星ノ終

花水スミレ

第1話 最期の一雫

月に届かず……


青き星は歌を止め………


花は舞い戻らず、吹く風はただ砂塵と踊り

海へときえる


荒れることなく踊る海、

白き砂海と波立つ水の二海星、……地球。


生き方を忘れ、死に方も分からず

運命を知らず 希望を忘れ、

心の在り処を喪い


記録は消え 記憶は彼方へと、


空に手を伸ばしても、

夢は帰らず

届かぬ想いは彷徨い、


星の影は罪として


枯れ木と化したからの地で

最期の一雫を垂らしている。


果てる星よ、星ノ木よ、貴方は今何を思っているのでしょう。あなたの幸せを、私達は見つけることが出来たでしょうか?。

────────────────────────────────────────────────……………………………………………………………………………………………………………………………

……


肌をパチンと叩くような、冷たい夜の砂嵐を

耐え、音もあげず何気ない顔をしながら

日が登っている。青白い地球を覗きこむ太陽によって

気温が増していく中、真っさらな変化の無い寂しい

砂漠の上に、ポツンと

小さな星屑が転がっている。


中性的な見た目で、砂漠のような薄い

黄金色の長い髪に、

何もないこの星に似つかわしくない

汚れの無い肌と、新品の服を纏っている。


何かをする訳でもなく、ただ宇宙ソラ

眺めているそれは、

日が傾いて空の景色が変わるころ、ようやく

立ち上がろうと動きだした。


けれどここは一面の砂漠、

どこを見渡しても変わることのない景色に

進む足を取られてしまう、

結局それは日の沈んだ夜の上の宇宙ソラ

を、今度は立ちつくしたまま眺めるのであった。





次の朝を迎え ついにそれは歩きだした。

これから始まる星路みち

足を踏みだし、見果てぬ幸福を探し、

求め、誰もが望んだ救いを目指して、

残されたものと、残らないものの境界を

胸に焼き付けていく。







歩き初めてから七度目の朝を迎え、

照りつける太陽も真上に登ろうかという所、

何もないこの砂漠に小さな変化が訪れた。


「おーーい!!ねぇ君ーーー!!」

「ちょっとー!?あれ?聞こえてる〜?」


それは初めて聴く風以外の音、

聞きなれないという名の音。

驚きと戸惑いに身体をこわばらせていると…、

「おかしいな〜、もしかしてと思ったんだけど同じじゃないのかな?」


「同じ?ってなんだろう…?ふふっ。」


可笑しそうに笑う目の前の人物を

不思議そうに見つめる…………


「あぁごめんね、ごめんねって何の事か良く解らないけど…、」

「君が私と同じ人間なのかなって。

と言っても私 人と会ったこと一度もないし、

そもそも私自身が人?ってやつで合ってるのかなぁ?」




目の前の人物は聞きなれない音を、

にして

風を操るかのように音を紡いでいる。

それを聴いていると、どこか胸の奥が

光るような、確かな熱を感じていた。



「ねぇ、君は言葉を喋らないの?

喋らないじゃなくて、喋れないとか?」



聴き入るように耳を傾けるが

理解できない、いつの間にか視界が点滅し

それを見ている目の前の人物も

パチパチと目を丸くしながら顔を覗いている。


「そっか〜〜」

「声に出すのは難しいのかー、

声帯?が、無かったりするのかな〜?」


「それとも恥ず かしがり屋 さん?

だったりして。」


特に困る様子もなく

話すことを楽しんでいる人物は続けて話す



「まぁそんなことは、どうでもいいの♪

私あなたと一緒に旅がしたくて!」



目の前の人物はさらに目の前へと身を乗り出し

こちらの手を取りながら

返答を望んでいる。




「私もまだ、君となにが違って どこが同じなのか解らないから、あなたを知って 私を知ってほしいの。」


「知るってどいうことか解らないん

だけど………うん、 きっと今の気持ちが

知りたいってことだと思うの!」


「だから、ね?お願い!!」



「……、…………………………………、」


伝える手段を持たないそれは ほんの少し眉間にしわを寄せ、それを

見て目の前の人物は

さらに続けてこう言う。



「砂漠以外のものが観たくて

歩いていたんだけど、

最近一人は寂しいなって……、」



「……………………………………………………

………………………………………、」
























数十分後、



「あれ!?もしかして、喋れないんじゃなくて私の言葉が解らない!?」


「…………、」

ひたすら沈黙が続いた後

一抹の可能性に気づく人物。


「えーー!!伝えてくれなきゃ分かんないよー。」


「ってそうか、わかんないから伝えられ

ないんだもんね、」


数十分かけて目の前の人物は何か一つ

理解することができたらしい。



「うーーーん、強引になっちゃうけど仕方ない、私 君と旅がしたいから連れてくね♪」



にこりと微笑みながら手を引かれ、並ぶ様に

二人で歩きだした。

いきなり手を引かれ

さらに驚きを増す、



「そういえば 名前 !!」

「なまえ…? は、えーっと…

なんか大事なやつだよねきっと。」


「えーっとねー…あ、じゃあ私エルゼ。」



エルゼ「君の名前は………、あっても

言えないもんね、じゃあ私がつけても良い?」


理解できない音の情報量に

困った顔をし続け、どうすることもできない。



「君は………う〜ーん、シイナ!!」

「シイナってなまえはどうかな?」


シイナ「……………、」

その名前を聞いてまたどこか

暖かな熱を感じ固まった困り顔も元に戻った。




エルゼ「そっかー!気に入ってくれたの!?」


嬉しそうに歩く手を振るエルゼと、

何も分からないシイナの二人旅が始まった。


エルゼ「う〜んこのままだと日が

暮れちゃうね」

「やっぱり明日からにしようか。」


シイナ「……、」


エルゼ「うんうん、夜は危ないからね!」




名もない者達は 名前の無かった者として、


明日あすも星上を歩いていく。








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