第17話 壊れた友情
「優香はすっかり変わってしまったね。」
千夏の一言がいつまでも頭の中で響き続ける。私は変わった…確かに変わった。いや、変わったなんてものじゃない。恐らく、凄まじい豹変ぶりであるに違いない。
私は、容姿が取り立てて良いわけではない。けれど、友達想いな性格が何よりの取り柄だった。
だが、今はかつて友達だった人達を攻撃する毎日。
これも全部、須美のせいなんだ。あいつがあんな事を私にしなければこんな事にはならなかったのに。
須美は自分の要求ばかりで私の要求に応えてくれたことなんて一度もない。
こちらが要求をすれば須美は狂ったように怒り出す。そんな毎日だった。
千夏も明日美も一翔も五郎も。みんな私の味方だったって言うけれどそんなの信用ならない。
みんな、須美ばかり庇って私のことを4人で責め立てたじゃない。本当は私が須美に嫌がらせをされていたことも全部知っていたくせに。
私はあんた達が私にしてきたことをやり返しているだけ。だから卑劣ないじめなんかと一緒にしないでほしい。
私はそう思いながら小百合達の元へと向かった。
「優香じゃない。須美ならさっき一人で泣いているところを千夏に慰めてもらってたよ。」
笹江が忌々しそうに言った。
「ねえ、小百合に笹江に悠里。一体須美と何があったの?」
今までずっと知りたかったこと。須美と小百合達に何があったのか、どうして須美を攻撃するようになってしまったのか。
「あいつとの過去。本当に腹立たしいものだったよ。」
悠里が苛立った口調で話し始めた。
今から一年程前のこと。私はいつも一人で席に着いて、誰とも話そうとしない女子生徒に声を掛ける。
「良かったら私達と一緒にご飯を食べない?」
私が声を掛けたところ、女子生徒が「いいの?」とでも言うような表情で顔を上げた。
女子生徒の名前は佐藤須美。パッと見は至って普通の少女だった。
「笹江、小百合、この子も私達の中に入れてもいいかな?」
私が提案すると笹江も小百合も快く頷いてくれた。
「確か須美って名前だっけ?私は小百合。よろしくね。」
「私は笹江。よろしく。」
2人がにこやかに須美に声を掛ける。須美はこの時、にこやかな顔で私達のことを眺めていた。
けれど、この時の私達は何も知らなかったんだ。
須美と仲良くなって暫く経った時。いつものように4人でお弁当を食べようとすると
「ねえ、いつもお弁当なのはつまらないから食堂で食べない?」
須美の突然の言葉に私はお弁当箱を開けようとする手を止める。
「ごめんね。今はお金ないからまた今度でいい?」
小百合の言葉に須美が不満そうに口を尖らせる。
「お昼を買うお金すら持ってない訳?」
その一言に私たちは暫く固まってしまう。
「お金を持ってこないだなんて本当に準備が悪いよね。」
須美の一言にチクリと胸の奥が痛んだ。なんでそんなこと言うの?私達、友達だよね?友達になれたんだよね?そんな思いが頭の中を駆け巡った。
それから須美の傍若無人な振る舞いが始まった。遊びに行っても「私はこっちに行きたい」と頑なに主張して言う通りにしないと拗ねる。
ある日、小百合達と会話してると須美が1人だけスマホを手にしている。
「須美も一緒にお話しようよ。」
小百合が須美に言ったが彼女は知らん顔。それどころか
「だって小百合達の話面白くないんだもん」
と一言。私達は、須美と接するのが段々と苦痛になってきた。
そして、遂に須美をグループから外すことにした。
それが、須美の怒りの導火線に火をつけてしまったみたいだ。
「なんで?私悪いことしてないのに小百合達って酷くない?」
隣のクラスの女子と話している須美の声が耳に入る。
なんであんたが被害者振ってるの?散々な目に遭わされたのは私の方なのに。
須美に対する激しい憎悪が心の底からふつふつと湧き上がってくる。
「須美、あいつマジで何考えてんの?」
小百合が堪え切れずに怒りの声を上げる。笹江も地団駄を踏みながら怒りの声を漏らす。
「こっちが散々な目に遭わされた挙句に悪者にされるとかふざけるのも大概にしろよ。」
私の頭の隅にはある考えが浮かんでいた。
「ねえ、一緒に須美を懲らしめない?」
私は思わずそう口にしていた。小百合と笹江は私の提案に迷うことなく頷く。
そして、私達は朝早く学校に行って須美の机の中身にある教科書を取り出してビリビリに破ってやった。
今までの怒りを全てぶちまけるように。綺麗だった教科書はあっという間に見るも無惨な姿になった。
それから須美が教室に入ってくるなり、ビリビリに破られた教科書を目の当たりにして絶望の表情を浮かべる。
今まで私達に傍若無人な振る舞いをしてきた須美が絶望している。その姿を見て私達は何とも言えないような快感を感じていた。
disintegration of a friendship〜友情崩壊 NAZUNA @2004NAZUNA
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