第13話 欲と星屑

三周目の旅が始まった。


二度目の旅は一度目の時よりも

長い旅になった事を考えると、

今からとても憂鬱になる。


繰り返す度に、旅する時間が延びるなら

たまったもんじゃない。



そうでない事を祈るばかりだけど…、



二周目が長旅になった原因は

クウレ達が海から離れた所にいた

からなのだけど、

その原因を作ったのは

おそらく自分が怠け過ぎたからであって…、



とにかく自分の首を絞める事にならないよう

気を引き締めて行くとしよう。






怠けることをしないと胸に誓い

歩き出したシイナ、


歩きながら、その身を傲慢と名乗った人物の

言葉を思い返す。





シイナ「傲慢…、罪……、儀式、

七度繰り返さる……、」



空を見つめながら気になった

言葉を呟いていく。




シイナ「七廻着海……、」




傲慢は「七廻着海なかつみ

七つの罪を七度集める儀式。」


「集められた罪は辿り着いた果ての海にて

洗い流される。」 と言っていた。





シイナ「果ての海って傲慢に出会う場所

の事なのかな…、」



まだ二回しか経験していない事だけど、

旅の終わりは何時も気がつくと、

足下は水に浸かっていて、

傲慢に会った後には次の旅が始まる……。




仮にあの場所が果ての海だったとしても、



「うーーん、七つの罪が何か分からない。」



話によると罪を集めることで海にたどり着く

らしいけど、

あそこが果ての海だとするなら私は罪を全て

集めたことになる。



「でも何の事かわからない…、」



歩くことと、夜になると寝ること、

それから水浴びに、

これといって変わった事はしてないはずだし、

集めるも何もそもそも

手ぶらのまま、ずっと旅をしていたワケで…



「あそこはやっぱり果ての海じゃ

ないのかも…?」



他に考えられるのはエルゼやイロナ達、

だけど………集めるって言葉に当てはまらない

気がするし……、うーーん、




何度考えても、 疑問は振り出しへと戻り、

確かめるなら進むしかない

と言う結論になる。




旅を終わらせない限りはこの疑問も

きっと知ることはできないのだろう。



ただ旅を終わらせると言っても

何をきっかけに傲慢のいる あの場所へと

辿り着けるのか

それすらも分からないのだけど…、




「歩いて行ける場所って感じじゃないしな、」



二周目の時、繰り返されている事を

知らず一度目の旅をなぞるようにして

歩いて行ったけれど、

今回はどうだろう……。




一周目の旅路のみが正解であるなら、

今回も一二周と同じ道を

行くべきなのだろうけど…、


そうであると確証を得た訳でわないし、

残り五回もあると

考えれば、試すという意味でも

違う方へと進むのも悪くない気がする。




「旅に間違い ってあるのかな…?」




この場合、正しい旅というのは

儀式の条件を満たしている事だと

思うのだけど、


満たされなかった場合はどうなるんだろう。





そんな疑問を浮かべるシイナの足は既に、

これまでとは違う方角へ向いている。




「うん、新しい何かに出会えるかも

しれないし、今回は行きたい場所に行こう。」




好奇心を抑えられない、と

逸る胸の鼓動に従って足を進める

シイナ。




この選択が、新しい出会いを生むように、

この旅路が、次へ進む糧になりますように。





そんな願いと共に、進んでいた

方向とは真逆の道を行くシイナ。

砂漠の景色の中から

見た事ない出会いを探すため

ただひたすら歩き続ける。


三度目の旅路はじめて

彼女に何をもたらすのだろう。














三度目の旅が始まって数日、

一周目や二周目のように

エルゼに会っていない事から察するに、

この段階で既に変化は訪れている

と言える。


相変わらず砂漠の景色は変わらないけれど、

形には無くとも、

見える変化がある。




それでもやっぱり、形として変化が起きないと

面白みがないのも事実で……、




新しい物、新しい出会い、違いを求め変化を

求め、刺激を求めて旅をする。





「早くなにか起きないかな…」




シイナの期待は叶うことなく

歩みは進み十四回目の朝を迎える。






「たすけぇ…てぇ…、」




遠くで小さな声を聞き取って辺りを探すと、

砂漠の中ポツンとある人影が

見えて近寄った。



最初は遠くて分からなかったけど、

声の主はエルゼだった。





真逆の方向を歩いて来たはずだけど、

こんな所にエルゼがいるなんて…、

私と同じように

エルゼも違う方へと進んでいたのだろうか。




エルゼ「たす…けぇ、」



助けを求めるエルゼの手を取り

倒れていた身体を起き上がらせる。



シイナ「大丈夫 ?」




心配そうに見守るシイナと目が合った

エルゼは何事もなかったように

立ち上がって、




エルゼ「うん!大丈夫!さっきまで怠くて

動けなかったけど何か元気になったから。」




すっかり元通りになった様子で

その姿はシイナが知っているエルゼそのもの。




エルゼ「助けてくれた貴方のお名前は?」



シイナ「私はシイナ、エルゼはここで何を

していたの?」




エルゼ「エルゼって私の名前!?」




シイナ「そうだけど、何かおかしい?」



エルゼ「うんうん、そういえば私名前が

無かったから凄く嬉しい!」



「ここまで歩いて来てたんだけど、

途中に穴が沢山ある場所を見つけてね、

そこにあった溶けた変な物に触れたら

身体が怠くて……、」





エルゼはきっとルイーゼに触れたんだ、

それに沢山の穴はきっと

近くにクウレがいる証だ、






エルゼ「シイナはどうなの?」



シイナ「私も旅をしていたんだけど、

ずっと砂漠の景色で退屈してて、

そんな時にエルゼの声が聞こえて。」



エルゼ「そうだったんだ」





結果的に最初に出会ったのはエルゼで

他のルイーゼやクウレも、

すぐそばにいたみたいだ。




私が行く道を変えたのが影響してるかは

ともかく、

エルゼを中心に集まって何かが起きる?



まだ判断するには早いけど、

私が何も無い景色を見ている間に

エルゼは接触していたのだから、

間違いでは無いかもしれない。

現に私もこうしてエルゼに出会ったのだし、





それともう一つ、気になることがある。

私は進む道を変えれば、

全く違う景色出会いがあると思って

いたけれど、


エルゼ、ルイーゼ、クウレ、イロナ、カリム、

私シイナ、そして恐らく含まれるだろう傲慢、



日にちや場所は変わっても、

私達は引かれ合い必ず合う運命にあるのかも

しれない。




さっきまでという言葉に

引っかかっていたけれど、

私と傲慢も含めると七つになることから

私達は七つの罪である可能性がある…、


そんな風に今のエルゼの話しを聞いて

思った。






七つの罪を集めるのが七廻着海という儀式で、

その罪が私達のことを指しているのなら

クウレの後を追って、

イロナやカリムを探すべきなのでは

ないだろうか。





エルゼ「シイナ?」



長いこと考え込んだせいでエルゼを

心配させてしまう。




シイナ「エルゼ、穴が沢山あった場所に

何かいたりしなかった?」




確証は無い、けどこの考えは真実に近いと

心の奥底の自分が訴える。

予定を変え以前の通りに旅をして

回って行く事にする。




エルゼ「穴の他…?う〜ーん、穴がある場所

から遠い所で砂煙が上がってたかな…、」




シイナ「私もその穴砂漠、見てみたいんだけど、案内できる?」




エルゼ「できるよ!任せて!!」





今は別の理由で好奇心を抑えられず

にいるけれど、

また私はクウレの後を追って胸を弾ませて

歩いている。









己を識るは答えを知る近道、


真実を知るは世界を愛する為の一歩。


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