第10話 情報屋からの私刑依頼

 情報屋は相変わらず陰気臭い建物を使っている。

 前のパーティーにいる時に時折情報屋を使っているが、この小柄な男とも数年の付き合いだ。


「おや、今日は1人ですか?あっしには新しい仲間を紹介してくれないのですか?」  


「もう知っているのか。流石に早いな。まあ、まだあいつには早いかなと思ってな。そのうち紹介してやるよ。いくつか情報が欲しいが今良いか?」


「旦那の頼みなら夜中でも!で、何が知りたいのですか?旦那が処刑したアイツラの背景ですか?それにしても情け容赦のない見事な私刑でしたな」


「なっ?それ、お前!まだ誰にも話していないのに何で知っているんだよ!?」 


 俺は驚きを隠せなかった。


「アッシはランスタッドの旦那の味方ですぜ。アイツラを殺った後はその背景にいる賊共も潰すと考えて、あれをやった旦那が情報を得る為に来る事は想定の範疇ですぜ。それと、旦那が私刑をしていたのを誰も気が付かなかったとでも思いましたか?くくく。私達の方で対処しておりましたから他に気が付いた者はおりませんがな!他は何ですかな?」


「お前とも長いが相変わらず恐ろしいやつだな。やはりギフトか?」


「旦那、それを聞きやすか?」


「いや、止めておこう。聞いたら教えてくれそうだが、俺の事も洗いざらい話さなきゃならなくなるからな」


「そうですな。詳しくは言えませんが、半分はギフトのお陰とだけ言っておきます。心配しなくても、旦那のフィーチャーの事は聞きませんぜ」


「お前、俺よりも知っているなんて流石に無いわな。悪いがフィーチャーの事は何も言えん」


「おやっ?流石に引っ掛かりませんな」


「俺がギフトを2つ持っているのは別に隠してはいないからな。昔は騒がれたが、今じゃあクズギフトと言われているが、今に見ていろよ!これからが本番だからな!ってすまんな。昨日の事はやはりバレていたか。まあいいや。後でアジトを潰すからアジトの情報が欲しいのと、信用できる上級魔法を教えてくれる奴と、初級魔法を教えてくれる奴の情報が欲しい」


「なる程。ふむふむ。マリニア嬢は魔法が使えるのですな。で、どちらもそうですが、属性は?」


「マリニアジョーじゃなくてマリニアな。俺の見立てだと水に適正がある。俺の事は知っているのだろう?ギフトの関係で属性の制約なしに全て行けるが、そうだな、好みで言えば火かな。それと俺は魔法については中級までスキルで得られているから、マリニアに教えられないんだ」


「なる程。で、癖の強いが安いのと、高いが上手いのとどちらが希望ですか?」


「そうだな。信頼度が同じなら、俺は癖の強いので良いかな。マリニアには真っ当なのを頼むよ」


 情報屋から紹介状を貰い、場所を聞いた。


「どうやら間違った話が流れているようですが、旦那のやったのはCランク以下の雑魚で、A級は奴らのリーダーですぜ。半年前まで現役でしたがな。まあ、旦那のスキルなら問題ないですかね?」


「で、処刑するのに該当するのか?」


「真っ黒でさ。賞金首であり、旦那の基準でも私刑をするに値しやすぜ」


「まあ良いが、俺の基準はまだ誰にも話していないんだがな。分かった。で、情報料はいくらだ?」


「魔法屋の方は金貨2枚で。で、賊の方はこれで!」


 情報屋から硬貨を1枚渡された。

 つまり、この町に巣食う賊共の私刑の依頼をされたのだ。


「1つ聞いても良いか?何故協力する?いや依頼する?」


「あの受付嬢はアッシのはとこですぜ。遠縁ですが、身内にナメた事をしてくれた奴らを許せんのですよ。つまりこれはアッシの個人的な私怨ってのでありやす。それと親戚一同を守る為でもありやす。それと協力するのは旦那のやった事、これからやろうとしている事に賛同する者達がおりやして、アッシは旦那とのパイプ役に過ぎません。ですが我等が旦那を裏切る事も、旦那の事が漏れる事はないですぜ。ただ、旦那が酔ったりベッドの上で女についつい話さなければですがね」


「そうか。親戚は何かしようとしているって事か?」


「流石ですな。察しが良いですな。まだお金を集めている段階ですが、ギルドに奴らの討伐依頼を出そうとしておりやす。アッシは止めたんですが、組織全体を掃除しなきゃと動いておりやして、早目にカタを付けないと逃げられるか、逆に闇討ちされるかのどちらかになりやす。向こうがその動きに気が付くのは早くて明日、遅くても3日以内でしょうな。それよりも旦那が身銭を叩いて情報を集めても得が無いと思いますぜ?」


「金なら何とでもなるよ。知っての通り2つ目のギフトが覚醒したし、マリニアを鍛えれば直ぐにA級に上がれるさ。まあ、町を良くする為のボランティア位しなきゃ罰が当たるってなもんだろ?それに覚醒した時に、悪人に猛烈に正義の鉄槌を!と響き渡ったんだよ」


「分かりやした。で、今晩は緊急避難用のサブとなるアジトにて警戒をする段取りのようですが、脱出用の出入り口から行くか、屋根から行くのなら容易く入れるのと、全部で6人おりやすぜ。ですが、全員赤文字ですから、旦那が赤文字や灰文字になる心配はねえですぜ」


 俺は頷くとアジトの詳細を教えて貰い、情報屋から引き上げるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る