日々に色気が付きました

白樺白季

第0節

朝日が差し込んでいる。なんだか冷房の効いている快適なベッドで寝ていたとは思えない暑さだ。地球温暖化が一夜にしてこんなにも進展したというのだろうか、

「はわわ~」

「……」

眠いなぁー……汗かいてるしシャワーでも浴びて、期日が昨日までだった終わらなかったプレゼンの資料制作やんないとな、そう思った俺は後ろ髪惹かれる思いで布団から這い出て起き上がった。俺の大学生活は平凡だった。日々が色気なく目新しいことなどなかった。日々を学友とふざけあって過ごし、成績は良くも悪くもない感じで毎日の生活自体は幸せではあった。刺激的ではなかったけれど。

「はぁ……」

俺はこの先大学を卒業して、ごく平凡な会社にお勤めして何か特別な官職につくわけでもなくいきていくのだろう。晩年の俺は自分の人生について「可もなく不可もなく」などとほざいているのだろうか。そう懸念の念を抱いていた。そしてその思いは日々を過ごすにつれy=x^2のように増えていった。だが社会人となって数年が経過したいま、もうおれはなにもかんじなくなっていた。俺の運命そのすべてを受け入れられたのかも。でもやっぱり、何か刺激的な、、、、冒険のようなことがしたい、、、、

まぁ、結局何も変わらないんだけど。俺は行動力が段違いに低い、主体性がないともいえるであろう。行動を起こすより先にあれこれと算段して実現性や必要な労力、時間、問題点などを考える。そしてめんどくさくなっ思考放棄。夢がないのだ。だからこそ冒険というものとかけ離れているがそれでもやっぱり冒険がしたい。

ふと、視界の隅のカレンダーに目が留まった。なんか書いてある。”銀行で金下す”

「あーー、いってくるかぁ」

素早く朝食を済ませ、身支度をし、家を後にした。

空は雲一つない晴天で通る透き通った風に木々がざわめいている。銀行までは徒歩十分強ある。いつもの町の見慣れた風景なのだがどこか違和感があった。

銀行の中に入る。この銀行はかなりの規模の銀行で何かと便利なんだが唯一の欠点を挙げるとすればそれは昔ながらの友達がいることだ。彼女は名前を荻山逢乃香おぎやまあのかといい、俺と中高が一緒で俺が所属していたバスケ部のマネージャをしていた。彼女は誰に対しても優しくおおらかな人で誰からも愛されていた。おまけに器量が良かったので彼女は多くの男子から好意を寄せられていた。俺もかくいううちの一人だった。勿論、俺は彼女の眼中にもいなかっただろうが。

「お!渚じゃん。久しぶりだね、相変らず死んだ魚の目してるし。」

「お前、毎回それしか言わないじゃん。」

「そんなことはいいから、何しに来たの?」

俺の発言はガン無視。

「…いや、普通に仕事のために」

「そう」

俺はやるべきことを終え、逢乃香に別れを告げて帰ろうとしたその時___

 


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