第15話 私自身が変わらなければいけない

 国王陛下から、王宮で泊まっていいと宣言されてしまって、私はとても嬉しい。

 それと同時に、私のような者がそんなビップ待遇を受けて良いのだろうかと疑問だった。


「むろんだ。だがそれとは別件で一つだけ頼みたいことがあるのだが」

「は、はい! 私にできることであれば」

「息子を昏睡に追いやった犯人をアイリス殿の聖なる力でなんとか見つけられないか?」


 ジュエル殿下たちと同じことを頼んできたか。

 当たり前かもしれないが、是が非でも捕まえたいようだ。


「明日までに考えてやってみます」

「感謝する」


 王室を出て、ジュエル殿下によって客室の個室へと案内された。

 個室といっても、今まで私が生活していた部屋とは比べものにならないほど広い。


 ふかふかそうな広々としたベッド、机と椅子もあるし、水浴び場まで用意されている。

 これが王宮レベルか……。


「何かあれば、外にいる使用人に何でもいってくれて構わない。必要とあらば私への呼び出しも許可するように命じてあるからいつでも呼んでくれ」

「ありがとうございます」


 ジュエル殿下が離れ、私は広々とした部屋にひとりぼっちになった。

 今日だけで色々あったな……。


 ゴルギーネ様から婚約破棄を宣言された。

 義妹のフリンデルが聖女じゃないよと言ったら義父様から追い出された。

 キノコを生食いしたらジュエル殿下に拾われた。

 ホルスタ殿下の昏睡を治したから私が聖女だと確信した。

 国王陛下と話した。


 いやいや、色々とありすぎだろう……。

 おそらく今まででもこれからの人生でも、一番濃い日になったのではないかと思う。


 明日も聖女の力を使って犯人探しだし……。

 どうしたらいいものか。


「うーん……。あ! そうだ!!」


 部屋のドアを開けて使用人へ頼もうとしたのだが、恐い。


「どうされましたか?」

「え……えーと……」


 勇気を出すのだ私!!

 ここへ来て王子や国王陛下と会話したことを思い出せ。

 色々なことが起こって私自身の弱点を克服できるかもしれないキッカケを与えてくださったのだ。

 少し人相が恐そうな相手でも、怯えることなく話すんだ!!


「あの……、本を読みたいのですが」

「承知いたしました。すでに陛下から王宮内で可能なことに関してはすべて許可が出ています。書庫へ案内いたしましょう」

「は、はい!」


 勇気を出して発言してみたら、何を怯えていたのだろうかと不思議になってしまった。

 見た目は恐そうだったけれど、とても優しい人だ。

 私は、自分から発言することを常に躊躇してきた。

 だから会話もできずにウジウジしていた。

 王宮にいさせてもらえる間に、なんとしてでも自分を変えなきゃ!

 そう心の中で誓った。


「どうされましたか? 書庫はこちらです」

「あ、今行きます!」


 書庫で本を読めば何か良い案が浮かぶかもしれない。

 元々読書は好きだったが、なかなか本を読ませてもらえなかったので、せっかくなので有意義に読書を楽しんでしまおうか。

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