第1話 吾輩は猫である

 吾輩は猫である。


 名前はニャレット。自分で付けた。


 他にも名前はいっぱいあったし、どれも大事な名前だけれど、

だからこそ、今は自分で付けた名前を使っている。


 どこかで聞いた様な始まりだけど当然、内容は全然違う。

 

『これは私の物語だ。』


 まず、何で猫が喋っているのか?となるかもしれない。

 実は私は以前、人間だった。


 人間だったのはかなり前、死因は過労死だった。

 仕事ばかりしていた気がする。


 朝日を眺めながら眠るためだけに部屋の戻る。

 その道中だけが、私の時間だった。


 徒歩たったの15分だけだけど・・・。


 そこで、いつも見かける茶トラ猫。


 自らの意志で、自由に生きている様に見えた。


 私は思った。


「猫になりたい・・・」


◇◇◇


 驚いた事に、神は私の願いを聞き入れてくれた。

 猫にしてくれたのだ。


 しかし、野良猫の寿命はせいぜい二、三年。

 そして私は、実は野良猫の生活環境が過酷なものである事を知っていた。


『私はただ・・・憧れたかっただけなのかもしれない・・・。』


 私はそれを素直に神に打ち明けた。

 すると更に驚いた事に、神は様々な要望まで受け入れてくれたのだ。


 要望は三つ。


 一つ、寿命の件。神は寿命を無くしてくれた。体も丈夫にしてもらった。

 二つ、食事の件。何でも食べれる体にしてくれた。

 三つ、記憶の件。いい思い出なんて少しもなかったけど、私は私でいたかった。


 こうして、私は超ハイスペック茶トラ猫として生まれ変わった。

 化け猫どころの騒ぎではない。


 何を大袈裟な、と思うかもしれない。

 これだけ聞いたら、ただの長生き出来る丈夫な雑食猫だ。


 しかし、神は随分と拡大解釈をしてくれたらしい。


 例えば、うっかり乗用車に轢かれた事があるのだけど普通に生きてた。

 自分でもビックリだ。


 更に、食事だけど無機物ですら食べれる。スライムか何かかな?

 何を食べても平気なのだ。邪魔そうだった粗大ゴミを食べても平気だった。


 記憶の件も、

「前世で知り、得た知識を知れる様にして欲しいです」

 とお願いしたのだけど・・・


 神はどうやら知り、得た知識を『知り得た知識』つまり、

知る事が出来た知識と勘違いした様だ。


 前世の私は、パソコンでインターネットに触れる機会も当然あった。

 結果、インターネットで検索出来る知識を全て、私は知る事が出来た。


 お陰で、退屈せずに済んだ。情報は腐るほどある。

 私の趣味はweb小説を読む事になった。


 パソコンなどなくても脳内で検索し、閲覧出来る。

 しかも覚えた事、体験した事は決して忘れなかった。


『完全記憶』もおまけで付いてきたのだ。


 化け猫も裸足で逃げ出す高スペックでしょ?


・・・


 こうして私は長い時を生きた。

 とても充実した日々だった。


 ある時は、飼い猫として飼われていた時もあった。

 あまり長生き過ぎると不信がられるので5年ほどで去る事になったが・・・。


 ホームレスのおっちゃんと過ごす日々もあった。

 あれは少し切ない思い出だ。


 街中の猫のボス猫になった時もあった。

 あの時は大変だった・・・。


 名前を変え、居場所を変え、様々な日々を過ごした。


 80年は生きただろうか・・・。

 前世と合わせればゆうに100年を超える時を生き・・・


『そして私は猫としても死んだ。』


 車に轢かれても平気だったのになんで!?となるだろう。

 でも、あれはどうしようもない。



 だって、地球ごと無くなっちゃったし・・・。



 巨大隕石の衝突だったらしい。


 滅ぶと分かってからの人類は、それはもう酷いものだった。

 醜くて見てられなかった。思い出したくもないけど、

残念ながら私の完全記憶は全てを記録していた・・・。

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