21★ギルドを追放されたイーヴォたち

聞け、火の精センティ・サラマンドラ! 紅蓮の飛弾ひだんとなりてすさまじきさにてぜ給え―― 炎夥弾ミッレフレイム!」


 ミニスライムにさんざん苦しめられ泥まみれになったイーヴォは、『青の沼地』へ火属性の攻撃魔法を放った! 


 無数の炎弾が沼地のいたるところに着弾し燃え上がる。貴重な薬草採取場だった沼は、そこに生息するミニスライムごと灰燼かいじんした。


「な、なんてことを――」


 サムエレは頭をかかえた。


「俺様の実力を見たか! ハッハア!!」


 馬鹿なイーヴォが高らかに笑い声をあげる。


「どんなときも負けを認めないイーヴォさん、最高ですっ!!」


 ニコの賞賛が焦げくさい空気にむなしく響きわたった。




 『青の沼地』を焼き尽くし貴重な生態系を破壊した責任を問われ、グレイトドラゴンズの三人はヴァーリエ冒険者ギルドを除名されることとなった。


「こんな優秀なパーティを追い出すなんて、お前らあとで後悔しても知らねえぞ!」


 イーヴォはFマークが刻印されたメダルを受付台にたたきつけた。


「Fランクパーティが一つ減ったところで問題は――」


 うっかり本音をもらした受付嬢は、イーヴォの赤い瞳に燃える怒りに気付いて慌てて口を閉ざした。


 ギルドから出ると、サムエレはすがすがしい声で言った。


「モンテドラゴーネに帰りますか。今夜は宿に泊まって、明日の朝出発ですね」


 ギルドを追放されて行き場がなくなったのだから、さすがにイーヴォも帰郷に同意してくれるだろうとサムエレは信じていた。


「バカか、サムエレ。真の実力者はギルドに頼らず仕事を見つけるんだ」


「なっ」


 暮れなずむ空の下、思いっきり伸びをしかけたサムエレの手が途中で止まった。


「し、しかしイーヴォくん! ギルドを通さずに魔術師をみつけようとする依頼主なんて、うしろ暗いところがあるに決まってる。危険です」


 性懲りもなく前向きなイーヴォに、サムエレは慌てて水を差す。


「ここヴァーリエではな。だが冒険者ギルドのない街ではどうだ?」


「そんな小さな街に行っても仕事なんてないでしょう」


 サムエレの言葉に、イーヴォはにやりと笑った。


多種族連合ヴァリアンティの隣国、聖ラピースラ王国は宗教的な理由で攻撃魔法や冒険者ギルドを禁止していると聞く。隣国でなら、ギルドを通さずに依頼を受けるのも普通なんじゃねえか?」


「うっ……」


 どんな異議を唱えようかと言葉に詰まったサムエレに変わって、またもやニコが追従した。


「新天地ですね、イーヴォさん! つわものぞろいのヴァーリエ冒険者ギルドから来たSランクパーティと言えば、ほいほい依頼が来ますよ!」


「だろぉぉぉ!?」


 Fランクだったことなど忘れたのか、イーヴォがまた調子に乗る。


「しかし聖都ラピースラまで五日か六日かかりますよ!」


 サムエレは苦しい反論を試みるが、


「ヴァーリエから近い東側の都市があっただろ。なんつったか――アルバ公爵領か! あそこなら四日もありゃ着くぜ」


 乗り気のイーヴォを止める力はない。


(さらにモンテドラゴーネ村から遠のいていく……)


 遠い目をするサムエレを、ヴァーリエ大聖堂のクーポラにかかる夕日が赤く染めていた。




 翌日、イーヴォたち一行は聖ラピースラ王国アルバ公爵領に向かって旅立った。ちょうどその日の午後、ジュキエーレはアルバ公爵邸に到着したのだが。


 なんの腐れ縁か運命のいたずらか、彼らは互いに望んでもいないのにまた相まみえることとなるのだった。




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「追放サイドが追放されるとか」

「こいつらもジュキのいる隣国へやってくるとは」

「ついに直接対決か!?」


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