第23話 偽聖女の出現
王宮で居候させていただいて五日経過した。
私自身も、聖女として力の解放をコントロールすることができるようになった。
とは言っても一日三回までしか発動はできないし、色々と制約はある。
「雨を降らせる」「作物が実るようにする」といったことしか発動させていないので、問題なく祈れるわけだ。
だが、少しでも国の環境が良くなってくると、必ず面倒ごとは訪れてくるものなのである。
「アイリス様……。民衆街ではまた聖女と名乗る者が現れていますが……」
いつの間にいか私専属の使用人が配属されてしまった。
今報告してくれた子は私より年下の女の子で名前はマイン。
「そう……。これで三人目よね」
私にとっては偽物が出たとしてもどうでもいい話ではあるのだが、周りがそういう雰囲気ではない。
「なぜアイリス様はそこまで平然としていられるのですか? 手柄を横取りされているようなものですよ?」
「手柄も何も。見返りが欲しくて聖女活動しているわけじゃないし……。私にできることをしただけだからなぁ」
「はぁ……アイリス様はお人好しすぎますよ……。でも、今回の偽聖女は捕らえたそうなので、本人にギャフンと言わせてほしいです」
偽聖女なんて、迷惑な人達だ……。
せっかく王宮で天国のような毎日を送れているのに……。
「聖女と名乗り民衆から直接金品を奪っていたんですよ?」
「なんですと!? ギャフンはともかく、文句は言ってやりましょう!!」
そこまで悪質だと私にとっては迷惑どころか大迷惑だ。
せっかくここに来てから私の気持ちをストレートに伝えることができるようになってきたのだから、注意くらいはして騙し取った金品はみんなの元へ返すように言ってやりたい。
「その人、あまりにも文句ばかり言っているので手錠をかけて地下牢へ送ったそうです」
私一人で行くのはいささか恐怖はあるので、マインに一緒についてきてもらう。
地下牢は不気味で嫌な空気が流れているような感覚があるので、あまり近寄りたくはなかったが仕方がないか。
♢
「アイリス。待っていた」
「へ、陛下!?」
陛下は地下牢へ繋がる扉の前に立っていて、私に声をかけてきた。
「よくここへ来るのがわかりましたね」
「あぁ。それに、アイリスをこの扉の中へ案内するのはいささか気が引ける。私の権限で特別に先ほど捕らえた者を一旦地上に出すことを許した。容疑者はすでに扉を開けたすぐそこで控えている」
容疑者か……。
つい最近、義父様がホルスタ殿下を長い間昏睡状態にさせていた罪で捕らえられた。
しかも、尋問にかけたらゴルギーネとその両親までもがホルスタ殿下暗殺に関与していたことがわかったのだ。
フリンデルだけは無罪のまま一人で家に放置状態になっているが、すでに汚名は着せられている可能性はあるだろうし、もうまともな人生は送れないだろうな。
そう思っているのも束の間、扉が開き容疑者という女性が出てきたのだが……。
「アイリス義姉様!?」
「フリンデル!?」
「まさか、この娘はアイリスの知り合いだったのかね……?」
私は一瞬驚きはしたが、すぐに納得してしまい冷静になってしまった。
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