第4話 寝室

 覆いかぶさる俺を見つめる愛莉朱。

その表情はいつも見ている愛莉朱とは全く違う、どこか大人びた感じがする。

頬を赤らめて、そして、いつもよりも増して肌艶が良い。


「――――ひろと」


「――――!? い、今俺のこと名前で呼んだ……?」


 俺は驚いた。

まさか、いつもお兄ちゃんお兄ちゃん言っている愛莉朱が、急に俺の名前で呼んでくるなんて……!


「やっぱりお兄ちゃんのこと名前で呼ぶの恥ずかしいね……」


 恥ずかしそうにする愛莉朱、そして俺の名前を呼んだ愛莉朱の声が重なって、俺は固まってしまった。

体全身がものすごく熱い。

熱すぎて俺の体が溶けてしまいそうだ。


「お兄ちゃんって言うのも良いけど、名前で言ったほうがもっと近くで居られる気がする。時間はかかるかもしれないけど、いつかはお兄ちゃんのこと、ちゃんとひろとって言えるように頑張るからね」


「愛莉朱……。やっぱ愛莉朱は反則級に可愛いな。でも、別に無理して俺の名前で呼ぼうとしなくても良いんだからな?」


「ううん、わたしがそうしたいの。お兄ちゃんって言うより……ひろとって言ったほうが、なんだか付き合っている感じでしょ?」


 何その理由……可愛すぎないか!?

名前で呼んだほうが恋人らしいだって?

愛莉朱……まじ天使、女神かよ!


「愛莉朱……お兄ちゃんは負けました」


「えっ? ん!?」


 俺は愛莉朱にキスをした。

もう、自分を抑えられなかった。

愛莉朱を自分のものにしたい、俺だけを見てほしいという独占欲が俺をさらに暴走させていく。


「――――はあ、はあ……。おにい、ちゃぁん……」


「あ、愛莉朱……」


 俺の視界にはもう愛莉朱の姿しか映っていない。

愛莉朱は頬を赤くして俺に向かって腕を伸ばし、俺の頬にそっと手を添えた。

細くて繊細な手、そして真っ白な肌には心地良い温もりが伝わる。

 俺はその手に触れた。

こんなに好きでたまらない人が俺の妹なんて、俺は幸せ者だと思う。

だって、愛莉朱は俺の妹だからずっと一緒にいられるからだ。


「好きだ愛莉朱。俺は愛莉朱と結婚して、一生傍に居たいくらい好きだ」


「うん、わたしもお兄ちゃんのこと大好き! それに結婚だなんて……前も言ったけど、ちょっと気が早まり過ぎじゃない?」


「俺はいつだって本気だぞ?」


「もうお兄ちゃんったら……。でも、わたしもお兄ちゃんと同じ考えだよ。早くお兄ちゃんと結婚して、ずっとお兄ちゃんと一緒に居たい」


 愛莉朱の目を見ただけで本心だとすぐに分かった。

ったく、愛莉朱はどこまで可愛いやつなんだ……。

それが、俺が彼女に惹かれたところなんだけどな。


「――――しないの?」


「は?」


「さっきお風呂入っている時に言ってたでしょ? 深夜に……いけないことしたいって」


「――――」


 確かに俺は愛莉朱にそう言った。

言ったけど……本当に良いのだろうか。

本心を言えば、愛莉朱とそういうことはしたい気持ちでいっぱいだ。

今も暴走しそうなくらいだが、めちゃくちゃ頑張って自制している。


「いや、ダメだ。色々考えたけど、妹にそんなこと出来ない。まだ俺たちはそういうことをするには幼すぎる」


「お兄ちゃんは優しいもんね。わたしに気を使っているんでしょ? でもね……」


「――――!? ちょっ、あ、愛莉朱!?」


 すると、愛莉朱は突然パジャマのボタンを外し始めた。

俺は思わず目を瞑って横を向いて見ないようにした。


「わたしから目を逸らさないでよお兄ちゃん。もっとわたしを見てよ……」


 俺は固唾を飲んだ。

止められたはずなのに……気づけば愛莉朱の服を脱がすのを手伝っていた。


「――――」


 上下を脱ぎ、愛莉朱は下着姿になった。

毎日愛莉朱と風呂に入っている俺は愛莉朱の裸には慣れている、はずだった。

今はベッドの上にいるせいか、いつもより違うものを見ている気がした。

いつもより色気があるというか、なんというか……。

愛莉朱はまだ中学校に入学して数ヶ月しか経ってないはずなのに、今俺の目に映っている彼女を見ると、完全に大人っぽく見えてしまう。


「ったく、恋をしてしまうと全部がそう見えてしまうのかもしれないな」


「――――? どうかしたの?」


「いつもより愛莉朱が大人っぽく見えるなって思ったんだ。まだ14歳だっていうのにな」


「お兄ちゃんはロリコンだもんね」


「違うわ!」


 笑われながら、からかわれてしまった……。

流石に優しいお兄ちゃんでもそれは許されないことだ。

どうなっても知らんからな。


「ひゃっ!?」


「俺をからかった罰だ愛莉朱」


「ん!? ――――ん」


 俺は愛莉朱の手を取りながらキスをする。

最初は驚いていたが、だんだんと受け入れていく愛莉朱。

お互いに感情を抑えられず、長い時間お互いの唇を重ね合わせていた。


「――――はあ、はあ……。お兄ちゃん、わたしを奪ってほしい。お兄ちゃんにわたしの全てを奪ってほしいの。まだ子どもなわたしだけど……もう、この気持ちは抑えられないの!」


「――――!?」


 『お兄ちゃんにわたしの全てを奪ってほしい』……その言葉で俺の理性は完全に崩壊してしまった。

愛莉朱の体を触ってはまさぐりまくった。

弄られている愛莉朱は快感に思わず甘い吐息と嬌声を漏らした。

とろんとした目で俺を見る姿は、俺の本能をさらに暴走させる。


「あ、愛莉朱……。俺、もう……」


「良いよお兄ちゃん……。わたしをめちゃくちゃにして……。もっとお兄ちゃんのこと大好きにさせて!」

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