冬籠もりの為の自宅改造計画
ママへの贈り物を終えたので、次は冬ごもりの準備だ。
まずは家に関して、現在のままだとちょっと困るので改造をお願いしなくては。
妖精姫ちゃんに相談すると、問題ないというようにニッコリ微笑んでくれた!
なので、食堂のテーブルに我らが
ん?
妖精姫ちゃんも参加する?
え?
クッキー?
仕方がないなぁ。
シルク婦人さんに皆の分のクッキーとお茶を用意して貰う。
それを食べて、飲んでしながら話を進める。
○必要なこと
・食料庫の拡張。
・家畜小屋の拡張。
・外に出ることなく室内から食料庫へ移動出来るようにする。
・外に出ることなく室内から家畜小屋へ移動出来るようにする。
・運動不足解消のため、室内で軽く動く場所の確保。
・室内で植物育成魔法が出来る場所の確保。
イメルダちゃんが紙に必要なことを箇条書きにしてくれて凄く助かった!
途中、室内花壇エリアを求める妖精サイドの提案を、イメルダちゃんが強固に反対したりとエスカレートしそうになったのを宥めつつ、花壇エリアについては諦めて貰いつつ、何とかかんとか話がまとまった。
大枠について、話がまとまった所で、イメルダちゃんが言う。
「ねえ、サリーさん。
窓ガラスって高いかしら?」
「窓ガラス?」
「ええ、冬ごもりをするなら締め切りになるんでしょう?
窓ガラスなら閉めたままでも日の光が入ってくるから、気分的に違うと思うの」
ああ、なるほど。
この家には窓ガラスがない。
外の光を入れようとすると、木製の跳ね上げ式の窓板を上げなくてはならない。
必然的に、外の冷たい風が入ってくる。
吹雪いているときなんか雪が入ってくる。
それはまずいか。
妖精姫ちゃんがイメルダちゃんが書いた紙までチョコチョコ進むと、ちっちゃな指で『室内で植物育成魔法が出来る場所の確保』と書かれた所をさした。
あ~植物を作る場所に窓ガラスを設置するのも悪くはないか。
単純に育てるだけなら、暗闇の中でも出来るけど、その後、何度か収穫するならある程度、植物が育ちやすい環境を作って上げる方が良いもんね。
「値段は分からないなぁ。
町で聞いてみないと」
わたしが答えると、イメルダちゃんはうんうん頷く。
「じゃあ、とりあえずどこに必要かと、大きさを調べてもらい、町へはサリーさんに行って貰うってことで良いかしら」
イメルダちゃんが視線を物作り妖精のおじいちゃんに向けると、おじいちゃんは重々しく頷いた。
重々しくっていうか……元気がない?
ちょっと気になった。
――
一通り相談し終えた後、外に出る。
窓ガラスに関しては、明日、わたしが町に行くと言う事でまとまる。
今日は家の拡張分の木材確保、および国土拡張のために開拓だ!
外に出たのはわたしだけでなく、作業をする物作り妖精のおじいちゃん達とイメルダちゃんもだ。
イメルダちゃんは「作業する様子を自分の目で見たい!」というたっての願いだったので、近衛騎士妖精ちゃんを二人、側に付けるという条件付きで、結界内での行動を許可した。
近衛騎士妖精ちゃん、力も強そうだし大丈夫だよね。
頼もしい!
「シャーロットも!」と元気いっぱいの妹ちゃんが主張したが、ヴェロニカお母さんが「二人とも外に出てしまうと、お母様、寂しいわ」と言ってブロックしてた。
流石に、シャーロットちゃんに工事中、外を出歩かせるのは怖いから、正しいと思う。
不満そうなシャーロットちゃんに「後で一緒に家の周りを歩こうね」と言ったら、「うん!」と笑顔で頷いてくれた。
可愛い!
外に出て、「さてと」と言いながら例のごとく、白いモクモクを日本刀の形にする。
どこから伐採していこうか?
すると、妖精姫ちゃんが飛んできて、わたしの袖を引っ張った。
え?
なに?
妖精姫ちゃんに引かれるまま大木の方について行く。
え?
大木の周りも伐採していくの?
え!?
この大木、まだまだ大きくなるの!?
これ以上大きくなったら、前世の物語の世界樹みたいになりそうだ。
でも、家とか大丈夫?
……成長させる方向を、程度調整させられるのね。
ただ、結界が危ないと。
まずは、大木の周りの木から伐採することに。
そうと決まったら、作業開始だ!
妖精ちゃん達が印を付けた木を斬る、押す、倒すと繰り返し、伐採をしていると、十メートルほど離れた後ろから、イメルダちゃんに「ちょっと、サリーさん!」と待ったが入る。
「なんか怖いから、その手で木を倒す所、白い魔力で押すように出来ない?」
ん?
ああ、グラグラしている大木を手で直接押すより、白いモクモクで押した方が安全か。
やってみた!
「なるほどぉ!
安全だぁ~
流石、宰相様だね!」
と褒めたら、イメルダちゃん、「たいしたことない」って恥ずかしそうにした。
可愛すぎる!
――
サクサク斬った木を、近衛騎士妖精君に運んで貰ったりしつつ、お昼ご飯を挟みつつ、四時間ぐらいで大木回りの伐採を完成させる。
ふむ、かなり手慣れてきた。
大木と森との間は十メートルほど空きが出来た。
結構な広さだけど、こんなに大きくなるのかな?
あ、いや、ある程度余力を持たせてるんだよね。
そうに違いない。
さて、結界を広げよう。
そんなことを思っていると、物作り妖精のおじいちゃんがちょこちょこと走ってきた。
え?
枝切りと乾燥が先?
忙しい!
山積みにされた木をサクサクと処理していく。
物作り妖精のおじいちゃんが終えた物から、ガツガツ加工していく。
早いし正確だ!
負けてられないね!
モクモク刀の二刀流でザクザク枝切り、もう、先ずは枝切りからやりきる!
終えたら、白いモクモクを大きく広げて、丸太を包み乾燥する。
むむむ、やはり魔力を結構使うなぁ。
何となく、わたしの保有魔力の四分の一ぐらい使った気がする。
でもそのお陰で、伐採した分、大体、五十本ぐらいかな? それぐらいの加工済み丸太が完成した。
おっと、切った枝や葉っぱで、地面が埋もれてしまっている。
一旦、葉っぱを片づけよう。
物作り妖精のおじいちゃん達の邪魔にならない場所に山積みする。
ふむ。
燃やすのは……。
煙とかが出ると、エリザベスちゃんを筆頭に、幼い妹ちゃん達の健康が心配なので止めた方が良いか。
穴を掘って埋める形が良いかな?
前回もそうしたし、それが穏便かな?
森の栄養にもなるし。
それか、スライム君達に食べて貰うか……。
あんまり食べさせすぎると、分裂して増えすぎちゃうと聞いたから大量にはやめておくけど、穴に埋めるにしてもある程度は減らしておきたい。
……ちょっと、試しにやってみるか。
家畜小屋から例の白くなったスライム君を持ってくる。
「どれくらい食べられる?」
とスライム君を抱えたまま訊ねると、何やらわたしの手を吸い始めた。
え?
魔力が欲しいって事?
ちょっと、与えてみる。
え?
もうちょっと?
「何してるの?」
とイメルダちゃんが近衛騎士妖精ちゃん達を引き連れ、寄ってきた。
「これをスライム君に食べさせようとしてるの」
わたしの返答に、イメルダちゃんは山と積まれた枝とか葉っぱとかを見上げ、困った顔をする。
「流石に、この量をスライムに食べさせるのは無茶では……」
そして、わたしの方を向きながら訊ねてくる。
「……そのスライム、牧場にいた子よね。
なんか、凄く大きくなってない?」
「やっぱりそう思う?」
「ええ」
牧場にいた時は、片手でも持てなくはないサイズだったスライム君だけど、なんか両手を使い、しかも体を使って抱えないと持てなくなった。
しかも、さっきよりもさらに大きくなってる。
これ、絶対魔力を与えたからだよね?
与えたから、むくむく大きくなったんだよね?
なんか、うっすらだった白い体の色も濃くなってるし……。
まずいのかな?
「と、とにかく、食べて貰おう」
地面に下ろそうとすると、自らポヨンと飛び降りる。
そして、何かこちらの様子をうかがっている様子だった。
いや、顔とか目とかがないから、何となくだけど。
「ここの葉っぱとか枝とか食べてくれる?」
とお願いをすると、ポヨリと揺れた後、スルスルと進み、葉っぱとかを取り込み始めた。
……。
「思ったより、ゆっくりね」
「そうね」
突然、巨大化して、一飲みで全てを平らげたりするとか思っていたけど、そんなことはなかった。
ゆっくりと租借するように取り込んでいる。
イメルダちゃんが少し考えるそぶりを見せながら言う。
「でも、サリーさんの指示を理解したみたいだし、思ったより賢いかもね」
「ああ、確かに」
普通のスライムは、近くにある物を取り込むだけだ。
そう考えると、かなり凄い子なのかもしれない。
「あ、そうそう、イメルダちゃん」
と頼み事を思い出したので言う。
「この子に名前を付けて上げようと思うんだけど、なにか良い名前はないかな?」
「名前?」
「うん。
ピンとくるのが無くてね」
「そうね……」
イメルダちゃんは顎に手をやり考える。
「ルルシエってのはどうかしら?」
「ルルシエ?
どういう意味?」
「聖女にそう言う名前の人がいたのよ」
「……それって問題にならない?
宗教的に不敬とか」
わたしのツッコミに、イメルダちゃんは目を泳がせる。
「……外国の――光神教団の聖女だから大丈夫、だと思う」とか言ってるけど、これ、絶対大丈夫じゃない奴だ。
まあ、この子を外に持って行く事なんて無いだろうから、よほどのことがない限り大丈夫だとは思うけどね。
でも、ルルシエか、何となく響きは可愛いからそれ自体は良いんだけど……。
ルルはどうかな?
あれ、なんかの小説のキャラクターにそんな子がいたなぁ。
そうすると、人の名前なのかな?
だとすると、良くないかなぁ。
「ルルリンはどうかな?」
「ルルリン?
悪くないと思うけど、ちょっと不思議な響きね。
”ルル”の箇所はともかく、”リン”ってどういう意味なの?」
「確か、スライムの名前には末尾に”リン”と付けるのが習わしだった気がするから」
「どこの習わしよ!」
あれ?
一匹だけだったっけ?
よく分からないけど、まあいいか?
「あなたの名前は、ルルリンよ」
としゃがみ、撫でて上げると一生懸命、枝を取り込んでいたルルリンがポヨリと揺れた。
なんか、可愛い!
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