第23話 真の魔法術『誦祭記』
空中にたゆたうやさかの体。目を見開き、ピクリともしない。まるで海に浮かぶ水死体のようにも見えた。
「薩摩示現流......戦国の世より続くこの剣術は、幕末においてもその威勢は衰えることはなかった。どのような技工を尽くした剣術をも一撃で打ち破る破壊力。もう一撃行かせていただきますぞ!」
「遅い!」
一弾の強烈な衝撃が
「......!」
大上段に太刀を構える
「幕末維新の戦いが所望であれば、それに従おう」
「ぼくたち、魔法少女は幾度の動乱を実際に経験しそして記憶することにより、魔法術『誦祭記』でその状況や兵器、兵術を現代に再現することができる」
右手を払う、
「上っ面だけでは、本当の力を発揮することはできない。その時代に生きる人々の思い、喜び悲しみ――そういったものを共有して初めて、魔法術『誦祭記』の再現能力は真に発揮される」
右手の人差し指から、波動が放たれる。それをもろに受け止める
「単に動乱を望む『動乱の魔法少女』に、幕末に生きた人々の苦悩を理解することは......できるはずもないだろうね」
そう言い放つと目を閉じて再び詠唱を始める
空中に形作られる黒い物体。それがいくつも具現化していく。
「幕末最強と呼ばれた兵器――アームストロング砲。そしてそれを運用するのは長州最大の軍事家、軍政家として有名な大村益次郎殿の魂!その身に受けてみよ!」
どのくらいの時間だったろうか。轟音はやがてやみ、大砲はゆっくりと沈黙する。
晴れる煙の中、浮かび上がるのは満身創痍の
呼吸は荒く、目はただ目前の
しかし次の瞬間、まるで糸が切れた人形のように
それがこの戦いの終わりを意味していた――
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