第22話 勘違いだと気がついた
「いつミリアナに言ったのだ?」
「確か……、レイハルが仕事に追われて遅れていた日だったので、一ヶ月ほど前だったと思います」
「そうか。シャーリャよ、すまないが君の行動のおかげでミリアナは俺に対して以前より真剣に向き合ってくれるようになったのだ」
「本当にそれに関してはホッとしています。もしもお姉さまが私の言葉を鵜呑みにして行動を起こしてしまったら取り返しのつかないことになっていたでしょう……。お姉さまが王族にも逆らって我が道を進めるようなカッコいいお方で良かったです……」
これはなにかのコントなのだろうか。
シャーリャ王女に言われてからは、何度もレインハルト様に嫌われるような行動をしてきた。
全て不発に終わってしまったが、今だって二人の関係が……と思っている。
「あの……。私、話が全くついていけないんですけど」
「また照れ隠しか……。本当にミリアナは可愛い」
また頭を撫でられた。
その度にほっこりしてしまう自分も情けない……。
「ミリアナは心が強いし、気遣いもできて優しく、更に国までも変えてしまったヒーローみたいな存在だ。俺は幸せものだよ……」
「レイハル! それはズルイです。私だってお姉さまというポジションを獲得したのですから、私にだってお姉さまに寄り添うくらいはいいでしょう!?」
「はぁ……。これは敵が増えそうだ。ミリアナよ、今後は外に出る際は俺が付き添うことにする」
そう言いながら、私の身体をギュッと抱きしめてきた。
「ふぅぁぁああ!?」
「あーーずるいです。というか、私の前でそんなことしないでください! 私だってまだお姉さまとぎゅっとしていないのに」
とても演技だとは思えない。
私は勇気を出して直接本人に聞くことにした。
「レインハルト様はシャーリャ王女のことを好きだと言っていませんでしたか?」
「あぁ。あのときの話か。ミリアナの前で、婚約者の前でシャーリャのことを話していたから妬かせてしまっただろう……。すまなかった」
「でも、そのときシャーリャ王女と会いたいと言っていましたよね」
「そんなことは言った覚えはないが……」
「え? でも、あーいたいなどと……」
レインハルト様はしばらく考える素振りを見せてから、なにかを思い出したようにハッとした。
「もしかして……、俺が『あぁ、痛いな』と言ったことか?」
「え?」
「ミリアナに対してベラベラと喋ってしまった自分に対して痛い男だなと思って呟いてしまったのだが……」
「ほぇ!?」
まさか、私はずっと勘違いをしてしまったというのか……。
いや、まだ決定的なことが残っている。
「でも、私たち絶対うまくいきませんよねって言ったら、そう思うと言ってきたじゃありませんか」
「シャーリャの更生がうまくいきませんよねと言っていたのではないのか? 俺がこんなんだから、むしろミリアナがシャーリャの更生をしてくれたのかと……」
状況が噛み合わなすぎる。
このあとレインハルト様と話し合って、あの日、すれ違っていた部分が部分がお互いに一致した。
私はあまりの恥ずかしさと勘違いで心苦しくなってしまった。
「申し訳ありません。やはり私がお姉さまに言ってしまったことで混乱させてしまったようですね」
「結果論としてはむしろ良かったかもしれん。さっきも言ったが、おかげでミリアナは俺に対して前より真剣に向き合ってくれるようになった。さらにシャーリャの心も動かし、結果国の改善にまで発展したのだから」
私が今まで行動してきた意図は、黙っておくことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。