第11惑星(3)悪魔VS火炎
「……ここが、『ギャラクシーフェアリーズ』、いや、『ギャラクシーマーダーズ』が指定してきたポイントだな」
アズールが端末を確認する。ヴェルデが尋ねる。
「トラップを仕掛けられている可能性は?」
「大いにあるだろうな、私が逆の立場だったらそうする」
「はっ、多少のトラップくらい、どうってこたあねえよ」
「いや、多少でもあったら困るんだけどね……」
ロハの強気な言葉にマリージャが苦笑する。
「ここは……?」
ヴェルデが周囲を見渡しながら、再度尋ねる。アズールが淡々と答える。
「大規模な研究施設とそれに付随する都市エリア……の成れの果てだな。宇宙への進出について主に研究されていたらしい……現在はすっかり荒廃している。過去の遺物だな」
「へっ、あいつらを過去のものにしてやるにはおあつらえ向きの舞台じゃねえか」
「おっ、上手いこと言ってやったみたいなドヤ顔だね」
「うるせえよ、茶化すな」
マリージャに対してロハが文句を言う。
「ごめんごめん、それでどうするんだっけ、アズール?」
「基本方針に変更はない、4対4で戦う。もちろん、向こうの出方次第ではあるが……」
「で、肝心の向こうはどうしたんだよ?」
「今のところ反応が無いな」
ロハの問いにアズールが肩をすくめる。ロハが笑う。
「さてはビビって逃げたか?」
「それは拍子抜け……!」
「どったの? ヴェルデ?」
「いた!」
そこには大きくなったテュロンに跨ったタスマの姿があった。
「……」
「待て! 今度こそ仕留める!」
その場から逃げたタスマをヴェルデが追いかける。マリージャが声を上げる。
「待って、ヴェルデ! ん⁉」
他の三方向にもテュロンに跨ったタスマが現れる。アズールが顎に手を当てる。
「アユミ=センリの分身能力、露骨に誘っているな……」
「面白え、その誘いに乗ってやろうじゃねえか!」
「……臨機応変に対応するしかあるまい」
「ああ! ロハ! アズールまで! ……しゃあない、アタシはこっちに行こうか!」
クワトロ=ゲレーラが四方向に別れる。
「おい待てよ!」
「……」
「ええい、いい加減面倒くせえ!」
「!」
ロハの手から放たれた炎が逃げるタスマとテュロンを燃やす。タスマたちは消える。
「手ごたえがねえ……あくまで陽動か。ここは……?」
ロハが周囲を見回す。岩が多く転がっている。
「かつては採掘場だったみたいよ」
「その後は研究の成果を試す実験エリアだったぽいね~」
「お前らは……『ジェメッレ=アンジェラ』、いや、『ジェメッレ=ディアボロ』か!」
ロハの見上げた先にネラとビアンカの姿があった。ネラが意外そうな表情を浮かべる。
「へえ……ウチらのこと、知っているんだ?」
「一応な……ただ、お前らはお呼びじゃねえぞ、これはオレらとギャラクシーマーダーズの喧嘩なんだからな」
「そんなつれないことを言わないで、ウチらと遊ぼうよ、『火炎のロハ』……」
「ふん…」
ロハが背を向けて歩き去ろうとする。
「アタシらをシカトするとか、いい度胸してんじゃん!」
「おっと!」
ロハの前方に回り込んだビアンカがハサミを振るうがロハがかわす。
「ただでさえ頭に来てんのにさ!」
「……お前らをシカトしたわけじゃねえ……勝手にアイツらに負けたんだろうが」
「だからあの子らに借りを返すのはアタシらが先だっつうの! 横入りすんなし!」
「あ~もう! うるせえな!」
「む!」
ロハの手から放たれた炎がビアンカを襲う。ビアンカはこれをなんとかかわす。
「そんなハサミで何が出来るよ!」
「くっ!」
ロハが炎を矢継ぎ早に放つ。ビアンカは回避で精一杯である。
「相性が悪い系ね……よっと!」
「ああん⁉」
ロハの炎を飛び込んできたネラがフライパンで防ぐ。ネラが笑みを浮かべる。
「耐熱性はあるわね……」
「おいおい、2対1かよ! 卑怯じゃねえか⁉」
「ウチら、『双子の悪魔』だから、卑怯上等なんだよね」
「どういう理屈だよ!」
「アンタを片付けた後、残りの3人も倒すから、それで勘弁してくれる?」
「片付けるだ~? やれるもんならやってみろよ!」
ロハが一瞬でネラの懐に入る。
「はっ!」
「おらあっ!」
「ふっ!」
「そらあっ!」
「ほっ!」
ロハの繰り出す拳の連撃をネラはフライパンで器用に受け止める。ロハが舌打ちする。
「ちいっ!」
「炎の熱も吸収して、拳も見えている! アンタに勝ち目は薄いよ!」
「抜かせ! そういうてめえも防戦一方じゃねえか!」
「あ、バレた?」
フライパンを構えながら、ネラが舌を出して笑う。
「オレの拳速はまだ上がるぜ!」
「⁉」
「おらおらっ!」
ロハが攻撃に裏拳も交え始め、ネラは反応しきれなくなる。
「くっ⁉」
ネラがフライパンを落とす。ロハが声を上げる。
「終わりだ!」
「うおっと!」
「なに⁉」
ロハの渾身の一振りをネラは上半身をギリギリまで後ろにそらしてかわす。
「か、かわした!」
「その体勢で何が出来る!」
「こういうことが出来る!」
「ああん⁉」
ネラが体を伸ばし、ビアンカの脚を掴む。ネラが声を上げる。
「ビアンカ、お願い!」
「気が乗らないけど……しゃあないね!」
ビアンカの上半身が丸い形になる。ロハが驚く。
「はっ⁉」
「これはかわせないでしょう⁉」
大きなフライパンになったビアンカをネラがロハに向かって叩きつける。
「がはっ……!」
予期せぬ一撃を喰らったロハは地面に軽くめり込む。体勢を戻したネラが息をつく。
「ふう~焦った~」
「人をフライパン代わりにしないでよ……」
元に戻ったビアンカがネラに不満をもらす。ネラが笑う。
「まあまあ、結果オーライってことで……」
「はあ……まあいいや、次はどいつを片付ける?」
「えっと、予定通りなら一番近いポイントは……」
「……待てや!」
その場を去ろうとしたネラたちを立ち上がったロハが呼び止める。ビアンカが驚く。
「マジ? タフだね~」
「このままじゃ終わらねえぞ……『ドロー』!」
「‼」
ロハが2人に分身してネラたちに襲いかかる。
「うおりゃあ!」
「甘いし!」
「ケイから聞いているよ、それがアンタの奥の手っしょ⁉」
ロハの攻撃をネラとビアンカがかわす。ロハが笑みを浮かべる。
「……なら、これはどうよ?」
「ぐうっ⁉」
「うおっ⁉」
ロハが鋭い蹴りを繰り出す。脚からも火が放たれ、ネラたちはまともに喰らってしまい、仰向けに倒れ込む。ロハが笑う。
「ははっ! パンチオンリーだと思ったのが、運の尽きだぜ!」
「ぐっ……」
「むう……」
「形勢逆転! フィニッシュといこうか!」
2人のロハが脚を振り上げ、かかと落としを叩きこもうとする。
「……ビアンカ知ってる? こういう採掘場がテレビ番組のロケでよく使われたって話」
「……ああ、アレの許可が下りやすいんでしょ?」
「ああん⁉」
ロハが脚を振り下ろした瞬間、そこで爆発が起こり、全員が吹き飛ばされる。
「へへっ、大成功……」
「い、いや、ちょっと爆薬の分量ミスったかな?」
倒れ込みながらピースサインをするビアンカに対し、ネラが苦笑を浮かべる。
「じ、自分らも含めて周囲一帯を爆発させるだと……? くそ、『悪魔』め……」
分身が解けたロハががっくりとうなだれる。
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