白身魚美味しい!
わたしが感動していると、シルク婦人さんは物作り妖精のおじいちゃんに作って貰ったフライ返しを手に取る。
そして、それを雷魚君の切り身の下に差し込み持ち上げると、皿の上に丁寧に乗せる。
バターの焼けた香りと焼き魚の香ばしい匂いでもう、見てるだけで涎が出そうになった。
前世で言う、ムニエルっていう料理かな?
食べた事無いけど、Web小説でたしかバターで白身魚を焼く料理がそんな名前で紹介されてたと思う。
シルク婦人さんは白身を皿に移すと、ナイフとフォークで半分に切る。
そして、フォークと共に渡してくるので、それを受け取り、白身の片側をパクリとする。
「うんまぁ~い!」
思わず声に出しちゃった。
ちょっと淡泊な魚にバターが絡まって、むちゃくちゃ美味しい!
わたしが感動していると、シルク婦人さんが「レモン」とぼそりと言った。
「ああ、レモン!
レモンを付けたらさらに美味しそうだよね!」
シルク婦人さんはコクコクと頷いた。
レモンの種は蟻さんが持ってきてくれるだろうから、凄く楽しみだ!
わたしからフォークを受け取ると、今度はシルク婦人さんが毒味というなの味見をする。
満足できる味なのか、コクコクと頷いた。
「これ、定期的に取りに行った方が良いかな?」
と訊ねると、「献立、助かる」と婦人さんは答える。
そうだよね、魚料理が混ぜられると、バリエーションが増えて助かるよね。
「時々、獲りに行くよ」
と答えると、シルク婦人さんは大きく頷いた。
朝、起きた!
隣で眠るシャーロットちゃんがケルちゃんぬいぐるみを抱きしめながら「……ケルちゃんの尻尾ちゃん、元気出して!」とかモニョモニョ言っている。
可愛い!
ほんわかしつつ、ベッドから出る。
パジャマから着替えて部屋から出ると――いつもなら飛びかかってくる、ケルちゃんがお座りをした状態で待っていた。
え?
どうしたの?
しかも、どことなく三首とも引きつった顔をしているし……。
そこで気づく。
シルク婦人さんが台所の入り口に立ち、腕組みをしている事に……。
あらら……。
「体を動かすなら、外でしようね」
と言いつつ、ケルちゃんを外に出して上げる。
玄関から出たケルちゃん、鬱憤を晴らすかのように走り回り始めた。
「元気が良いのは良いけど、姫ちゃんの花壇や、イメルダちゃんの畑を荒らさないようにね!」
注意した後、家の中に戻り、身支度をする。
ここ最近の日課になった、スライムのルルリンの町に行きたいコールを宥めつつ、飼育小屋に行って卵と乳を頂き、食料庫に食材を取りに行く。
しかし、昨日の雷魚君、美味しかったなぁ。
あれから、せっかくだからと晩ご飯(約束通りロック鳥さんのソテー)にプラスして、雷魚君のムニエルを一品、追加して貰う事となった。
わたしの分に関しては、自分でやらせて貰った。
レパートリーは積極的に増やしていきたいからね。
ヴェロニカお母さん、イメルダちゃんには好評だったムニエルだけど、シャーロットちゃんはやや不満そうだった。
「サリーお姉さま、お肉ばっかりが良いの」
食後にこっそり囁いてきたりもした。
でもねぇ~
お肉に偏りすぎると、健康にも良くないからね。
その辺りを丁寧に説明したら、唇を尖らせながらも頷いてくれた。
シャーロットちゃん、よい子!
「シャーロットちゃん、良い子だねぇ~」
と抱きしめてたら、妹ちゃんも「きゃっきゃ!」と嬉しそうに悲鳴を上げてた。
イメルダちゃんには呆れた目で見られたけどね。
雷魚君も思いのほか美味しかったけど、こうなると別の魚も食べたいなぁ。
あと、川を下っていくと海とかが有るなら、海鮮を取りに行くのも悪くない。
海老とか蟹とか、前世ではほとんど食べた事が無かったから、どんな物か試してみたいのだ。
まあ、ため池などのお仕事を終えてからになるだろうけどね。
そうそう、今日は町に鰐君を持って行かなくてはならない。
それに、組合長のアーロンさんに北東の様子を見に行くって言っちゃったから、一応報告もしないとね。
スライムのルルリン用の魔道具も買いに行かないとだし、午前中は町、午後からため池かな?
取ってきた食材をシルク婦人さんに渡してパン作りをする。
テーブルを拭くイメルダちゃんに「ため池が出来たら町に行こうか?」と訊ねると「ええ、お願いしたいわ」と頷いてくれた。
ロック鳥さんもいなくなったし、今日辺り様子を確認したら大丈夫でしょう。
「とはいえ、農家の人に話を聞くのであれば、紹介して貰わないといけないよね。
その話、受付のハルベラさん辺りに頼んでみるよ。
それ次第ってのもあるかな?」
イメルダちゃんと接触する人はある程度しぼった方が良い。
そのことを話すと、イメルダちゃんも頷いてくれた。
パンも作り終えて、皆で朝ご飯を頂く。
「蜂蜜付け過ぎ禁止!」と厳命し、ヴェロニカお母さんがショックを受けた顔をしたりしたけど、概ねいつも通りに食事を終える。
町に行く用意をしつつ、荷車に乗せて置いた鰐君の――その影に隠れていたスライムのルルリンを引っ張り出し宥めつつ家の中に戻す。
そして、玄関から皆に「行ってきます!」の挨拶をする。
すると、ゴロゴロルームから出てきたヴェロニカお母さんが、少し慌てたように小袋を持って近寄ってきた。
「例の
「あ、出来たんだ」
ヴェロニカお母さんが小袋を空けつつ「こちらの二枚が特別の物で――」などと説明をしてくれた。
何でも、その二枚はあえて”全く同じ”にはしなかったとの事だ。
最初、大丈夫かな? と思ったけど、説明を聞いて納得した。
まあ、確かにその通りだ。
開いてみてみたかったけど、綺麗に畳まれているので、取りあえずはそのまま持って行く事に。
どちらにしても、木地屋さんの店長さんが広げるだろうから、その時のお楽しみにする。
後は、通常の物も十枚ほど入っているとの事だった。
これは、特別のハンカチの話を聞く前に作っていた物とのこと。
店長さんも、喜んでくれると思う。
「刺繍台も凄く使いやすくて良かったわ」
とヴェロニカお母さんがニッコリ微笑んでくれた。
それは何より!
そんな会話をしていると、近衛騎士妖精の
え?
今日は潮ちゃんが付いてきてくれるの?
……それ、姫ちゃんは良いと言ってる?
妖精姫ちゃんが呆れた顔をしつつ飛んできて、”連れてって上げて”と身振り手振りをする。
まあ、ロック鳥さん(エリート)もいなくなったし、良いか。
潮ちゃんを胸の中に仕舞い、姫ちゃんやヴェロニカお母さんに手を振り外に出る。
よし、町に行こう!
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