異07系統 王城前〜トラヴィトン渓谷〜サッパビア温泉〜ヤルヤーレン火山

『次は王都東門。剣、斧、鎌。武器のことなら何でもお任せ。タッタリーフ鍛治店へはこちらが便利です』


 城壁に囲まれた王都の出入り口は東西南北に一つずつ設けられた四つの門のみ。だから必然と門に通じる道には人や馬車が集まる。


 う〜ん、渋滞してるな……。

 時計を見て、私は息を吐いた。


 次のバス停の予定通過時刻を十分以上過ぎているというのに、さっきから十メートルくらいしか進んでいない。

 ここさえ抜けてしまえば混むようなポイントは無いのだが、このままでは終点の到着がどんどんと遅れてしまう。


 一向に動かない状況に痺れを切らしたのか、乗客の男性が一人立ち上がってこちらに歩み寄ってきた。


「どうした嬢ちゃん。温泉には行かんのか?」

「あっ、すみません。道が少々渋滞しておりまして。お急ぎのところ申し訳ございません」


 お辞儀をして丁寧にお詫びすると、男性が言う。


「いやいや、吾輩は怒っとらんぞ。嬢ちゃんが困ってそうだったからな。ちょっと声を掛けてみたのだ。要するに、目の前に並んでる馬車どもが邪魔なのだろう? なら吾輩が炎で吹き飛ばしてやろう」


 …………はい?

 首を傾げると、男性は大きく息を吸い込んだ。


 まさか本当に火を吐くつもりなの? というか何で火を吐けるの!?

 とにかく止めないと。火なんか吐かれたら、水素エンジン車のこのバスは一瞬で大爆発だ。


「あ、あのお客様、お待ちください!」

「ん? 何だ嬢ちゃん?」

「お気遣いはありがたいのですが私は大丈夫ですので、席にお戻りください」

「おう、そうか。ならば吾輩は席に戻ろう」


 大人しく座ってくれたので、ほっと胸を撫で下ろす。


 にしても、あの人は一体何者?

 渋滞を抜けるまでの間、私はいつかの朝に見た空飛ぶドラゴンの姿を思い浮かべていた。

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