第75話 日独伊連合艦隊

 「どうやら『奮龍四型』のおかげで、こちらの詳細な戦力構成は把握されずに済みそうですな」


 少しばかり安堵の色が混じった大林参謀長の言葉に、第一機動艦隊司令長官の小沢中将が小さくうなずく。

 オアフ島北西沖に設定された作戦発起点に到達するまでに、日独伊連合艦隊は再三にわたってB24リベレーターの接触を受けた。

 これに対し、日独伊連合艦隊は「奮龍四型」を用いてB24を狙い撃った。


 その「奮龍四型」は優秀なロケット技術それに姿勢制御技術を持つドイツの援助を受けて完成した地(艦)対空誘導噴進弾で、八〇パーセント過酸化水素と同じく八〇パーセント水化ヒドラジンそれにメタノールを推進剤に用いる特呂二号原動機を備えている。

 その特呂二号原動機の高性能もあって、「奮龍四型」は一一〇〇キロの最高速度それに一五〇〇〇メートルにも及ぶ到達高度を誇るが、しかし一方で全長は四メートルに達し、そのうえ重量が一九〇〇キロもあるからこれを運用できるのは戦艦や巡洋艦といった一部の大型艦に限られていた。


 高空から忍び寄るB24に対し、日独伊の戦艦や巡洋艦はそれこそ出し惜しみ無用とばかりに「奮龍四型」を次々に発射していった。

 整備に心血を注いだ技術者の献身、それに十分な訓練を受けた将兵の正確な無線操縦によって「奮龍四型」がB24を次々に屠っていく。

 意表を突く新兵器を前に、逃げおおせたB24は一機も無かった。


 予定通りの時間に作戦発起点に到達した日独伊連合艦隊は所定の手順に従って行動を開始、ここにオアフ島を巡る二度目の戦いの火ぶたが切られた。



 日独伊連合艦隊

 第一機動艦隊

 第一艦隊

 「翔鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「瑞鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「蒼龍」(烈風六〇)

 「飛龍」(烈風六〇)

 「瑞鳳」(烈風二四、一式艦攻三)

 重巡「白神」

 軽巡「高瀬」

 駆逐艦「秋月」「照月」「涼月」「初月」「新月」「若月」「朝潮」「満潮」


 第二艦隊

 「神鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「天鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「雲龍」(烈風六〇)

 「葛城」(烈風六〇)

 「祥鳳」(烈風二四、一式艦攻三)

 重巡「白砂」

 軽巡「鳴瀬」

 駆逐艦「霜月」「冬月」「春月」「宵月」「夏月」「花月」「荒潮」「霞」


 第三艦隊

 「雲鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「大鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「天城」(烈風六〇)

 「笠置」(烈風六〇)

 「千歳」(烈風二四、一式艦攻三)

 重巡「白根」

 軽巡「綾瀬」

 駆逐艦「満月」「清月」「大月」「葉月」「山月」「浦月」「海風」「江風」


 第四艦隊

 「龍鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「鳳鶴」(烈風七二、彩雲六)

 「阿蘇」(烈風六〇)

 「生駒」(烈風六〇)

 「千代田」(烈風二四、一式艦攻三)

 重巡「白馬」

 軽巡「嘉瀬」

 駆逐艦「青雲」「紅雲」「春雲」「天雲」「八重雲」「冬雲」「涼風」「五月雨」


 第五艦隊

 「赤城」(烈風六〇、彩雲九)

 「伊勢」(烈風三六、彩雲六)

 「日向」(烈風三六、彩雲六)

 「隼鷹」(烈風四八、彩雲三)

 「龍鳳」(烈風二四、一式艦攻三)

 「瑞穂」(烈風二四、一式艦攻三)

 戦艦「長門」

 重巡「青葉」

 駆逐艦「沖津風」「霜風」「朝東風」「大風」「東風」「西風」「白露」「時雨」


 第六艦隊

 「加賀」(烈風七二、彩雲六)

 「山城」(烈風三六、彩雲六)

 「扶桑」(烈風三六、彩雲六)

 「飛鷹」(烈風四八、彩雲三)

 「龍驤」(烈風二四、一式艦攻九)

 戦艦「陸奥」

 重巡「衣笠」

 駆逐艦「南風」「北風」「早風」「夏風」「冬風」「雪雲」「村雨」「春雨」


 ドイツ機動部隊

 「アドミラル・グラーフ・ツェッペリン」(烈風三六、彩雲六)

 「フューリアス」(烈風二四、一式艦攻六)

 「イラストリアス」(烈風四八、彩雲三)

 「インディファティガブル」(烈風七二)

 軽巡二、駆逐艦八


 イタリア機動部隊

 「アキラ」(烈風三六、彩雲九、一式艦攻六)

 「イーグル」(烈風二四)

 「ビクトリアス」(烈風四八、彩雲三)

 「インプラカブル」(烈風七二)

 軽巡二、駆逐艦八


 第一遊撃部隊

 戦艦「ローマ」「ヴィットリオ・ヴェネト」「リットリオ」

 戦艦「ティルピッツ」

 戦艦「大和」「武蔵」

 重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」「利根」「筑摩」

 駆逐艦「雪風」「天津風」「初風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」


 第二遊撃部隊

 巡洋戦艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」

 重巡「プリンツ・オイゲン」「アドミラル・ヒッパー」

 軽巡「ライプチヒ」「ニュルンベルク」

 駆逐艦四


 第三遊撃部隊

 戦艦「比叡」「霧島」

 重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「鳥海」

 駆逐艦「黒潮」「親潮」「陽炎」「不知火」


 第四遊撃部隊

 戦艦「金剛」「榛名」

 重巡「妙高」「羽黒」「那智」「足柄」

 駆逐艦「朝雲」「山雲」「峯雲」「霰」



 日独伊連合艦隊は八個機動部隊それに四個水上打撃部隊から成る。

 基幹戦力の空母は日独伊合わせて三九隻にものぼり、艦上機は常用機だけで二〇〇〇機を大きく上回る。

 それら艦上機は対潜哨戒にあたる一式艦攻を除き、すべて烈風や彩雲といった最新鋭機で固められている。


 また、水上打撃艦艇も充実している。

 戦艦だけでも一二隻を数え、他に巡洋戦艦の「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」も参陣している。

 これは戦艦と大型巡洋艦をそれぞれ二隻しか保有していない太平洋艦隊に対して、まさに圧倒的ともいえるアドバンテージだった。

 それと、水上打撃部隊に所属している巡洋艦の多くが敵の夜間攻撃機に対する備えとして夜戦仕様の瑞雲を搭載している。


 先陣を切るのは水上打撃部隊だ。

 第一遊撃部隊が米水上打撃部隊を抑えている間に第二遊撃部隊と第三遊撃部隊それに第四遊撃部隊がオアフ島の飛行場に対して艦砲射撃を実施する。


 これらのうちで、予定より大幅に編成が変わった部隊があった。

 日独伊の戦艦が揃い踏みする第一遊撃部隊だ。

 第一遊撃部隊は当初、ドイツとイタリアの戦艦、それに日本の巡洋艦と駆逐艦で編成されるはずだった。

 しかし、ドイツの「シャルンホルスト」それに「グナイゼナウ」は主砲口径が二八センチと小さく、そのうえ戦艦と撃ち合うには防御力も心もとない。

 そこで「シャルンホルスト」それに「グナイゼナウ」は飛行場攻撃に回し、その穴埋めを「大和」ならびに「武蔵」が務めてほしいとドイツが申し入れてきたのだ。

 帝国海軍でも「シャルンホルスト」それに「グナイゼナウ」の二隻については、やはり戦艦とやり合うには力不足だと考えており、ドイツの要請を受諾した。


 その第一遊撃部隊を率いるのはイタリアのカルロ・ベルガミーニ提督で、旗艦を「ローマ」に定めている。

 ベルガミーニ提督は日没とともに進撃を開始、第二遊撃部隊と第三遊撃部隊それに第四遊撃部隊の先頭に立って南東方向に向けて驀進する。

 その先には間違いなく、オアフ島を守る太平洋艦隊の水上打撃部隊が待ち構えているはずだった。

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