第16話 あまりにも短い裁判は、終りを迎え
ザワザワと判事役の生徒たちがざわめく。それを足を組みながら
「この女学校内に不穏の兆しありとの報告が、わがヴィヴォンヌ集会にありました。それはその――
は、と検事やさかはかしこまり帳面を開く。
「
「ロシア――彼の地では革命の嵐が吹き荒れ、内戦がいまだ続いていると聞いていますわ。なんと野蛮なこと」
検事やさかの報告に
「検事やさか、当地ではさぞかし危険な思想がまん延しているのでしょうね」
「言うまでもなく。ボリシェビキを筆頭として、未だ過激なテーゼを掲げ共産革命運動をロシア全土に広めようとしている状態です。その予防の一環として我が国が数年前よりシベリア出兵を行っているわけですが」
「と、すれば我が国は彼のボリシェビキ政権からみれば敵国というわけですね」
「いかにも」
「よろしいですわ。最終弁論をおこないなさい、検事やさか」
沈黙があたりを支配する。後ろ手を組みながら、ゆっくりと
「
「このようなことを学外に漏らすわけにはいきませんわ」
検事やさかの弁論をあえて、
「華族の子女のみが通う、この女学校でこのような不祥事があったなんて――口の端に登ることすら許しがたい。そうでありましょう、伊集中佐」
無言でじっと奥の伊集中佐は軍刀に身を預け、様子を傍観する。
頷く
それが、検事やさかへの合図であった。
それまで、『検事』であったやさかは、この瞬間に『執行人』に姿を変える。
この一件をなかったことにするために。
二人をこの女学校から抹消するために。
いつの間にか検事やさかは背中から、長い太刀を取り出し構える。その次の瞬間、彼女の姿が消える。
はっとして上を見るすざく。そこには銀色の長い刀身が目の前に迫ってきていた――
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