第24話 あなたこそが、皆のリーダー!(二)
会場——もちろん、
「やっと目を覚ましたか、樋里くん」
「さあ、是非、
「こ、こちらのお席に、どうぞ……」
「樋里クンさん! これ付けて!」
一気に色々と言われたので脳の処理が追いつかなかったが、気付いた時には、パーティーのいわゆる「お誕生日席」に、「本日の主役」という
「これは一体……」
「言ったじゃないですか。樋里さんが主役の、戦勝記念パーティーですよ」
「ええ、それはもちろん聞いていたんだけれど……どうして今? なんで僕なんかのために?」
率直な疑問をぶつけると、群衆から一人の男が立ち上がって、こう言った。
「はい、僕が提案したんです! 何というか、初めの頃は『ケッ、政治家に何が出来るってんだよ……』みたいな考えが結構強かったんですけど、流石にあんな姿を見ちゃあ、そんな風に思っているわけにはいかなくなってしまって。罪滅ぼしみたいなものですが、それでこれを提案したら、皆さん結構すんなりと受け入れてくれたんです」
樋里は驚いた。樋里は彼の名前を覚えていなかった——いや、そもそも知らなかったが、彼自身がそう言うのなら、彼も最初樋里のことを否定的な眼差しで見ていたうちの一人なのだろう。実際、彼がやって来てすぐの頃は、大声で呼びかけても一切反応がなかったし、悪態をつくような人さえいた。
しかし、それが「自分が主役のパーティーに賛成」? 率直な感想として、樋里はそのことが全く以って信じられなかった。——が、「提案者」の声に呼応するかのように、皆が次々としゃべり始めた。
「私も……初対面での印象は本当に最悪で、こんなヤツお呼びじゃねえよって感じだったんですけど……最初の戦いではそれがむしろさらに堕ちてしまいました、ただ……奇襲に遭った時とか、今日のこととか、理性的対話の巧みさでは右に出る者がないし——実際の戦闘においても、戦術面での頭脳は八千代ちゃんに任せていたとはいえ、ちゃんと我々を導いてくれていましたし——」
「俺も実はそうで——」
「僕もよく考えたら——」
「私も——」
そう、実のところ、先ほどの、追い詰められた状況での樋里の「指揮」は、吉祥寺前線基地の人々からも高く評価されたのだ。
最後に、金森もこのようなことを言った。
「私からも……あの時は、『信頼できるとは思えない』などと勝手なことを言ってしまい、本当にすみません。今思えば私自身も、あのような状況下で自分について来てくれる人がいる中で、かえって気負いすぎていたのだと思います。私は、あなたの能力を高く評価したい。もちろん、八千代さんの存在も必要不可欠ではありますが、あなたはリーダーとして必要な要素の多くを備えている人だと思います。しかし、我々の方が、それを拒んでいた。これは、本当に愚かなことです。ですから、我々があなたのことを受け入れることで、『吉祥寺前線基地の長』としてのあなたは、完成するのだと思うのです」
長い言葉の後、少しの沈黙を挟んで、金森はこう宣言する。
「私は今、ここに宣言しましょう。私は、彼——樋里数馬さんのことを、この吉祥寺前線基地のリーダーとして、受け入れようと思います」
樋里が、その言葉の重大さをきちんと理解したのは、この発言の数十秒後であった。自分が彼らのために積み上げてきたものがようやく実を結んだ——であるとか、そういった実感を伴うものではないけれど、その本心からの宣言は、確かに樋里の心に強く響いていた。
会場は、あたたかな拍手の嵐に包まれていた。
「やったな、樋里くん。これで我々もちゃんと受け入れられて……一歩前進したという実感が、確かにあるよ」
押立は押立で、比較的初めの頃から、特殊な形ではありつつも、しっかりと受け入れられていたような気がするから、その言葉には疑問も残るが、「吉祥寺前線基地行き」を樋里に提案した張本人として、多少の気まずさを抱えつつも、それでもやはり彼のことをずっと気にかけてくれていたのだろう。樋里はそれを、この上なく嬉しく思った。
「だったらさ、一番最初に肯定的なこと言ったのって私じゃね? ねえ? 金森さんもああだったワケだしさ?」
謎の「古参アピ」をしようとしているのは、長沼だ。彼女も彼女で、結構なことを言ってくれていた気がするのだが……。
「……ちょっと、一回静かにしてください。まだパーティーは始まってないんですよ!」
八千代が話題を戻すと、
「よし、じゃあそろそろ始めるとしましょうか!」
「覚悟はできてます!」
と呼応する声。「覚悟」とは、一体何を始めるつもりなのか……。
「じゃあ、せーの、で行きますからね! それでは……せーのッ!」
「吉祥寺前線基地の練馬軍鎮圧成功に乾杯! そして——」
「我らがリーダー、樋里数馬隊長、これからもよろしく!」
「あれ……戦争でカンパイって、すごく縁起が悪いのでは……?」
箱根崎が、そんな趣旨のことを言った。
なんだか締らないなあと笑う樋里のその
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