第8話 スーツの男
次の日、大学の講義が終わった後、俺は教室を出た。
(さて、帰るとするかな……)と思いながら歩いていると、後ろの方で声が聞こえてきた。
「ねぇ、待ってよ」
俺が振り返ると、そこにいたのは美和だった。
「何でここにいるんだ?」
「一緒に帰ろうと思ったからよ」
「そっか……、わかった」と言うと、美和は嬉しそうな表情を浮かべていた。
「じゃあ、行こうか」と俺は言って歩き出す。
すると、「ちょっと待って」と言われて腕を引っ張られた。
「どうした?」と聞くと、美和が顔を近づけてきて小声で囁いてくる。
「昨日の事は誰にも言っていないから安心してね」
「ありがとうな」と俺は言って、再び歩き始めた。
しばらく歩くと、俺は美和に話しかける。
「なぁ、美和は俺に聞きたいこととかないのか? 何でも聞いてくれて良いぞ」
「じゃあ、遠慮なく聞かせてもらうわ」
「ああ、何が知りたいんだ?」
「あなたとユナちゃんの関係を教えてほしいの」
「関係……か……」と俺は少し考えて答える。
「簡単に言えば、俺はユナの父親から力を与えられた人間で、彼女はその娘だ。とある事情でユナは義理の娘になっている」と俺は説明を始めた。
「へぇ~、そうなんだ」
「他にはないか?」
「えっとね……」と言いかけた時、突然爆発音が響いてきた。
「なんだ!?」と俺は驚きつつ周囲を確認する。
すると、遠くの方に煙が立ち上っているのが見えた。
「行ってみよう!」
「うん!」
俺達は急いで現場に向かった。
俺達が到着した頃には周りには野次馬が集まっていた。
そして、俺達が見た光景は悲惨なものだった。
目の前にあった建物は完全に崩壊しており、瓦礫が散らばっていた。
そして、辺り一面に血が広がっていた。
「酷い……」
俺も「これは酷すぎる……」と呟いた。
すると、俺達が来た方向とは逆の方向から男が歩いてきた。
「おい! お前! そこで何をしていた!」と俺は男に向かって叫んだ。
「……」と男は黙ったまま近づいてくる。
「なんとか言ったらどうだ!」と俺はもう一度叫ぶ。
しかし、男は無視して通り過ぎようとする。
「止まれ!」と俺は男の腕を掴んだ。
だが、男は振り払おうとする。
「離せ……」と男が言った瞬間、男の身体が急に膨張し始めた。
「うおっ!!」と俺は驚いて手を放す。
同時に、男の着ている服が破け散り筋肉質な肉体が露になる。
「こいつ……。まさか……」
「グオオオォッ!!!」と叫びながら、巨大化した男がこちらを向く。
「やっぱりな……」
「なっ……、なっ……。何なのよこれ……」と美和は腰を抜かしていた。
「下がってろ……。こいつは俺がやる……」
「え……。でも……」と美和が戸惑っている。
「いいから……」と言って俺は前に出ていく。
その時、倒壊した建物の中から別の巨大化した男も出て来た。
「チッ……。仲間がいたのか……」
「グアアァーッ!!!」と2体の怪物が吠えた。
すると、片方の男は美和の方へ向かっていった。
「しまった……」と俺は焦るが、すぐにもう片方の男を追いかけた。
「早く逃げろ!! ここは危険だ!!」と俺は大声で呼びかける。
美和は必死に立ち上がって逃げ出した。
「くそ……。間に合ってくれ……」と俺は心の中で祈った。
俺は急いで追いかける。
そこに一人のスーツ姿の男が立ち塞がった。俺は男の顔を見て以前、俺とユナを襲った奴だと思いだした。
「久しぶりです……。また会えて嬉しいですよ」と男は笑みを浮かべながら言ってきた。
「邪魔だ……どけ!」と言って俺は殴りかかる。
だが、あっさり避けられてしまう。
「おっと……危ないですね……いきなり殴ってくるなんて酷いじゃないですか……」と言って男は笑いながら避け続ける。
「うるさい……、お前は誰なんだ?」
「私は、あなたの娘の一族の敵ですよ」
「なるほどな……。そういうことか……」
「だから、その女には人質になってもらいますね」
「そうはさせない……」と俺は言い、再び走り出す。
「はぁ……。仕方ありませんね……」と言って、男は一瞬のうちに美和の元に現れ背後を捕らえた。
「キャアッ!?」
「やめろ……、美和に手を出すんじゃねぇ……!」
「さて……、大人しく捕まってもらいますか……」と男はニヤリと笑う。
「いや……いや……。助けて……」
「くそ……!」と俺は拳を握る。
(一体どうすれば……?)と俺は考える。
その時、後ろから声が聞こえてきた。
「その人を離して!」
振り返るとユナが立っていた。
「ユナ!?」と俺は驚く。
「おぉ、やっと来ましたね……」
「何が目的?」とユナは尋ねる。
「あなたを捕まえることですかね……」
「なら、私が相手になるわ!」
「ほう……、良いでしょう……私も以前のままではないですよ」
「ユナ! 止めろ! 危険すぎる!!」
「大丈夫だよ……パパ!私を信じて!」
「わかった……。気を付けろよ……」
「うん、任せて!」と言って彼女は構える。
「では、あなたは私が指定した場所までついて来て下さい」と言って男は飛び立った。
「待って!どこに連れて行くつもり?!」
「それは、着いてからのお楽しみということで……」
「じゃあ、パパはその2匹の怪物化した人間をどうにかして!」とユナは言って、男に付いて飛んでいった。
「ああ……」と俺は返事をして、目の前にいる怪物に目を向けた。
「俺がお前達の相手をしてやるぜ!」と俺は吠えた。
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