性根の腐った僕が幼馴染みを取り戻す為、ぼっちの女子と手を組む話。

矢魂

プロローグ

 誰かが言った。『恋は戦争である』と。

 だが、戦争とは忌むべき行為である。古今東西ありとあらゆる歴史を紐解いても、戦争の末不幸になった者の方が圧倒的に多い。故に、僕は色恋などしてこなかったのだ。……できなかったのではない、決して!


 この僕・一之瀬大和いちのせやまとと、佐山瑠璃さやまるりは幼馴染みの間柄だ。子供の頃から家は近く、遊ぶ時はいつも一緒だった。当時の僕は当然のように、遠い未来まで彼女とずっと一緒にいるものだと思っていたし、きっと彼女もそう思っていただろう。だが、中学になると、そういう訳にもいかなくなった。なんと言うか、その……女子といるのが恥ずかしくなったのだ。あの中学生男子特有の心理状態は一体何なんだろうか?

 とにもかくにも、一度は疎遠になった中学時代を経て、僕達は同じ高校に通うこととなった。入学したての一年間で、徐々にだが僕と佐山は再び話をするようになっていった。他のクラスの男子とは違い、こちらには幼馴染みという強力なアドバンテージがある。この調子でいけば、二年生になる頃にはきっと元の関係に戻れるハズ……。そんな淡い期待を抱いていた僕は愚かだった。

 二年生に進級して間もない頃。僕は衝撃的な報せを聞く事となる。


「サッカー部のエース・榊原晴臣さかきばらはるおみと、そのマネージャー佐山瑠璃が付き合っている」


 噂好きの女子達がそんな話をしているのを小耳に挟んでしまった。噂はあくまで噂だと一蹴し、彼女達の関係に気付かないフリをしてしまえば、哀れなピエロとしてやり過ごすこともできたろう。しかし、それは無理な相談だった。皮肉にも、僕はその時初めて彼女への恋心を自覚したのだ。そしてそれは、恋と言う名の戦争に身を投じる覚悟が決まった瞬間でもあった。


 誰かが言った『恋は戦争である』と。

 だが、戦争とは忌むべき行為である。古今東西ありとあらゆる歴史を紐解いても、戦争の末不幸になった者の方が圧倒的に多い。……しかし、しかしだ。戦いと言うものは一度ひとたび始まってしまったのなら絶対に負けてはならない。……決して!

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