セレクター(選出者)

かがり

プロローグ

第1話 プロローグ1

 その島国には縦に川幅300mはあるであろう河川が流れており、一年を通じて朝は濃い霧に包まれる、しかし郊外を抜けてさらに町から離れると大きな山々とそこに分布する動植物似よって美しい大自然が広がっていた。


 とある日の早朝もいつものように町は濃い霧に包めれていた。

 町で一番大きな道であるはずなのに、コートを着て早足で移動している男意外誰も歩いていない、男は11月であったため息を吐けば息が白くなると思いゆっくり息を吐いたが想像していたものと違い男はまた早足で移動を始めた、実際には温暖な時期が過ぎ季節の変わり目であるため環境になれていないだけであるなどと頭の中で思考を巡らせながら足を運んだ。


 少し進んだ場所は町の街灯は未だ灯っており、男は近くにあった街灯の下でタバコを咥えマッチで火をつけた。


「まだ、こんな時間か…」


 男はポケットから懐中時計を取り出し時間を確認した。


 立ち止まり、辺りを観察していると歩いていた時気付かなかったことが多いことに気付いた。

 それは屋根に留まっているカラスの群れ、見るからに飼い猫でない子ずれの黒猫、建物と建物の間の細い路地にはそこで生活していたことを感じさせる物品と中身の入っていないであろう財布などがあった。


 「多分観光客がスリにでもあったのだろう」


 男はそんなことを考え昼間の町の活気を想像した。タバコを消しその場を去ろうとしたとき先ほどまで気付かなかった背後の存在に気づき身構えた。

 そこには三人の腕に赤色の腕章をした男女が立っていた。『一人は大柄な男、もう一人は女、最後の一人は体格的に男だろうが…』

 最後の一人は覆面をしているので分からなかったが、他の二人に関しては情報として以前見たことがあった。


 「こんばんは…いや、おはようなのかな、外交官がこんな時間に一人でどちらにいかれるのかな」

 

 そう発言した男は三人の中心的人物であることは明らかだった。

 外交官はその男に向き合うように体を向けた。


 「私のことを知りながら、名乗りもしないで人の背後から近づくとは、あなた方はいったい私に何のようで?」


 「私たちはぁ〜あなたの持っているそのケースに用があるんですよぉ〜」


 女の公安は外交官の左手に持っているものに意識を送りながら言った。

 外交官はケースを体で隠すように背後で隠すようにして持った。『変な小細工をしてケースを奪いにきてない以上簡単に目的地にいかせてくれなさそうだ…』


 外交官が手にしているケースは革製の黒色の物で中身に関しては外見からは判別できないが、所有者の佇まいと相まって、機密情報、大量の現金など、関係ない人が見ると多くの憶測が飛び交うであろう雰囲気があった。


『これを時計塔で落ち合うはずの味方に預けるまでは死んでも奪われてはならない!!!!』外交官の気持ちとは裏腹に覆面の男が後ろからケースを奪おうと回り込んでいた。

 そのことに気付くのが送れた外交官は奪われはしなかったものの、体勢を大きく崩してしまう。


 それを見た他の二人もケースを強引に奪いに動き始めた。

 数では不利に思われた外交官であったが、見たこともない身のこなしで三人から距離をとり、時計塔に向けて走り始めた。


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