第5話剥がれる仮面
「何か私の顔に付いてる? アーノルド・フォン・クローリー君……」
不味い完全にバレている……何とかして口止めしないと……俺が学校の授業をサボる事事態はソコまで問題ではない。
一番まずいのは、学校にも家にも嘘を付いて捻出している時間が今だという事だ。
この嘘がバレれば間違いなく俺は、地獄の訓練に駆り出されてしまう……何とかしてこの秘密を守らなくては……
「いや、特に何も付いてはいないが……ミナ・フォン・メイザース、君は何しにこんな森の中へ?」
彼女の言葉は意外なモノだった。
「貴方をつけて来たのよ。現代魔術師最強の名を欲しいままにする名門クローリー家は一体、どんな訓練をしているのかって思って……私は見ての通りこのお父様に買っていただいた。
貴方が瞬殺する程度の魔物にも苦戦するんだから、貴方の先祖が示した現代魔術師の道は正しいモノなのかもね……」
彼女は自分の信じる魔導を、古く時代遅れのモノだと認識しているようだ。
それに超大型鼠を一刀の元に切り伏せたからと言って、別段俺が凄い訳ではない。超大型鼠の体力と精神力を削っていたのはミナ・フォン・メイザースだし、事前に
「ミナ・フォン・メイザース。君は何か勘違いをしていないか?」
彼女は根本的な勘違いをしている……恐らくそれは自分に自信が無いからだ。
「――――え?」
「本来魔術師が剣を帯びるようになったのは、魔術を発動させるまでの時間稼ぎに過ぎない。数秒程度で発動できる初級魔術がもてはやさせるのは、中級、上級、最上級と言った魔術を戦闘中に複数回、連続して発動する事が困難だからだ。だから極論を言えば君達に剣は必要ではない!
それに君に必要な
じゃぁな。俺は戦利品を回収しないといけないんだ。後は自力で何とかしろ……」
マシンガンのような怒涛の説明を終える。
さて、俺の自己満足は終わった。自由なスローライフのための最初の一歩も完了した事だし、依頼の達成報告をして得た小銭を使って屋台料理でも楽しむか……
俺の脳内から既にミナ・フォン・メイザースのことなど、すっかり抜け落ちていた。
彼女が今のままであれば、「クローリー家の武威を示す」と言う入学当初の目標に何の支障もないからだ。
「ちょっと! 待ちなさい。私をここに置いていくつもり?」
置いていくって……あ、
俺は普段の俺様系の台詞回しに毒されているせいか、文字通り捕らえれば自分で帰れと聴こえるような事を言っていた。
ツンデレの台詞と一緒で、逆の意味になると言うのに……
「置いていくなんて人聞きの悪い。俺は君を助けたけどそれは俺の信念に基づいて行われた。客観的に見れば善意の行動をしただけだ。なんでそれだけで、君の安全をそれ以降も補償しなければならないんだ?」
「あなた。今まで演技をしていたの?」
ミナの目は非難するように鋭いモノに代わっていた。
「人間誰しも良く思われたい相手の前では、
「そうかも知れないけど……」
彼女の語気が弱くなる。
少しカワイイと思えてくる。見てくれは元々いいのだから、弱弱しい態度に成ればそれは可愛いに決まっている。
「俺の事を黙っていてくれれば、街の中まで送り届けよう」
「余程黙っていて欲しいようね……」
「あぁ、俺は兄達とは違って平穏無事な生活を送りたいんでね……」
「分かったこの件は誰にも言わないわ。その代わり私に剣を教えて欲しいの……」
「要求が多いなぁ……」
「オマケして、嘘がバレそうになった時にフォローしてあげる」
……悪くない提案だが魅力も少ない。元々俺を付けて森の中へ入って来たのだ。剣を教えると言えば
「月に数回教える程度であれば承諾しよう」
「交渉成立ね……」
「
俺はそう言って、刀身が細い両刃直剣を腰ベルトの留め具を外してメイザースに渡す。太刀と両刃の
授業は基本的に
そのため日本刀の作刀技術を用いた。刀身の細い両刃直剣を打ってみたいと言う欲望に負けて作刀したのが、この魔杖剣・
この魔杖剣は最も攻撃魔術として一般的な【火属性】と親和性が高く、手持ちの中では魔術型の剣士と一番相性がいい一振りで、俺とはそこまで相性のいい剣ではないので貸し与えるのは問題ない。
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