第10話

「健、そろそろ市場に行こうか」

「そうだな」

 俺は大翔と一緒に市場に移動した。

 市場は混み合っていた。


「いらっしゃい! 新鮮な野菜や果物があるよ!」

「肉はこっちだよ!」

 威勢のいい呼び込みの声を聞きながら、俺は大翔に尋ねた。

「どこから見る?」

「そうだね……野菜から見ようか」


 野菜売り場に行き、品物を見る。

 やはり、この前とおなじく少ししなびた野菜や果物が並んでいた。

「おじさん、この野菜とか果物ってどこから持ってきているの?」

 大翔は人懐こい笑顔を浮かべて、売り場のおじさんに聞いた。

「ああ、近くの森とか、隣町とかだな」


「そっか。自分たちでとりに行ける場所ですか?」

「隣町は馬車で一日かかるけど、森の入り口くらいなら……でも、モンスターもでるし、お勧めはしないね」

「……わかりました。ありがとうございます」

 大翔は一通り会話を終えると、必要最小限の買い物を済ませた。


「健、肉を買った後は武器屋に行こう。僕たちもモンスターと戦えるようにしたい」

「おう。了解」

 俺は肉を選ぶ大翔を横目に見ながら、装備するならどんな武器にするかを考えていた。


「健、買い物が終わったよ」

「そうか、じゃあ次は武器屋だな」

 俺は武器屋に向かって歩き始めた。


 武器屋に着くと、店の中に入った。

 両手剣や片手剣、杖なんかが所狭しと並べられている。

「はい、いらっしゃい。何をお探しですか?」

 奥から若い女性が出てきた。

「あの、ぼくたちまだ冒険初心者で……どの武器がいいかとかよくわからなくて」

 大翔がそう言うと、武器屋の店主は目をつむって考えてから、俺たちに言った。


「じゃあ、奥においで。君たちの適正武器を見てあげる」

「え?」

 俺たちは笑顔の店主について奥の部屋に入った。

 奥の部屋には水晶玉が置いてあった。


「君たちの素質を見てあげる。水晶に手をかざしてみてくれるかい?」

「健……」

 大翔は不安そうに俺を見ている。

「じゃ、俺から」

 俺は水晶に手をかざした。


「君は……剣士の素質があるみたいだ。片手剣か両手剣がお勧めだね」

 店主の言葉に俺はうなずいた。

「じゃあ、次は僕……」

 大翔が水晶に手をかざすと、薄い水色の光が放たれた。

「うーん、君のほうは回復魔法とか水魔法に適性がありそうだ。使うなら杖がいいんじゃないかな」


 俺たちは店主の勧めに従って、ほどほどの片手剣と、杖を買うことにした。

「また、強い武器が欲しくなったら来てね」

 女店主は愛想よく、俺たちに武器を持たせてくれた。

「健、武器も手に入れたし、荷物を置いたら森の入り口に行ってみない?」

 大翔が買った本を見ながら、言った。

「食べられるものを探しに行きたいんだ」

「わかった。でも、そのまえに食事にしないか?」

「そうだね」


 俺たちは、一度家に帰ることにした。

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