他人の不幸で食う飯はウマイ
彼女のその一言に、僕は内心ガッツポーズをした。だが、そんなことは
「じゃあ、決まりだな。僕達は運命共同体、この事は二人の秘密だから。わかったか?」
「うん……二人だけの秘密」
「作戦は後日考えよう。じゃ!」
そう言って僕は足早にその場を去ろうとした。何となく恥ずかしくなってきたのだ。だが、彼女はそんな僕の制服の裾をガッチリと掴む。……
「連絡先、交換しよ?」
「う、うす」
そして僕は、佐山以外で初めて女子と連絡先を交換したのだった。
「じゃあ、今度こそ帰るから」
「あ……一之瀬くん」
「次は何だよ?」
「さっき言おうとしたんだけど。一之瀬くん、『他人の不幸でご飯を食べる』って言ってたでしょ。アレ、辞めた方がいいと思うの。栄養が偏るから」
「は?」
あれは比喩表現だということがわかっていないのか、橘は腕を組むと難しい顔で考え始めた。
「人の不幸は……そう。おやつとかならいいんじゃないかな?多分嗜好品だと思うし。……ワタシ、食べたこと無いけど。」
真顔でそんな事を彼女は言った。……
その日は家に帰ると、スマートフォンを片手に悶々とした時間を過ごした。
(やはりこちらから何か送った方がいいのだろうか?)
演説モードが解け、陰キャ高校生へと戻った僕にとって、女子とのやりとりはハードルが高過ぎる。寧ろ、ハードルと言うより反り立つ壁だ。
そんな事を考え、メッセージアプリを閉じたり開いたりしていた僕のスマホが突然振動する。
「!!」
何かのメッセージを受信した音。その送り主は橘環だった。
『こんばんは』
『おやすみ』
そして、犬のスタンプ。
送られてきたのはその三つだけ。だが、その日は何故かドキドキして浅い眠りを繰り返す羽目になった。
そう。この時初めて知ったのだが、僕も大概チョロいのだ。
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