蜂蜜酒を作ろう!
近衛騎士妖精の白雪ちゃんを胸に入れ、潮ちゃんに守られたイメルダちゃんが見送りに出てくれたので、手を振り、結界を出る。
駆けていると、いつも通りに白狼君達が合流してきた。
『今日は荷物が多いから、狩りは出来ないよ』
とがうがう言うも、”主様の望むままに!”と言うように「がうがう!」吠えた。
いや、それでも君ら、獲物が無いと不満そうにするでしょう?
まあ、良いけど。
白狼君達と共に川を渡り森を抜け、草原を駆ける。
ん?
あれなんだろう?
三百メートル先にいるものが目に付き、注視する。
一瞬、くすんだ赤色の服を着たマッチョな男の人が立っているのかと思った。
ただ、すぐに違う事が分かった。
身長は二メートルから三メートルの間ぐらいかな?
二足歩行の、赤い毛むくじゃらなそれは、太い木の棒を掴みながら歩いている。
毛の色はともかく、前世の雪男の描写に近い気がする。
猿系の魔物? なのかな?
なんて考えていると、こちらに気づいたらしい赤毛猿さんが、前世ゴリラみたいに手を使いつつ駆けてきた。
走る速度はそこそこ――サーベルタイガー君ぐらいはあるかな?
「うっほ~!」とか訳の分からない事を叫びながら走ってくる。
う~ん、猿系はなんとなくだけど、食べるのに抵抗あるんだけどなぁ。
町には……。
あ、今日は中に入らないんだった。
だったら、白狼君達に上げるかな。
なんて思っていると、百メートルぐらいまで接近した赤猿君に、鮮烈な赤が襲いかかる。
赤ライオン君だった。
喉に食らいつき、鮮血で顔を染めている。
赤猿君の太い腕が、手に持っている棍棒が――赤ライオン君の顔をガンガン殴るも、何の痛痒も感じていないようだ。
またこの子かぁ~
ひょっとしたら、ここら辺を縄張りにしようとしているのかな?
赤ライオン君は赤猿君を咥えたまま、首を振る。
地面に体を叩き付けられた赤猿君から、ゴキッという音が聞こえてきた。
その間、赤ライオン君の視線はこちらを見たままだ。
う~ん……。
まあ、保留と言う事で。
林に到着したので、白狼君は帰ろうとする。
ん、一応、釘を刺しておこうかな?
『ここに、
がうがう言うと、白狼君達は”ん?”っといった顔で立ち止まる。
そして、顔を見合わすと――こちら側に姿勢を戻し、その場に座る。
……いや、振りじゃないからね?
『ほら、帰りなさい』
と言うも、じっとこちらを見てくる。
えぇ~
『さっき、弱イノシシ君を上げたでしょう?
帰った、帰った!』
と手でシッシ! とやっても、動かない。
なにやら、期待した顔でこちらを見てくる。
えぇ~
「はぁ~」とため息を付きつつ『今度、大物を倒したら上げるから』と言うと、白狼君達は嬉しそうに「がう!」と吠えると、去って行く。
あの、
結界を抜けて、我が
本当に、あの
あれから、
そして、”何を狩って下さるんですか? ご主人様!”とでも言うように、キラキラした目で「がうがうがう!」と言われてしまった。
だから、近くにいた弱水牛君やコモドドラゴン君とかを指さし『これで良い?』と言ったんだけど……。
でも、なかなか納得しないのよ、彼らは。
最終的には、巨大なリクガメみたいなので納得して貰ったんだけど……。
もう、
ぷりぷり怒りながら、車庫に荷車を入れていると、物作り妖精のおじいちゃんが駆け寄ってきた。
そして、”帰ってくるのが遅い!”というように身振り手振りで怒ってきた。
えぇ~
「何かあったの?」
と訊ねると、”葡萄酒を作るんだろう? 早く!”とかやっている。
「いや、おじいちゃん。
葡萄酒は作るけど、おじいちゃんにあげる分はないよ?」
あくまでも、減らしてしまったエルフのテュテュお姉さんのワインを補充するだけだ。
だけど、物作り妖精のおじいちゃんは身振り手振りで”味見は必要だろう!”とか主張する。
えぇ~
まあ、そうかもしれないけどさぁ~
その辺りは、シルク婦人さんに許可を取ってよ。
え?
そこは任せた?
だから、わたしじゃ説得できないって!
そういえば、葡萄酒はともかく、蜂蜜酒はどうしようかな?
作り方はWeb小説通りにすれば何とかなるかもだけど、味見はわたしでは出来ない。
かといって、我が
後々、もっと作れとうるさそうだからしたくない。
シルク婦人さんなら味見ぐらい出来るかな?
後で聞いてみよう。
そんな事を考えつつ、物作り妖精のおじいちゃんに
葡萄酒作りは、一度経験をしているのと、暖かくなったので植物育成魔法が楽だった事もあり、すんなりと終わった。
それでも、前回同様、馬鹿でかいタライで作らされたので、少々疲れた。
正直、こんなに沢山作る必要はないよね、って言ったんだけど……。
酒飲み共に”一気に作った方が楽だから!”という謎理論で押し切られてしまった。
冷静に考えれば、少しの方が楽だよね。
飲むのを控えれば良い訳だし。
少し、休憩した後、蜂蜜酒を作る事にする。
酒飲み達が、葡萄酒の樽の前でワイワイやっているのを確認した後、台所に移動する。
中では、シルク婦人さんが夕食の用意をしている所だった。
今日は雷魚君のキッシュかな?
それはさておき……。
「ねえねえ、シルク婦人さん。
シルク婦人さんはお酒の試飲、出来る?」
シルク婦人さんは無表情のままこちらを向き、こくりと頷く。
「実はママに蜂蜜酒を送ろうと思うんだけど、皆には内緒にしたいの」
シルク婦人さんの表情が、少しだけど渋くなる。
だけど、こくりと頷いてくれた。
よし!
蜂蜜酒を作るのは簡単だ――とわたしが読んだWeb小説には書かれていた。
確か、殺菌をしていない蜂蜜であれば、瓶の中に蜂蜜と水を入れて放置すれば出来ると書かれていた。
わたしの場合、葡萄酒の時と同じように、白いモクモクを使用して作れば放置する時間も短縮できると思う。
問題は、味が美味しく出来るか、である。
手始めにって事で、前世、缶ジュースサイズの壺を、念のために加熱消毒をする。
次に、左手から出した白いモクモクをこれと同じぐらいの壺型にする。
そこの中に、蜂蜜と水を入れる。
割合はやや水を多めぐらいかな?
確か、Web小説には蜂蜜を先に入れて、少しずつ水を足しつつかき混ぜると書いてあった気がする。
右手から出した白いモクモクを棒状にしてかき混ぜる。
これぐらいで良いかな?
そして、魔力を込めて発酵させる。
お、シュワシュワと聞こえてきているので、上手くいっているのかな?
音が聞こえなくなった後も、しばらく魔力を流し続ける。
そろそろかな?
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