第24話 聖女の力を証明してみた(前)
「アイリス義姉様……助けて! 私は冤罪で捕まったのです!」
「……聖女と名乗って金品を街の人たちから受け取ったと聞いたけど」
嘘をついたり騙したりして金品を奪う行為は立派な犯罪だ。
しかも、聖女でないことはこの前の騒動で理解できているはずなのに、それでも聖女と名乗ったのだとすればタチが悪すぎる。
「私、わかったんですわ。やはり私は聖女だったのよ! だからそれだけの評価を得て対等な報酬を貰っただけです!」
フリンデルがものすごく自信満々に主張しているので、さすがの陛下も動揺した顔を見せていた。
「アイリス殿よ、彼女の言っていることは誠なのか?」
「いえ、勘違いです」
「な!! 義姉様!?」
ハッキリと断言しておく。
フリンデルは聖女ではない。
フリンデルに偶然が重なって自分が聖女だと思い込んでいるにすぎないのだ。
念のために、あの事件以来もう一度書庫で聖女関連の本を読んでみた。
万一にもフリンデルが聖女の可能性があったら申し訳が立たないと思ったためである。
だが、聖女になる可能性は長い歴史を辿っても、必ず死の淵から生還した者の一部だけが聖女の力を手に入れることがあると書かれていた。
フリンデルは死にそうになったことなど一度もないはず。
「フリンデルが聖女なら、その手錠くらい簡単に自力で外せるはずなんだけど」
「そんなこと出来るわけないでしょう?」
「手錠が外れるようにするか、手錠の物質を変化させて手が抜けるように祈ればいいのよ?」
仮に私が手錠されても聖なる力で祈れば、手錠を変形させて簡単に取り外せるだろう。
フリンデルが聖女ならば、それくらいできるはず。
だが、それが出来ないのであれば決定的だ。
いい加減に聖女という思い込みを治して欲しい。
これだけ周りに迷惑をかけて、ついには捕まってしまったのだから。
「私に繋がっている手錠の形が変わって私の動きを自由にさせなさいっ!!」
フリンデルが祈ったフリをした。
しばらく無言が続く。
「何も変わらぬではないか」
「雨を降らせたりしてきたけれど、こんな物質変化なんていくら聖女でもできないに決まってますわ!!」
やらやれ仕方がない。
これも義妹のためだ。
はっきりと理解してもらった上で罪を償ってもらいたい。
「陛下、今日の聖なる力を一回ぶんだけ自分のことに使ってもよろしいですか?」
「むろん構わぬよ? そもそも私に聞くことではない。アイリスには国を良き方向に変えてくれ感謝しているのだからな」
「ちょ、ちょっと! 私の手柄をアイリス義姉様はずっと横取りしていたというの!? だったらアイリス義姉様に手錠をかけてもらうべきよ!」
横でぎゃーぎゃーうるさい。
言われなくてもそのつもりだから黙っていて欲しい。
「警備兵さん、私に手錠をかけてください。それから、手錠を一つ破損してしまうかと思いますがよろしいですか?」
「破損はかまいませんが……、アイリス様に手錠など……」
「これもフリンデルのためですから」
「わかりました……」
私は自ら警備兵に手錠をかけてもらう。
「わかればいいんですわ。さ、私の手錠は開放してくださいな。聖女としてこれからも活動していくのですから」
フリンデルは満更でもない笑みを浮かべていた。
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