 大翔はきれいな青色の貝殻をアイラに渡した。

「これだけ?」

 アイラは不服そうだ。

「あとは、買ってきたトロピカルフルーツでジュースを作ってあげるから、ちょっと待っててね」

「分かった!」

「大翔、食材はまかせていいか? 他の荷物の片づけは俺がやっておくから」

「いいの? ありがとう、健!」

 大翔はウォークの町で手に入れた食材をしまい終わると、トロピカルフルーツを取り出した。皮をむき刻んでからすりつぶし、布で絞ってジュースをボールに集め終えると、小さなコップにジュースを移し、アイラに渡した。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」

 アイラはジュースを飲むと目を輝かせた。

「美味しい!!!」

「良かった」

 アイラの笑顔を見て、大翔も微笑んだ。


 大翔は台所仕事がひと段落したところで、俺に声をかけた。

「旅行の荷物、まだ残ってる?」

「いや、もう片付け終わったぞ」

 俺は空になったカバンを物置部屋に運ぶと、大翔の方を見た。

「ありがとう」

 大翔は俺にジュースを差し出した。

 すこしぬるいけれど、大翔の絞ったジュースは甘くておいしかった。


 俺はジュースの入っていたコップを台所に置き、洗濯物の山を見てため息をついた。

「……たくさんあるな」

「そうだね。でも、今日はもう遅いし、洗濯は明日にしない?」

「そうだな」


 俺の腹がぐう、と間抜けな音を立てた。大翔が笑う。

「僕、夕食を作るよ」

「やった! 大翔のご飯、久しぶり!!!」

 アイラが大翔の周りをひらひらと飛んだ。


「でも、おかずになるものなんて在ったか? 旅行前に生ものは全部食べただろう?」

 大翔は「ふふふ」と得意げに笑うと、自分のカバンから袋を出し、中身を見せた。

「実は、魚の干物をつくってきたんだよね」

「すごいな、大翔」

 俺が驚いていると、アイラが俺と大翔の間に顔を突っ込んできた。


「私の分もあるよね!?」

「ちゃんと、三人分あるよ」

「やった!!」


 大翔は台所に戻り、夕食を作り始めた。


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